コラム「ゼロから生まれた魂は、嗜好/思考を紡いで物語る」
VTuber・紡音れいは、VTuberである以前に「オタク」である。
アニメ、アイドル、声優、音ゲー、三国志、機材、その他諸々。曰く「オタクのテンプレみたいな人生(※)」を送ってきたという彼女は、それゆえか話す話題には事欠かない。
雑談配信では自分の「好き」を思う存分に語り、突如として始まるインターネット老人会では懐かしいコンテンツも躊躇なく口にする。
そんな彼女が、VTuberにハマるのは必然だったのかもしれない。
「紡音れい」になる前、オーディションが始まったばかりの頃は「vtuberさんをよく知らないので、お勉強したいと思ってます(※)」と話していた彼女。しかしその1週間後には「沼に落ちてしまった……(※)」と呟き、早くも推しができていた。
「はしゃいだモン勝ちさ」と言わんばかりに沼へ向かって全速前進するその姿は、紛れもない「オタク」そのものだった。
好奇心の赴くままに突っ走るオタクとしての立ちふるまいは、正式にVTuberデビューしたあとも変わらない。
己の興味関心について遠慮なくツイートし、気になるイベントには積極的に飛び込む。
やりたいことはどんどん口にして、楽しかったイベントや好きなVTuberの動画の感想はガンガン呟く。
そのようなTwitter上でのオタク活動の結果として縁やきっかけが生まれ、思わぬコラボレーションや案件につながっていた。そんな節すらある。
あなたの「紡音れい」はどこから?
その行動力によって、主な活動場所であるYouTubeやSHOWROOM以外の場所でも、デビュー1年目の時点で存在感を示していた彼女。
だからだろうか。「紡音れい」のファンもまた、いろいろな場所から集まっているような気がするのは。
オーディション時代から追っていた人。デビュー後に応援するようになったSHOWROOMリスナー。
Twitterでバズっているのを見かけて興味を持った人。コンピレーションアルバムきっかけで歌声を聞いたVTuberオタク。
バーチャルマーケットの会場で出会ったVRChat民。クラブイベントでかかったオリジナル曲で引き込まれた人――。
他にも、へそフェス、親父ギャグASMR、おしがまイラストなど。「紡音れい」との出会いは、驚くほどに十人十色だ。
しかしそもそも、枠やジャンルにとらわれない「VTuber」の活動の幅の広さと人気ライバーの活躍っぷりを鑑みれば、それ自体は別に珍しい話ではないのかもしれない。
ただそれでも、活動1周年を迎える前の時点でこれだけ種々様々な「出会い」があったのは、彼女の積極性と頑張りあってこそだと言えるのではないだろうか。
また一方で、そうして出会ってきたリスナーとの関係性においても、彼女の「オタク」っぷりは活きている。
自身が長年にわたってオタクとして生きてきたからこそ、彼女はオタクの心根を実感として“理解っている”のだ。
自分がVTuberとして何をすればファンは喜ぶか。自身の発言がリスナー目線ではどう聞こえるか。演者と観客の適切な距離感はどのようなものか。
彼女は、そういった視点や感覚に自覚的であるように見える。
とはいえこれはあくまでも推測でしかなく、実際にはそこまで意識しているわけではないのかもしれない。
どちらかと言えばオタクであるかどうかはまったく関係なく、シンプルに「リスナーをよく見ている」というだけの話なのではないか、とも思う。
配信ではコメントをしっかり拾い、息をするようにTwitterをチェックし、イベント会場では客席の反応に目を凝らす。
単純で当たり前のことかもしれないが、実践するのは難しい。全員の反応をチェックできるはずもなく、そこでファンが抱く感情も人それぞれだからだ。
そんな混沌としたなかで、個々のリアクションを見ながら、全体のエッセンスを汲み取って立ち回れるとしたら――それはもう、一種の「技術」と言えるだろう。
しかし実際のところ、彼女はこちらがビビるほどにリスナーをよく見ている。
イベントに来てくれた人は記憶し、対面で話す機会があれば相手に合わせたトークをし、楽しんでもらうために全力を尽くす。イベントのみならず、普段の配信も同様のスタンスであるように見える。
リスナーが紡音れいをのぞくとき、紡音れいもまたこちらをのぞいているのだ。……って書こうとしたら、本人に呟かれてしまった(※)。悔しい。
アーティストであり、エンターテイナーであり、アイドルでもある。そして何より、リスナー想いである。
それが「紡音れい」というVTuberの魅力であり、有り様であり、生き様だ。
原点は「雑談」
本コラムの冒頭で、「Twitter上でのオタク活動の結果として縁やきっかけが生まれ、思わぬコラボレーションや案件につながっていた」と書いた。
これも一面的には間違っていないと思うが、そもそも彼女は「オタク活動」とは関係なく、折に触れて「考えを口に出す」「思っていることを呟く」ことを意図的に続けている。
彼女が重視しているのは、「自分の考えを話す」ことと「目標を公にする」こと(※)。
