VTuberの世界には、「魂オーディション」と呼ばれる形式のオーディションがある。
募集要項はさまざまだが、文字通りVTuberの「魂」を決定するためのオーディション。事務所やグループがあらかじめキャラクタービジュアルを用意し、いわゆる「中の人」を決めるための選考だ。
なかでも話題に挙がるのが、SHOWROOMでたびたび開催される公開型の魂オーディション。
限られた「魂」の枠を勝ち取るべく数十〜数百人の候補者が参加し、数週間〜数ヶ月にわたって実際にライブ配信を行う。同じ顔をしたVTuber候補のサムネイルがずらっと並ぶ光景はなかなかにインパクトがあり、過去には「バーチャル蠱毒」と称され話題になった企画もあった。
選考過程となるライブ配信ではドラマが生まれることもあり、SHOWROOMリスナーのなかにはこの手のオーディションを意識的に追っている人も少なからずいるらしい。
しかし「魂」が決まったあとは、オーディション期間中の活動が省みられる機会はほとんどない。オーディション参加者とリスナー以外には、「そこで何が行われていたか」「どのような思いで参加したのか」といった実情を知る手段がないのだ。
ゆえに魂オーディションに興味を持ったとしても、その内容は過去の断片的な情報からしか窺い知ることができない。そんな現状がある。
そこである日、ふと思いつきで「魂オーディションに参加した“当事者”の声を聞ける場があったらいいな……」とツイートをしたところ、何名かの魂オーディション経験者から反応をいただいた。
――というわけで、前置きが長くなりました。
当サイトでは今回、「元・魂オーディション参加者座談会」と銘打ち、座談会を実施。実際に魂オーディションに参加した過去を持つ4人に話を聞きました。
残念ながら「魂」には選ばれなかったものの、その後、自らも個人勢VTuberとしてデビューし、活動を続けることを決めた元候補生。彼女たちは今、何を考え、またオーディション当時はどのような思いで挑んでいたのか。1時間半にも及んだ座談会で語られたのは、想像以上に前向きかつ興味深い「魂オーディション」の話でした。
どうして魂オーディションに参加したの?
――みなさん、本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは簡単に自己紹介からお願いできますでしょうか。
はい! 某企業オーディションの「海」枠にいました。VTuber準備中のクリオネの女の子、何某ゆめ(なにがしゆめ)と申します。よろしくお願いします。
某企業オーディションの「犬」枠のほうに参加していました。ゴールデンレトリバーの久遠ユキ(くおんゆき)です。よろしくお願いしまーす。
「海」枠のほうで参加しておりました。猫妖精VTuberの冬鈴ベル(ふゆすずべる)と申します。よろしくお願いします。
ユキちゃんと同じく「犬」のほうを受けていました。歌を歌うヨーグルト、歌与ポメ(うたよぽめ)です。よろしくお願いしまーす。
――ありがとうございます。今回お集まりいただいたみなさんには、「2020年12月にSHOWROOMで開催された魂オーディションの参加者である」という共通点があります。そのオーディションに参加した理由やきっかけについて……では、ゆめさんから順番にうかがってもよろしいでしょうか。
きっかけは、「年末の飲みの席の話のネタになるから」っていうのが一番最初でした。
とある別の企業オーディションの参加者さんが仰っていた、「忘年会でネタになるから」という理由とかぶってしまって恐縮なんですけど。
初知りだ!
たまたまTwitterでオーディションの話が流れてきて、「あ、こんなのあるんだ!」って。
私自身、VTuberさんはすごく好きで見ていたのですが、最初はその……「まあネタになったらいいや」くらいの気持ちでオーディションのホームページを見たんです。
そこに事務所に所属している方々からの応援メッセージとして、「何者かになれるかもしれない」ということが書かれていて、それがすごく刺さったんです。テーマも「ゼロからムゲンへ」って書かれていて。
私が配信経験のない「ゼロ」だったっていうのもあり、それを見て「やるしか……ないかあ!」と勇気づけられたのがきっかけですね(笑)
かっけ〜〜〜!!
なんかちょっと「エモ」みたいになっちゃった(笑)
エモだ!
入り口は「ネタになるんじゃなーい?」みたいな不純な動機だったんですけど(笑)
――ですが、その入り口で目に入ったメッセージが「刺さる言葉だったから」というのは大きな理由になっていそうですよね。僕もその言葉は印象に残っていたのですが……たしかこちら、熊野ぽえみさんのメッセージでしたよね?
