自分の「好き」や「おすすめ」を持ち寄って、自由に話す交流会。
好きなアニメや、最近ハマっている漫画。
思い出の音楽や、お気に入りの食べ物。
配信で話題にしたり、Twitterで呟いたりすることはあっても、がっつり話す機会は意外と少ない、「好きなもの」についての話。そんな「好き」を持ち寄って、たっぷり時間をかけてお互いに紹介する交流会です。
7年ぶりの『日常』新刊と、一瞬で過ぎ去る「なんか好き」を描く『雨宮さん』
私、おむらいす食堂はですね、漫画の紹介です。今日は私が好きな漫画家の1人である、あらゐけいいちさん(@himaraya)の話をします!
早速ですが……『日常』を知らない人って、どれくらいいますか……?
知らない人ー?
……みんな知ってそうな気配!
あ、全員知ってる。
みんな大好きだよな!
……なんだ! みんな知ってるんじゃないか!!
がはははは。
まあそれくらいね! 歴史もあって知名度もある作品、というのは前提なんだけど!
でも実は今回は『日常』の話をしたいわけではなくて。とりあえずの事前情報として、「『日常』の新刊が7年ぶりにが発売された」ことが最近話題になっています。
あ、そんなに空いたのか。
そう! 2022年の12月末に発売されて、私はそれがすごく嬉しい出来事のひとつだったんですけど、同時に発売された『あまみやさん』……いや、『あめみやさん』?
……ちょっとごめんなさい、ちゃんと正しい読み方を知ったほうがいいな。雰囲気で読んじゃってるからな。
あー、あー……あめみや……あまみや……まあどっちでもいいや。はい、っていうのがあって……。
どっちでもいいんかーい!!
どっちでもよくないな!
どっちでもよくないな!!
ちょっと私のよくないところ出たな(笑)。
「“あめみや”さん」っぽいですね。
あめみやさん! そう! 雨宮(あめみや)さん!
『雨宮さん』っていう漫画があって、私はこれまで『日常』が一番好きな漫画だったにもかかわらず、この『雨宮さん』が塗り替えようとしている現実がある! これを伝えたい!!
へえ〜!
ほ〜え〜!
わかる!
『日常』はいわゆる「日常系アニメ/漫画」っていう感じなんですけど、『雨宮さん』もその雰囲気を出しつつも、ちゃんと漫画としてストーリーがある。『日常』とはちょっと違うストーリーラインになっているんですよ。
『日常』って多分、ショートショートみたいな感じで、どこからページをパラパラってめくってもあまりつながりがない構成になっているんですけど、『雨宮さん』は最初から物語が紡がれていく構成になっている。
へー! じゃあ1巻からちゃんと読まないとストーリーわからない感じか。
そうですね。ショートショートではない、っていう。で、この『雨宮さん』のストーリーの基本となる核に、「なんか好き」っていうのがあるんですよ。
「なんか好き」?
とにかく、雨宮さんが感じる「なんか好き」の感情を描いていく構成になっているんです。
将棋のパチンっていう音だったりとか、スイッチをパチンってやる音だったりとか、指でポンって出す音だったりとか――今ちょっと音にフォーカスしちゃってるんですけど。
「日常に潜む、なんか好き」っていうポイントにめちゃめちゃフェティシズムを感じるキャラクターなんですよね。
あ〜……良い!
素朴な共感が……!
今、共有したURLで1話読めますね。
そう! ぜひ読んでほしい!
1話読みました。
たまらんね!
一昨日ちょうどTwitterの広告で出てきて、めっちゃ読んでました!
あ! 本当に〜!?
そう、これの「めっちゃやべえな」って思ったところが、描かれている「なんか好き」が、誰しもが感じたことはあるんだけどすぐに忘れてしまうような、本当に「日常の中でも重箱のすみっこオブすみっこの『なんか好き』」なんですよ。
さっきの「洋服の女の子がかわいい」とかではなくて、本当に一瞬で過ぎちゃう瞬間の「なんか好き」が、たくさんたくさんこの作品の中に込められている。それをひとつひとつ描けるのもすごいし、読者がギリギリ共感できるラインを保っている――っていうのも、なんかもう「あらゐけいいちすごーーー!?」ってなって!
