【サンリオVfes2023】全人類に見てほしいVRライブ&パフォーマンスを振り返る【B4チルパーク】

TORIENA with BC

のほほんとB4フロアを覗きに行った自分に、「チルパークがやべえ!(ライブの内容的にも物理的にも)」と衝撃を与えることとなった、TORIENAさんのパーティクルライブ。

その印象を一言で説明するなら、「パワフル&エモーショナル」だろうか。

事前告知で「VR特化ライブ」と銘打たれていたとおり、バーチャルの「空間」をフルで使った演出がとにかくすごい。寝起きでリングに上がったら、正面から飛んできたストレートが鳩尾に食い込んで「グワーッ!!」と叫びながらふっ飛ばされた。そんな第一印象。さすがに実際に叫ぶのは我慢したものの、まもなくVRChatがフリーズしたことで別の意味で悲鳴が出ました。すぐに復帰できてよかった。

荘厳な音楽と共にステージに舞い降りながら、周囲の空間を赤く塗り替えるTORIENAさん。

1曲目のタイトル『Break Me Down』が表示されたのを確認し、ステージに近寄って見ようとしたらびっくり。――なんと、ステージの背後の壁をぶち破り、巨大なTORIENAさんが現れたではありませんか!

「なんじゃこりゃー!?」と叫ぶ隙もなく、両の拳を打ち付けてさらに破壊されるチルパークの外壁。フロアには瓦礫が降り注ぎ、かと思えば次々に生肉が召喚されていく。なんじゃこりゃー!?

壁の外から会場を覗くニコニコマーク、サイケデリックに染め上げられる視界、音楽に合わせてスパークする空間などなど、個々の要素のパワーが強い!

そしsてそんななか、破壊的な演出とサウンドによって思考を奪われた結果、フロアでヘドバンを始めた生肉さんに親近感を覚え始めた自分がいた。

「そうか……音楽を楽しむときは、何も考えず、生肉になればいいんだ……!」と勝手に納得していたところ、巨大TORIENAさんから放たれる電撃。粉々に砕け散る周囲の生肉さんたち。一瞬ではあるものの共に縦揺れを楽しんでいた同士の末路に、「お肉ーーーッ!!」と内心で絶叫せずにはいられなかった。良いヤツだったよ……。

電撃の餌食となった生肉さんたちに憐憫の情をいだく暇もなく、巨大TORIENAさんが目を覆うと同時に、今度はモノクロに染め上げられていく空間。自分も、周囲の人も、ステージも、細い線のシルエットでしか捉えられない。

頭上から学校の椅子が降り注ぎ、ステージ上に机が生えてきたタイミングで、表示される2曲目のタイトル『デコイ』

空間をまるごと使った演出とパワフルなサウンドでぶん殴られた前半からは一転、空中に立体的な歌詞が表示される、VR MV風のステージが始まった。

細い線のシルエットでしか捉えられなかった世界も、楽曲の2番に入ると輪郭がはっきりし始める。

ステージ上の机と椅子も、学校のものからオフィスのものに。手書き風だった歌詞のフォントも、くっきりとした明朝体に。

歌詞の表示方法なども含めて、物語性を感じる、観客に文脈を想像させる丁寧な演出が光る。オフィスデスクを見て「うっ……!」と苦しみ始めた人がいて、「やっぱりVRの臨場感ってすごい」と思った。

通して振り返ってみると、1曲目と2曲目では楽曲のカラーも表現も異なるのに、そういえば唐突さをまったく感じなかった。

前半、強い色彩でボコボコにされていたこともあってか、空間がモノクロになっていく過程で、「あ、ここで曲が変わるんだな」と自然と理解できていたように感じる。

1つのステージで2つの音楽と世界に浸れる、それでいて全体の世界観は一貫しているように感じられる、緩急の楽しい、見どころ盛りだくさんのパフォーマンスでした。また、生肉と一緒に踊りたい。

セットリスト
  1. Break Me DownYouTube / Spotify
  2. デコイSpotify

team:beyond_a_bit with EstyOctober

TORIENAさんのライブを鳩尾に喰らった約10分後、ちょうど次の時間帯にラインナップされていたのが、「team:beyond_a_bit with EstyOctober」だった。