あ! そうですそうです!!
めちゃめちゃ刺さって、あの瞬間、なんだか心臓がドキドキしたのを覚えています。そこで「やるしかないな」と思ったのがきっかけですね。
何者にもなれなかった自分が「何か」になれるかもしれない。なりたい自分になれるかもしれない。変わりたいと思った時から人は変われるんだと思います。あとは行動するだけ。自分が好きになれる自分に一緒になっていきましょう。
(https://0project.jp/zeroproject-audition-mugenより)
――なるほど、ありがとうございます! では、久遠氏はいかがでしょうか?
えーっと、久遠氏はもともと友達がVTuberで。
VTuberに興味はあれど、「でもVTuberって大変なんでしょ〜?」っていうイメージがすごくあって。自分で始めるにはちょっと敷居が高いな、ってずっと思ってたんですよ。
でもその友達のVTuberから、「『魂オーディション』っていう、もともとイラストが用意されてる入り口もあるよ!」ということを教えてもらって。
さらにちょうど同じタイミングで、また別の友達からも「このオーディション、別の枠で受けるけど、ユキも参加しない?」って言われたんですよね。
「なかよぴが参加するんやったら、私もやってみようかな?」くらいの軽いノリだったんですけど。
さっきゆめちゃんも言ってた激励のメッセージもあったので、「私もこれで、何者かになれるかもしれないんだ……!」と思って、何者かになりにいった感じですね。
わ〜〜〜!!(感嘆)
わ〜〜〜!!(照)
――久遠氏にも、ぽえみさんの言葉がすごく刺さっていたのですね……!
すごく良いことが書いてあったので!
ほかの候補生のあいだでも「あの言葉、よかったよね」って話しているのを聞いたことがあります。
あの言葉がなかったら、今ここにいない人も結構いると思ってるんですよね。
マジで、激深(げきふか)言葉。
重要人物……!
私、あの言葉をスクショしていたので、本当にしんどい夜とかに読み返して、「いや、でも、がんばるって決めたから……!」って思い返してました。
かっけ〜〜〜!!
すてき……!
――ぽえみさんの言葉に限らず、「所属VTuberからの応援メッセージがあったから応募する決意が固まったし、オーディション期間中もがんばれた」という人は少なからずいらっしゃったのかもしれませんね。では、ベルさんはいかがでしょうか?
ベルは……そんな、エモい理由はないんですけど(笑)
私もぜんぜんエモくないから大丈夫だよ!
ベルはもともと推しが何人かいて、半年くらいVTuber文化にふれてたんですけど、「VTuberになりたいな」とかは特に思ったことがなくて。
ただ、新しいことにすごく興味があって、なんでもかんでも始めたがりなんですよね。
Twitterを使っていると、推しだけじゃなくて、その推しのファンの方々もフォローするじゃないですか。たまたまベルと推しが同じだったファンの方が、その某企業さんの、某VTuberさんのファンで、タイムラインにその方のツイートが流れてきたんですよ。
そこに「フォロワー! オーディション、参加しない?」ってめっちゃ軽く書いてあったんですよ。オーディションのことが(笑)
「ヘイ! フォロワー! 参加しない!?」みたいな感じだもんね(笑)
へい! ふぉろわー!
そうそうそうそう!(笑)
なんかあまりにも軽すぎて、VTuberのオーディションってすごく気合いを入れてやるもんだと思ってたから、「そんな気軽にやれるのもあんのか〜!」ってちょっと気になって。
オーディションのページを開いたら「音声を送ればいい」って書いてあったから、「じゃあ送るかー!」って送ったら……いつの間にかああなってた、っていう感じです。
だから明確に「こうありたい!」みたいなのがあるわけではなくて。
――「たまたまTwitterで見かけた募集ツイートからハードルが低そうな印象を受けて、それゆえに気負わず参加できた」という感じでしょうか。
そうですね。だから、逆パターンかもしれないです。
「こうなりたい人たち、集まってくれ!」みたいな強いメッセージだったら多分、逆にベルは参加しなかったかもしれない。「そんな軽々とでいいんだ!」みたいな感じだったので。
だから応募したときは、オーディションの選考で配信があることすら知らなかったんですよ(笑)
本当に「ヘイ! フォロワー!」に乗っかってるね(笑)
「音声を送ったらええんや!」っていう認識だったんだ。
そう! 音声を送ったら、もう勝手に審査が終わってる……みたいなイメージだったのかな。
そしたら「配信が始まりますよー」って言われて、「えっ!?」って。
「そういうことなら……しゃ、しゃーないなぁ(震え声)」みたいな。そんな感じです(笑)
――ありがとうございます。最後に、ポメさんはいかがでしょうか?