「いつやめてしまってもいいし、やめたあとも、いつまた始めてもいい」
『日常』の「こんな日常は通常はないけれど、この漫画の中での“日常”がずっと続いていくよね」っていうところもすごかったんだけど、実際に自分たちが体験できる“日常”としての「なんか好き」を詰め込んだのが『雨宮さん』だな、と思って。
『日常』の“日常”って、感じ取れない日常なんだけど……って、わかるかな? これ、ちょっと言葉にすると難しいんだけど……(笑)。
“日常”にはねえよなw
『日常』の“日常”は「そうはならんやろ!」が多いw
そう、私たちの日常には、子供の「はかせ」は出てこないし、ロボの女子高生も出てこない。
『日常』は彼女たちの“日常”を楽しめる作品なんだけど、雨宮さんの“日常”は私たちも体験できるんだよね。
「あーわかるー! なんか好きー! この感じー!」みたいなのだよね。
その共感性の深さが良かったのと、あともうひとつ。2022年によかったなと思ったのが、あらゐけいいちさんが7年ぶりに『日常』の新刊を出してくれたこと。
まきさんがさっき、「ずっと創作を続けていて、ミソシタさんはずっと変わらない」っていう話をしてたけど、あらゐけいいちさんもずっと変わらず、『日常』っていう作品を自分の中に持っていたんだなと。今回の新刊発売は、それがいよいよ形になったものなんだと思ったんですよね。
一度、区切りをつけて終わったかのように思えたひとつの作品が、作者がそれを忘れずにいてくれたことによって、もう1回この世に新しい形で出てくれた。「この作者は変わらずに『日常』のことをずっと想っていてくれたんだ」と感じられて、それがすごく嬉しかったんですよね。
私自身、もうずっと8、9年くらいは「おむらいす食堂」っていう存在が自分の中に存在しているんだけど、就職のタイミングで2年間くらい何もできない、空白の期間があったんですよ。
だけど、友達の一言で始めた「VTuber」という形を通すことによって、また「おむらいす食堂」として動くことが最近できつつある。
自分の中にあるものを「作品」として世に出すことの大切さを改めて実感したし、自分の感覚としては自然とやっちゃう、やらずにはいられないものなんだけど、「あの時、諦めてやめちゃわなくてよかったな」と思えたというか。
2014年くらいにおむらいす食堂の活動を始めて、その時から「オムライス」が自分の中のメインキャラクターでした。食べ物の擬人化キャラクターを創作イベントで出す活動を長らくやっていて、「ペンネームが『おむ』だったから、軽率に『おむらいす食堂』という名前をつけた」という経緯があります。
ただ、その活動は就職のタイミングで途絶えちゃって。「やりたいなあ……やりたいなあ……」と思いつつ燻っていたところに、友達からの天啓――というか「VTuberやれば?」の一声があって、今に繋がっている感じですね。
【おむらいす食堂 インタビュー】効果音とテロップは超大事!クリエイターとしての転機にもなったVTuber活動とVRの魅力
でも逆に、いつやめてしまってもいいし、やめたあとも、いつまた始めてもいい。そんなことをあらゐけいいちさんが体現してくれているように思えて、「やっぱり、あらゐけいいちさん、好き!」ってなりました。
なのでここでお伝えしたいのは、「みんな! あらゐけいいちさんの漫画を読もう!」っていうことですね。あと、今月は展覧会とコラボカフェがあって、私はその2つに行くのを直近の人生の楽しみにしています。
いいですね〜!
いいねいいね。
コラボカフェは2人で予約したものの、「母と行くか、母と行かないか」で揺れてますね(笑)。
なるほどw
あ、そうなん!?w
「一緒に行ってくれる『日常』好きな人、思いつかんな〜?」→「いや、でも1人で行くのはやだなー、2人で予約するかー」→「今のところ私、母と行くのかー」みたいな。
まあそんな感じで、“日常”を楽しんでいけたらなと思っています。ご静聴ありがとうございました。
『日常』いいよなー。腹抱えるほど笑いながら見てたもんなー、アニメ。めっちゃ好きよ。
『日常』もいいけど、『雨宮さん』もやばい……!
すごくいい! 最高!
1話読んで、結構惹かれるものがあったよ!
これはいいものだ……。
誰もが持っている「なんか好き」の感情に目線を向けて
雨宮さんの感じる「なんか好き」もすばらしいんだけど、『雨宮さん』って学園物の構造になっていて。雨宮さんは最初に転校するんですけど、その転校した先では自分の「なんか好き」の感情を隠しているんです。
自分の「なんか好き」っていう感情は、ちょっと通常の「好き」とずれていて――それをみんなに伝えたことで、学校生活がうまくいかなかった過去とかがあって――自分の「なんか好き」は、隠していたほうが平穏な学校生活を送れる。だから隠そう――っていうふうに最初はするんですよ。
だけどその転校先のクラスメイトたちも、なんだかちょっとずつ個性があふれている仲間たちで。
まだ1巻しか出てないから、これからどうなっていくかはわからないけれども、雨宮さんが感じている「なんか好き」を共有できる仲間というか、そういう人たちといつか巡り会えるんじゃないかな――って予想して、楽しみにしています。
おもしろそう!