「VRChatのワールドクリエイターさんたちがチームで作った作品らしい」とは聞いていたものの、知っていた事前情報としてはそれくらい。

「Quest単機でも見られる」ことはサイトでチェックしていたので、「どちらかと言えばライトな体験になるのかな……?」などと、この段階では(失礼ながら)思い込んでおりました。

実際、パフォーマンスの始まりはとても穏やか。

意味深な「箱」が置かれたステージ上で、スクリーンに映し出されるタイトル。「想像のちょっと先へ」というサブタイトルと、いまだ開かない箱を見て、いったい何が始まるのかとワクワクしながら動向を見守る。

空中に現れた鍵によって、ゆっくりと開かれていく箱。すると、光で形作られた花が顔を出し、ピアノの音色が響き始める。波打つ音の振動に呼応するかのように、フロアのあちらこちらで光の花が開いていく。気づけば、水中を泳ぐように羽を揺らめかせて飛ぶ、不思議な生物の姿もあった。

その幻想的な景色を見て、「きれいなビジュアルや空間演出で世界観を伝えるタイプの作品かな?」「これなら落ち着いて見られそう……」などと、リラックスして楽しもうと考えた自分。

ところがぎっちょん。

いつの間にかチルパークの外壁に根を張っていた巨大な植物の存在に気づき、「おや?」と思った数秒後のことでございます。

大きな衝撃があったわけでも、爆音が響いたわけでもないにもかかわらず、一瞬にして粉々になっていくチルパークが、そこにはあった――じゃなくて、ありませんでした。なんたって、空間ごと崩壊してしまったので。

先ほどのTORIENAさんが空間の一部を「破壊」していたのに対して、こちらは足元から「崩壊」していくという、予想だにしなかった展開。どうしてこうなった。

しかも比べてみると、前者のほうが動作としては激しいのに、静かに崩れ落ちていく後者のほうが規模としては大きい点もおもしろい。

そのギャップにも目を白黒させずにはいられなかったし、宇宙空間? を移動する星のような、種子のような巨大な存在に目を奪われながら、ここで前述の“確信”に至った格好でございます。

すなわち、「前回以上にB4フロアがヤバい」と。だって、まだ2つのステージしか見ていないのに、2回ともチルパークがぶっ壊れてるんだよ!? これは「ヤバい」以外の何物でもないでしょう。

まさか宇宙規模の世界観に飲み込まれるとは思わず、壮大な音楽と演出にすっかり飲まれてしまっていた自分。

けれど、箱から始まった旅はまだ終わらない。

巨大な何かに文字どおり“飲み込まれ”て視界が暗転し、周囲に見えるのは箱と観客だけ。いったい何が起こるのかと静寂の中で待ち構えていると、箱を中心に、今度は草原が広がっていく。

風そよぐ広大な草原で、再び花開く光の花々と、悠然と空を泳ぎ始める不思議な生物たち。宇宙空間を共に旅していた巨大な種子? も遠くに見え、「ここはいったいどこなんだろう……?」と考える間もなく、すべては箱へと還っていってしまった。

最初の注意事項とタイトル、終演後のクレジット以外に文字のたぐいは一切なく、人間やキャラクターの姿もない。しかし紛れもない「ライブ」だったし、壮大な世界観に飲み込まれ圧倒される、極上の体験だった。

なかば放心状態でチルパークを後にしながら、「そういえば、今のアレがQuest単機で見られるってマジ!?」と再度びっくり。しかも無料である。わけがわからない。

考えるよりも感じるタイプの作品だと思うので、ぜひとも現地で実際に体験してほしい。特に、Meta Quest 2を買ったはいいものの持て余してしまっている、そこのあなた! VRならではの極上体験を、しかも無料で味わえる、またとない機会です。

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【サムネイル】サンリオVfes2023

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この記事を書いた人

けいろーのアバター けいろー バーチャルライター

フリーライター。VTuber/VR関係のメディアとしては、MoguliveやVtuber Postに寄稿。インタビューやライブレポートなどを担当している。その他実績として、コミックナタリー、ふたまん+、SUUMOタウン、ぐるなび みんなのごはん、『初音ミクエキスポ』公式パンフレット、双葉社『EX大衆』VTuber特集、日本看護協会出版会『創造られたヒロイン、ナイチンゲールの虚像と実像』など