どうしよう……最後なのに、一番しょうもない理由で参加しちゃった……(笑)
それは! それで! あり!
大丈夫だよ!
オチ担当でいこう!
歌与、アメリカに友達がいるんですけど、その友達と深夜にお酒を飲みながら電話したことがありまして。
「お前、配信者向いてるからやってみろよ」って言われて「やるかあ!!」ってなって、その場で「配信者になる方法」みたいな感じで検索して。
当時はVTuberとかもぜんぜん知らなくって、すごく大手の企業の名前だけはかろうじて知ってる、くらいのレベルでした。
その程度しか知識がないのに、「へー! 今は配信者をやるならVTuberがアツいんだー! じゃあVTuberのオーディション受けよー!」「あ! イラストがかわいいから、これ受けるわ!」って流れになって。
ちょうどその時期は時間的にもゆとりがあったから、それこそ「ネタ作りのひとつ」じゃないけど。朝4時とかにオーディションのページを見つけて、午前12時前くらいにはもう「どうせ一次も通らんやろ!」と思いながら、ノリと勢いで音声を提出した感じです(笑)
行動力だ……!
行動力だねえ……!
完全にノリと勢いで応募して、「まあ、なんとかなるっしょ!」みたいな感じで配信を始めて。
でもだんだん、応援してくれる人が目に見えてわかるようになってきたんですよね。
「ちゃんと応援してくれてる人がいるのに、ずっとノリと勢いでやるのは違う」と思って、本気でやろうと決意しました。
一次審査が終わって二次審査が始まる少し前くらいの頃に、やっと自分がヤバいところに足を踏み入れたことに気づいて(笑)
ヤバいところ(笑)
「犬」枠がすごく激戦だった、というのもあったよね。
「本気でやらないと周りの候補生たちにも失礼だし、何より応援してくれてる人たちに失礼だから」と思って、そこからいろいろとちゃんとやりだしました。
だから理由は後になって出てきた形で、最初は完全に勢いで応募しましたね。このなかで一番しょうもない理由で申し訳ない!
いやいやいやいや!
ってかもう、つかみの「アメリカに友達がいて」がおもろいもんな。
アメリカの友達の「なりなよ!」からの「なるかあ!」で翌日には申し込んでるの、すごいからね。 アメリカンだなあ。
――こうして聞くと、ゆめさんとユキさんは「応援メッセージに後押しされたから」、ベルさんとポメさんは「気楽に参加できそうなオーディションだったから」という部分が、それぞれ応募を決めた理由として大きそうですね。
一次選考で送る「音声」はスマホ録音でもOK?
――先ほど「音声を送った」というベルさんのお話がありましたが、次はこの一次選考についてお聞きできればと思います。募集要項には「3分の音声データ」という記載がありますが、差し支えなければ、どのような音声を送ったのかを教えていただけますでしょうか。
ぜんっぜん覚えてないです!
データ残ってるかな……と思ったけど、残ってないや。
結構……割と……覚えてます……。
覚えてる……な……。
一次選考に送る音声の説明に「自己紹介・歌・特技ジャンル問わず」って書いてあったのを見て、ベルは自己紹介と歌が必須だと思い込んでたんですよ。
あー! わかるわかる!
だから「歌も録らなあかんのやー!?」と思って、歌なんて録ったことがないのでめっちゃ悩んだんですけど……。
前半の1分くらいで自己紹介をして、後半の2分くらいを歌に当てるような形で、音声を録って送りました。
――ちなみに、歌は何を歌ったのか聞いても……?
えーと……『化物語』の、八九寺真宵ちゃんの曲を……。
――『帰り道』でしょうか。
あ、それそれ! たまたまそのとき聞いてて!