「なんか好き」を伝えたからその輪が乱れるわけではなくて、みんなが感じている「“なんか好き”なんだけど、普段はわざわざ表に出さないことを前面に押し出す」ことに、ちょっと「おっ」ってなるだけだから。
その共感性みたいなものって誰しもが持ってるはずだから、「なんか好き」の感情はちゃんと伝えてもいいんだなって、逆に勇気づけられる感じ。それを『雨宮さん』がこれから教えてくれそうな気がしてる。
この漫画でそこまでの感情が!
だから「自我って、もっと表現していいんだ!」みたいな。
「これってウケないから」とか、「言ったら友達いなくなっちゃうかも」って、遠慮しなくていいのかも……と思って。まだ漫画の中の雨宮さんはそれに気づけていないというか、まだそこまではいっていないのかもしれないけど。
まだ道の途中なんだね。
そう、雨宮さんが感じていることに対して「わかる!」って思えるからこそ、もしかしたらみんなも「なんか好き」を持ってるかもしれない。だから、自分の「好き」もちゃんと表現しよう!
そんなことを今回考えていた、というお話でした。あらゐけいいちさんって、そのあたりの機微の表現にすごく長けている方だなと思っていて。
すごい! 雨宮さん、そのまますくすくと育ってくれ……!
素直に育ってくれー!
健やかに……!
作品作りにも通じる「なんか好き」を言葉にしよう
ちなみに、あらゐけいいちさんのYouTubeチャンネルって、みなさん見たことありますか?
あ、見たことないかも。
すごい好きー!
いいよね〜〜〜!!
アニメを作っていて、音に合わせてキャラクターがこう、ペペペンって動く感じの。セリフは一切入っていないんだけれども、ちゃんとキャラクターが喋ってるように聞こえてきたりとか。
あと歌とかがね、セリフみたいなものとして一応はあるんだけど、その歌も、クリエイターとしてはなんかこう胸にじんわりくるものがあるんだよね。この「絵描きうた」ってやつがすごく私はよかったので。
好き好きー! ちょうど今、リンクを貼ろうと出してた!
私はこの「絵描きうた」が、いわゆるクリエイターにとっての「なんかわかる」のポイントをがっちりつかんでいると思っていて。
あー、いいよねー!
そういう物の見方が今回の『雨宮さん』の漫画でも描かれているのかなとも思うし、自分の「なんか好き」や、感覚的に感じ取った部分を作品にできる方ってすばらしいな、って今回改めて感じましたねー。
やっぱりクリエイターとしてはね、自分の「好き」を押し出していきたいよね。
そう、今ってやっぱり、どうしても数字や人の目を気にしてしまう人って多いと思うんですよ。
うん、そうね。
だけど、ものづくりにおいて根本的に大切なものって、やっぱり数字ではないと個人的には思っていて。
数字って、好きなものを表現したその先についてくるものだと思ってるんですよ。点数のためにテストをすごくがんばるんじゃなくて、その教科についての理解を一生懸命に深めようとした、その先に点数がついてくる。
あらゐけいいちさんもそういうスタンスでひた走ってくれているような気がしていて、やっぱり「好き」の気持ちは忘れちゃいけないし、それを胸にいだいて作品を作るべきだなと思っています。
うん、いいこと聞いた。
ねー。おむらいす食堂の真面目な部分出ちゃったねー。
珍しい。
いやー、聞けて嬉しいですよ。
すごいな。大トリにふさわしい。
今までのみんなの発表を聞いていても、「なんか好き」って感じるものとか、ルーツになるものとかって誰しも持ってるし、そういうものをどんどんプラスの方向に持っていって、作品に昇華していけたらいいなと。
つまるところはやっぱり「狂っていきてえな!」みたいな(笑)。
うん。狂っていきたいね。狂わなきゃ。
行き着く先は「狂う」なんだw
「なんか好き」と思ってもね、言わないと伝わらないんよ!
雨宮さんは「なんか好き」と思いつつも、まだ自分1人の世界で楽しんでるから。それを誰かに言ったり、布教したり、作品にしたりとかして、「いいよね!」って誰か1人にでも伝えられたら……その瞬間にさ、それが作品として評価されたり、輪が広がったり、友達が増えたりするんじゃねえの!? っていう!
それを! 私は!
インターネットを通じて!
やっていきたい!!
すばらしい!
すばらしい!
すばらしい!
その点、VRChatは直接人と話せるし、同じ景色を見られるから、最高!!
さいこー!
最高!
最高! 布教しなきゃ……!
って感じですねー。今日話したかったことはこんな感じですわー。
いやー!めっちゃいい話聞けましたわー!(拍手)
良ーい!
良い!
良い!
ありがとうありがとう……!
わぁい! 狂ってこうな〜? みんなー!
狂ってこうな〜!
狂うぞ〜!
狂うっきゃねえ!
『雨宮さん』マジ読んでほしい! 『日常』もよかったから読んでほしい!!!
私は私の「好き」が大好きだ。
あらゐけいいち著『雨宮さん』1巻(小学館)P.158より