自分の夢、やりたいこと、考えていること。彼女のオタクトークは、この「自分の考えを話す」の範疇にあると言ってもいいのかもしれない。
振り返れば、彼女はオーディション時代から「自分の考えを言語化して発信する」ことを意識してやっていた。いつだって「伝える」ことの努力を怠らず、周囲と――過去に夢を否定された両親も含め――向き合っていた。そう思う。
「こういう思いがあってこういうことしてるから、この活動にはこういう意味があるんだよね」みたいなことを、その子がポロッと話したときに「……好き」ってなる。
「その考え、すてき!」ってなる“好き”もあるし、「あーそういう考え方もあるんだー! 知らなかったなあ……好き」のパターンもある。
(【雑談】僕の原点お話しします。【紡音れい Vtuber】 – YouTubeより)
いろんなパターンがあるんだけど、とりあえずその人の思考回路にふれないと好きにはなれない、ってことですね。
――わかる(わかる)。
ただしVTuberが己の思考を口にするにあたっては、少なからずバランス感覚を求められる印象もある。
VTuber各々の活動スタイルにもよるが、「自己」≒「魂」の思想や事情をつまびらかにしすぎることに、若干の抵抗を覚えるファンもいるからだ。
加えて、ネガティブな話ばかりではリスナーも不安になるし、話題によっては価値観の不一致を感じて離れる人も現れかねない。
しかしその点、彼女の「雑談」は安心して聞くことができる。
配信で口にするのはあくまでも「自分の考え」であることを強調しつつ、頭ごなしに何かを否定するような物言いはしない。
悩み事についても極端にシリアスな雰囲気にはならず、前後に別の話題を挟んでバランスを取ったり、最後には前向きな解決策を提示したりしてくれる。
だから自然と、配信後はいつも「考えを聴けてよかったな」という気持ちになれるのだ。
このような彼女の「雑談」が好きで、もしFANBOXをチェックしていない人がいたら、ぜひフォローしてみてほしい。
彼女のこれまでの活動と思考の変遷が垣間見えて、興味深く読めるはずだ(※一番安い100円の支援プランでも大半の記事が読めます)。
「2年間」の重みと、「3年目」のありがたみ
VTuberとしての活動も3年目に突入し、初の1stワンマンライブも見事にやり遂げた、2021年5月末。
活動休止や卒業の知らせも珍しくないVTuber界で、彼女が無事に「3年目」を迎えられたことを、1人のファンとして改めて嬉しく思う。
所属メンバーも増え、今まさに波に乗りつつあるZERO Projectを仲間と共に引っ張りながら、今後もきっと多方面で活躍してくれるはずだ(アイドル活動も楽しみですね!)。
本コラムの前のページでも簡単にまとめられているとおり、改めてその活動の軌跡を振り返ってみると、VTuber・紡音れいの活動の幅広さと濃密っぷりには驚かされる。本人にとっても、きっと忙しくも充実した2年間だったのではないだろうか。
「最後のチャンス(※)」として挑んだ魂オーディションを乗り越え、その翌月には早くもリアルイベントにMCとして出演。
ライブステージに立つ機会にも恵まれる一方、配信プラットフォームのイベントにも積極的に参加。
そのひとつであるオーディションイベントを勝ち抜き、デビュー半年で3Dモデル化を果たし、VRの舞台で先輩VTuberにも負けないパフォーマンスを披露した。
その後もコンピアルバムへの参加やオリジナル曲のリリースが次々に決まり、ますます躍進する活動2年目へと突入。
事務所経由の案件もこなしつつ、DJやVRの世界にも果敢に飛び込むなど、そのバイタリティの高さには本当に頭が下がる。
思えば、ゼロから始まった最初のオーディションからずっと、いつだって彼女は何かに挑戦していたし、僕らはその姿から元気をもらっていたように思う。
0と1の境界を超えて、超常現象となったVTuber。
自身の夢と、仲間から受け取った想いを胸に、彼女は今日も音楽で物語を紡いでいく。
関連リンク
- Twitter:@tmgnrei
- YouTube:Rei Channel / 紡音れい
- SHOWROOM:紡音れいのバズらNightYear
- pixivFANBOX:紡音れい
- 「ZERO Project」公式サイト
- 「ZERO Project」公式Twitter
- V-Tuber ZERO
- 「V-Tuber ZERO」運営Twitter
「紡音れい」を紹介しているページ
- VTuberのDJブームの先駆け!?紡音れいに8000文字独占インタビュー!!|AnieveX
- 紡音れい クールな歌声で魅了する天才美少女mix師|muevo voice
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- 【A.S.A.P. / 紡音れい】次元も超えて逢いに行こう、そばにいたい|部屋の隅っこ独り言
- 2019年に“バーチャル”関係で心にぶっ刺さった動画・ライブ・VTuber|ぐるりみち。
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