――なるほど! そうして「自己紹介と歌をノリで送ったら通っちゃった」という、先ほどのお話につながるわけですね。
そうですね。自己紹介はたしか「関西弁のゲーマーでほにゃらら」みたいなことを言ったような気がします。
今と言っていることがあまり変わらないんですけど(笑)
歌与はたしか、「多分何かしらできると思います!」みたいなことを前半でばーって言ってた(笑)
ふんわりしてる!
「何かしらになれる素質は十分にあります!」みたいな音声を録って、送った感じです。
歌与も歌は絶対送らなきゃいけないと思ってたけど、録ったことがなかったから……。携帯にカラオケアプリを慌てて入れて、画面録画で音声を録りました。
当時はパソコンがオンボロすぎてDAWソフトとかも開けなかったから、全部スマホでやった覚えがあります。2分くらい自己紹介して、BGMもかろうじてつけて……。
後半部分も、スマホで画面録画したデータを音声だけ抜き取って、自己紹介の後ろにつなげて送った気がしますね。
逆にすごい! 自分はスマホだけじゃぜんぜんできないから。パソコンに頼りきってる。
パソコンが……パソコンがクソすぎて……。もうiPadと携帯でどうにかするしかありませんでした。
さすがに今はちゃんとしたパソコンに買い換えたんですけど、当時はWindows 8とかだったんで(笑)
化石だ!!
「よくSHOWROOMで配信ができてたねえ!」 くらいの(笑)
だからもう、何もできなくて。パソコンだと。まず起動するのに10分くらいかかるから(笑)
えぐいなぁ!
「無理だ〜!」ってなって、携帯でやる方法を携帯で調べて、全部携帯で送りましたね。
SHOWROOM配信でまずやったのは……般若心経!?
――そのような一次審査を経て、次は二次選考となるSHOWROOM配信に進まれることになったわけですよね。みなさん、配信ではどのようなことをされていましたか?
ちょうど今、当時のサムネを見返して振り返ってました。
般若心経しか覚えてないんだけど(笑)
そう、般若心経!
SHOWROOMって、リスナーさんが配信者を応援する方法としては「星」と「50カウント」が中心になるじゃないですか。でも、ただカウントしてもらうのは嫌だったので、「般若心経とバトルするかー!」 って(笑)
私の特技が「般若心経をすごい早口で読めること」なので、「私が般若心経を高速で3周読むあいだに50カウントしてください」って決めて。「私が勝ったら褒めてください」みたいな感じで、配信ではほぼ毎回やってました。
予選の時期はゲームとかも結構やってたんですけど、本戦はどうしても配信が細切れになってしまう(※)ので雑談が中心。たまーに歌枠とかをやってたと思います。
※配信が細切れになってしまう:前述の「星」や「50カウント」のシステムがあるSHOWROOMでは、短時間の配信を何回もこなすほうが効率的にポイントを稼ぎやすい。
――SHOWROOMのシステムは慣れないと複雑な印象もありますが、早い段階で対応して「般若心経」という独自要素を盛り込んでいたのはすごいですね……!
たしかテスト配信の時期に「私、特技がないんですよねー」みたいな話をしていて。
「般若心経くらいしか読めないんやー」なんて話しつつ、「じゃあ私が1周読むあいだに50カウントできるのかな?」って思いつきで言ったのが、最初のきっかけですね。
そしたら1周どころか「……えぇ!? 早っ!!」みたいな反応があったので(笑)そこからゲーム性を調整して、3周できるようにしました。
すごい! 調整も入ってるんだ!
ちゃんとアプデしとる!
入ってる入ってる(笑)
「はじめの『摩訶般若波羅蜜多心経』だけちょっとゆっくり読んでから始めますね!」みたいに、ちょっとした難易度調整をしていましたね。
やってた!
優秀な運営だ。
あとは、配信ではただただ雑談をしてましたね。ユキちゃんとか結構、いろいろな企画をしてたイメージがある。
あー! 私も今、サムネ見返してた。
当時もフォローさせてもらってて……って、急に他人行儀みたいになっちゃった!(笑)
なんかね! あの頃の気持ちになると、「……あぁ! 久遠ユキちゃんだぁ!(限界オタク)」みたいになっちゃって、オタク心が出ちゃうから。
でも本当にいろんな配信をしてたのをすごく覚えてる。
いえいえ、とんでもございません(笑)
「サムネがハイセンスだー!」と思って見てたから。
ひょえ〜。とんでも……恐縮です。
ゆめたん、みんなのツイートにめっちゃ「いいね」しまくる子になってたよね(笑)
そう! いいねがすごくくるなと思ってた。
なんだろうね……「あなたはがんばってるよ! 大丈夫だよ! 見てる人はいるよ!」みたいな気持ちでいいねしてたんですけど(笑)
お母さん!?
お母さん!!
私がしてもらえて嬉しかったから、っていうのもあるかもしれないけど。「誰かが見てくれてるんや」って思えれば、ちょっとだけ気持ちが楽になるかな、って。
ママだ……。
ママぁ……。
それにめっちゃ助けられてたよ、ベルは(笑)
「この子、めっちゃいいねしてくれる……! 見てくれとるんやなあ……!」って思ってた。
わかる。そう、「見てくれてるんだ」って気持ちになる、めっちゃ。
本当に、シンプルにファンだったので。みなさんのファンでした。
切磋琢磨し助け合う、オーディション参加者同士の“熱い絆”
――候補者同士でそういったやりとりがあると、自然と仲良くなることも多そうですよね。
そうですねえ。
コラボは途中で禁止になったけど、はじめの頃とかね。
ゆめちゃんにいまだにめっちゃ感謝してることがあって。ポメ、テスト配信は最初スマホでやってて、その後にパソコンでも試そうと思ってたんだけど、配信時間に制限があって。
2時間しかなかったもんね。
そうそう。でも配信とかやったことないし、パソコンもちゃんといじったことがなかったから、OBSが使えなかったんだよね(笑)
あったなー!(笑)
しかも当時は家の壁が薄すぎて、配信とかできる状況じゃなかったから。毎回外に行って配信してたんだけど、携帯だと回線速度が酷すぎて……。
パソコンはパソコンで、OBSが使えないから配信ができない。そんなとき、配信に偶然来てたゆめちゃんに「助けて!」って言ったら、深夜に「OBSはこうやったら多分つながると思う」って教えてくれて。そのおかげで、次の日はちゃんとOBSが使えたんだよね。
へー! すごーい!
私もOBSは初めてだったから、めっちゃ詳しいわけじゃなかったんやけど。
「困ってるし、助け合いでしょー!」みたいな気持ちで、夜中にDiscordで通話しながら「OBS、ちょっと私も調べるわ!」って言って調べてたのを覚えてる。
あったけえ!
あれねー、一緒に調べてね(笑)
意外とね、裏側でみんなの「熱い絆」みたいなのあるからね。
そうそう。ベルもそれまでWindowsで配信してたのを、決勝からMacBookにしなくちゃいけなくなったんだけど、Macでは配信したことがなかったから困っちゃって。
Twitterで「Macでの配信の仕方がわからないんですけど、わかる候補生の子、いますか?」って呟いたら、3人くらい来てくれて。懇切丁寧に教えてくれて、すごく助かった思い出があります。
みんな、とっても優しかった。
あったけえ……!
――「オーディション」といえば参加者は競い合うライバルのような印象もありますが、魂オーディションはそうとも限りませんよね。今回の魂オーディションに限らず、むしろお互いに助け合いながら取り組んでいるイメージもあります。
切磋琢磨している感じは結構あるかもしれないですね。完全に仲良し……というよりは、「お互いがんばろうね」みたいな気持ちが一番近いかな、と思っています。
恨みっこなしとまで言えるかはわかりませんが、自分の喜びや苦しみを近くで一番わかってくれる人って、やっぱり同じ候補生だと思っていて。
魂オーディションには「リスナーさんと一緒に走るイベント」という側面も強くありますが、一方では「リスナーさんに苦しい思いをさせているかもしれない」みたいな辛さとかもあって。
そんなとき、「でもあの子もがんばってるから、私もがんばろう」って思える存在が大勢いる。そういった感覚は、魂オーディションならではなのかな、と思います。
オーディション後のアピールポイントにも!?「毎日企画」のコンテンツ力
……めっちゃ喋りました。すみません。
めっちゃ喋ってえらい!!
えらい! みんなも喋るんだ! ユキちゃんはどう!?
えっと、さっきゆめちゃんも話に出してくれていたように、普通の雑談だと絶対に話が尽きるので、何か一捻りしようと思って。
だから何でも一捻り入れるようにはしてましたね。いまだに言われるのは、普通のマイクでASMRしたやつと――。
あれおもろかったー! 「そんなんするんやー!」って(笑)
ASMR、流行ってるじゃないですか。だから「ASMRしたいけどASMRの機材って高いから、普通のマイクに向かって囁けば、それはもうASMRなんじゃないかな(?)」と思って(笑)
ステレオ入力にすると、左側からしか音声が聞こえなくなるんですよ。だから配信ではステレオ入力にして、「左側からだけ囁く久遠ユキ」っていうのをやってました。
あとは、「企画を考える企画」。
「どういう企画をやったらおもしろいかなー?」ってリスナーさんにアンケートをとった結果、「久遠ユキが推し語りをして限界になってるところが見たい」っていうのが1位になったので、推し語りをしましたね。
なんだっけ、「四季折々久遠ユキ」みたいなのなかった?
あー! 四季折々久遠ユキはね、まだ実現してないの。でも四季折々久遠ユキは、今の食べ歩きデートグッズに生かされてるから。
……ってか、めっちゃ覚えてるね!?
自分でも「1年前とかの記憶、よく覚えてんなー!?」と思ったけど、「四季折々久遠ユキ」っていう言葉がすごく印象に残ってたんやと思う。
これは一応説明しておくと、「四季折々久遠ユキ」っていう語感だけでやろうとした歌枠があって。
「春夏秋冬の歌をそれぞれ歌って、四季折々を感じよう」っていう歌枠をやろうとしてたんですけど。日程の都合でなくなった伝説の企画ですね。
日程、厳しいもんねー。
曲を覚える歌枠とか、「久遠ユキの良いところを聞いて面接に生かそう」とか、ほかにもいろいろやってましたね。普通の雑談だけだと飽きちゃうかなと思って。
「なんか一捻りあったほうが、やってる側も見てる側もおもろいかな」って考えて、何かしら縛りは入れるようにしてました……ね!
えらいねえ……!
――非公式Wiki(※)を読み返していて思ったのですが、ユキさんといえば「きょうわおん」のインパクトもかなり大きかったと記憶しています。
※非公式Wiki:アットウィキを使って作られた、オーディション候補生のデータ集。SHOWROOMで開催される魂オーディションでは有志によって非公式Wikiが作られることが多く、候補生のプロフィールや配信の内容を後からでもチェックできるようになっている。助かる。
毎日やってたねー!
めちゃめちゃ好きで聞いてた!
「久遠のきょうわおん」っていう、毎日7時に歌ってみたをTwitterにあげる企画ですね。
あれ、すごかった!
ほんとにすごかった!!
いまだに褒めてもらえますね……!
ほかのVTuberさんからも「オーディション時代から知ってました」と言われることが最近多くて、「なんでですか!?」って聞いたら、「歌ってみたが流れてきて」って。
アピールポイントにもなってるので、「きょうわおん」はやってよかったなって思う企画のひとつですね。
あれを見たら「あ、この子ってこういう感じの人なんだ」ってすぐにわかるし。
「めっちゃいいコンテンツや〜!」と思いながら、私も元気がないときに聞いてました。
嬉しい〜!
あの頃からずっと「歌、うめ〜〜〜!!」って思ってた(笑)
「アピールポイントは明確なほうがいいのかな」と思って。私もそんなに特技はないけど、でも歌うのは好きだから。
そんなに手間でもないので、歌ってみたを毎日やったらコンテンツも増えるし、「この子って、歌うのが好きなんだ」っていうのがわかりやすいかな、と。
思いつきで始めたことだったんですけど、意外と2ヶ月続きました(笑)
2ヶ月ってすごいねー!?
2ヶ月やってました。
今ではさっぱりですけど(笑)
「ほわほわボイスから繰り出されるゴリゴリの戦闘」
――2ヶ月はすさまじいですね……! ベルさんはいかがでしょうか?
配信が始まる前の準備期間に、みんなTwitter上でたくさん活動してたじゃないですか。
お歌を投稿してる子がめちゃくちゃ多かったから、「歌を歌えないとダメなんだ」って思って。でもベルはお歌は得意ではないんですよ(笑)
「できないとダメだったんだなぁ」って思いつつ、たしかそのとき……かなあ……? ユキたんに相談した気がするんですよ。
うんうんうんうん……あー! 懐かしい!
ベル、何をしたらいいかわかんなくて。
そんなときにたまたま「Apexやってる!」っていうユキたんのツイートを見て、コミュ症だけどがんばって、「Apex、一緒に……しよ?」って声をかけて、裏で遊んだんです。
そこで喋って仲良くなったので、それこそ「きょうわおん」などでコンテンツをアピールする力が強いユキたんにいろいろ教えてもらおうと思って、「何をしたらいいのかわからない」って正直に言ったんですよ(笑)
もともとApexには自信があったので、「候補生のなかで一番うまいです!」って勝手に言ってたんですけど。
実際うまいし。めちゃめちゃ。
うまい。
もしかしたら実際には二番目とかだったかもしれないんだけど、まだ誰も言ってなかったから(笑)
ユキたんからも「それをもっと押し出して、Apexのキル集とかの動画を投稿したら?」って適切なアドバイスをもらったので、「Apex路線でいこう!」と決めました。
だから予選はApexの配信が多かったんですけど……でもベル、ちょうど本戦の時期に、母国に帰らなきゃいけなくなっちゃって。
母国ではデスクトップパソコンを使えないから、Apexをできなくなっちゃったんですよ。メインコンテンツを失ってしまって(笑)
「決勝の一番大事な時期なのに……」って落ち込んだんですけど、気持ちを切り替えて、とにかく同じ配信はしないようにいろいろな企画をやってました。
今、配信のタイトルの一覧をばーっと目の前に出してるんですけど、クリスマスは宴会と歌枠をやったり、ウミガメのスープをしたり。テストをやって賢いアピールとかしたり、ご飯を食べたり、ホラゲをやったりとか。決勝は割とバラっといろいろやった、みたいな感じです。
予選でめっちゃやってたApexもただプレイするんじゃなくて、「1時間に何キルできるかチャレンジ」とか「英語禁止」とか「視聴者の方とタイマンする」とか、そういうのをやってましたね。
えれ〜〜〜! そうそう、ベルベルに相談されたときに、マジで偉いなと思って。
「どうしよう」って考えてるのがまず偉いし、Apexが好きでしかも上手って聞いてたから、「もったいないよ! もっと言っていきな〜!?」みたいな(笑)
でもたしか、最初はApexの動画を出すのにちょっと迷ってたんだよね? 「ぜんぜん大丈夫! うまいし!」って言ったら、その次の日に出してたんですよ。それを見て、マジで偉いと思って。
恥ずかしいな……(照)
これ、本人にも言ったけど、「言ってすぐに実行する」って難しいじゃないですか。
なのに「人から聞いたアドバイスを次の日にはちゃんと形にして実行してる」ってのがマジで偉いなと思って、「マジでえらーい!」ってなってました。
……ちょっと急に語彙がなくなっちゃった(笑)
本当に「なんか1人、Apexめっちゃやってる子いるな」っていう印象があって。
流れてきたの見てたもん。「すごい! このキル集!」って。
歌与はApexやらないから何もわかんないけど、「めっちゃApex楽しそうにやってる子いる! すげー!」って思って、いいねしてた記憶がある。
女の子の集まりだからApexやってる人も結構少なかったし、そういう意味でも目立ってたかもしれないね。しかもちゃんとうまい、っていう。
ベルベルのほわほわボイス、ほわほわしゃべりから繰り出されるゴリゴリの戦闘が、私すごく好きで見てた。
嬉しいな……! オーディションの時のこととかユキたんは結構言ってくれるけど、周りからもApexをそんなに見られてたとは思ってなかった(笑)
私、結構いろんな人の配信見てたからなぁ。
意外とみんな周りのこと見てるよね。「見てたんや!?」ってびっくりする。
見てた見てた。
時間がない中でもめっちゃお互いに見て、吸収し合ってた感じがある。
ほかを受けたことがないからわかんないけど、このオーディションはかなりアットホームな感じがあったよね。
いくつかオーディションを受けたことのある子が、「稀に見る感じ」だって言ってたり。
ベルは初めてだから「これがスタンダードなんや!」って思ってたけど、そうでもなかった、っていう。結構レアだったのかもしれない。
リスナー目線になって気づいた「テーマ雑談」の強み
――自分もいくつかの魂オーディションを追っていましたが、こちらのオーディションは全体としても盛り上がり、候補者さん同士で切磋琢磨しつつ、それでいて楽しそうな雰囲気が漂っていたような印象があります。ポメさんはどのような配信をされていましたか?
ポメは最初、企画をいろいろと考えてて。
たとえば、動物看護師の資格を持ってて、勉強するときにペットフードをめっちゃ食べてたことがあるから、その……(笑)
食べ比べだ!
そう、「人が食べてもおいしいペットフードの紹介」とか、意味わかんないことしたりとか。
あー! それ、めっちゃ覚えてる!
実際、「何してんの!?」って言われたり、「犬だからいいっしょ!」とか言ってやったりしてたし(笑)
そうやって予選では変な企画をいろいろ考えてたんですけど……でも結局、どれも配信の時間内に企画が収まらなくて。
今の雑談配信もそうなんですけど、「スタバで注文を間違えて恥ずかしかった」っていうことだけで30分とか喋れるタイプの人間だから……いや、人間っていうかヨーグルトだから。
当時のパソコンのスペックではゲーム配信も無理だし、だったらもう普通に、雑談配信をしようと思って。
あと、自分もリスナーさんの気持ちになろうと思って、予選期間中に候補生全員の配信を見に行ったんですよ。
えれ〜〜〜!!
ほぼほぼ全員……パソコンのスペック的にROMとかだったんですけど、スマホとiPadとノートパソコンとを駆使して、最大7窓とかまではしてました。
えらい!!
いろいろな人の配信を見てみたら、「企画を全部見てもらうのは難しいんじゃないか」って思えてきて。
っていうのも、複窓で画面をコロコロ切り替えてたら、途中で戻ってきても「もう何もわからん」ってなることに気づいたんですよね(※)。
だったらもうテーマを絞って、「20分間、ひとつのテーマについて延々と喋ってみよう」っていう結論に至りました。
※SHOWROOMの魂オーディションは参加者が多く、配信の時間帯もかぶりやすい。そのためリスナー目線でオーディション全体を追いかけようとすると、推しを1人に絞らないかぎり、複数の配信を行き来することになる。
決勝ではリクエストを聞いて歌う歌枠もやってたんですけど、基本的にはやっぱり雑談。
1個のテーマについてリスナーさんと喋りながら、「そういえばこれってどうなん?」ってコメントで話題を振られたら、「じゃあそれは明日の枠で喋るわー!」って言って、次の日はそのテーマをタイトルにして喋る、みたいな。めっちゃその場つなぎなんですけど(笑)
前日の夜に喋ることを考えて、「明日は何時から何時までこのテーマについて喋ります」って内容を整理したサムネを準備しておく。で、次の日の配信では、それぞれ決めたテーマについてだけ喋ってました。20分間。
すげえな。
「スタバで注文を間違えて恥ずかしかった話」を20分したら、その次の枠は「ペットフードを食べ過ぎてお腹壊した件」で20分喋って……という。
基本は1個のテーマについて喋りつつ、途中で新しい話題が出てきたら、「じゃあそれは今度喋るから、明日も配信来てね」ってことにする。そんな感じでやってましたね。
うまいやり方だ!
雑談力が高い!
ただ、雑談のテーマもなんでも20分ずっと喋れるわけじゃなくて、「さすがにこれは喋れんな」って内容を判断する部分で悩むことは結構ありました。
ほかの話に派生しやすそうな話題をあえて選んで、「明日につなげられるようにしなきゃ」みたいな(笑)
えらい!
テーマ力(ぢから)だ……!
――特定のテーマについて話し続けるのって、簡単なようでいて難しいですよね。しかも時間配分を気にする必要もあり、さらには翌日のテーマも考えつつ、話題の選定やつなげ方も意識しながら話す……と考えると、実はすごいことをやっていらっしゃったのでは……?
いやいやいやいや!
「みんな企画力があってすごいなあ」とか、「ゲームがうまくてすごいなあ」とか、「特技あってすごい!」ってなってましたし。
リスナーさんの気持ちになろうと思ってみんなの配信を見始めたら、オタクと化してました。
みんなすごい!
みんな違って、みんな良かったから。
金子みすゞだったから(?)
……「金子みすゞだったから」とか言っちゃった! ごめんなさい、ちょっと脳死レベルが上がってきた(笑)