スマートフォンからもアクセスできるメタバースプラットフォーム「cluster」。
日本企業が運営する「国産メタバース」としても有名ですが、すでに多くの企業による導入実績があることはご存知でしょうか。最近はビジネスシーンだけでなく、教育分野や自治体の地域活動などの幅広い分野でメタバース活用が広がっています。
本記事で取り上げるのは、そんなclusterの活用事例について。さまざまな需要に応えられる「cluster」というサービスの特徴を知るきっかけとして、あるいは「メタバースの活用方法にはどのようなものがあるのか」という視点でも、参考にしていただければ幸いです。
企業のメタバース活用において、clusterにはどのような事例がある?
人気IPの世界観をバーチャル空間に再現したコラボレーションイベントや、テレビ番組の公開収録、メーカーによる自社製品のブランディングに、教育現場では学校の授業での活用など、多岐にわたる分野で実績がある。
具体的にはどのような企業や団体がclusterを利用している?
ポケモン、タカラトミー、ディズニー、テレビ朝日、近鉄不動産、明治安田生命、ハウス食品、トヨタ自動車、ダイハツ工業、角川ドワンゴ学園、東京国立博物館、防衛省、渋谷区、東京都ほか。
さまざまなメタバースがあるが、企業が「cluster」を選ぶメリットは?
海外発のサービスが多いなかで、「日本企業が運営する国産メタバース」であるのは大きな強み。また、オンラインイベント需要が高まるコロナ禍以前からバーチャル空間でイベントを開いてきた実績や、「スマホで簡単にアクセスできる」という間口の広さもメリット。
「cluster」とは?手軽にアクセスできるバーチャルSNS

クラスター株式会社が運営する「cluster」は、スマートフォン、PC、VRヘッドセットなど、さまざまなデバイスからアクセスできるメタバースプラットフォーム。「メタバース」と言われてもピンとこない人もいるかもしれませんが、その場合は「バーチャル空間上のSNS」と言い換えてもいいかもしれません。
従来のSNSはテキストや写真を使ったタイムライン(画面上)での交流がメインでしたが、バーチャルSNSでは「仮想空間」がコミュニケーションの舞台です。ユーザーは自分の分身となる「アバター」を使って、他のユーザーと会話をしたり、イベントに参加したり、ゲームを楽しんだりすることができます。
clusterはそんな「バーチャルSNS」に分類されるサービスですが、VR機器がなくても利用できるのがポイント。手元のスマートフォンでどこからでも仮想空間にアクセスし、交流やイベント、ゲームやワールド散策、ファッションなどを自由に楽しめます。
さらにclusterでは、ユーザー自ら作ったワールドやアバターをアップロードすることも可能。作成したアイテムの売買や有料イベントの開催など、クリエイター経済圏がすでに確立されています。大勢の個人ユーザーが日常的に利用し、交流や創作の輪が広がっている点も、clusterの特筆すべきポイントだと言えるでしょう。
ではここからは、clusterの活用事例を分野・目的別に見ていきましょう。

エンターテインメント:新たな体験価値の創出
バーチャル空間で、ゲームやイベントを楽しめる――。そんなメタバースとの親和性が高い分野と言えば、まず思い浮かぶのがエンタメ業界です。
特にclusterは人気IPとのコラボレーション事例も多く、これまでにさまざまなイベントや企画が実施されています。それこそ、メタバースの活用方法がまだ定まっていない頃から多くの企業が参入し、仮想世界で新たな体験や価値を創出するための試行錯誤が行われてきました。
また、エンタメ系の企業だけでなく、自治体が現実世界の街や建物をメタバース空間に再現し、そこでバーチャルイベントを開催するような事例もあります。「バーチャル渋谷」はテレビ番組のメタバース特集でもよく取り上げられていたため、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
まずは、そのような活用事例から見ていきましょう。
バーチャル渋谷

国内初の自治体公認メタバースとして誕生した、「バーチャル渋谷」。KDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会を中心とした、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」が立ち上げに携わっています。
渋谷駅前のスクランブル交差点を主に再現したワールドとして、2020年にオープン。毎年10月には「バーチャルハロウィーン」を開催しているほか、有名アーティストが出演するバーチャルライブや、人気コンテンツとのコラボレーションイベント、映画上映やスポーツ観戦など、多岐にわたるイベントが開催されています。
バーチャル渋谷で行われたイベントの総参加者数は、2023年時点でのべ300万人。4年連続で開催されているバーチャルハロウィーンには毎年世界中からユーザーがアクセスし、アバターの姿で多種多様なコラボイベントを楽しんでいます。





また、バーチャルハロウィーンはclusterだけでなく、「αU metaverse」「STYLY」「XR CLOUD」「REALITY」といったプラットフォームと連動して開催している点もこの施策のポイント。複数のメタバースでアクセスして楽しめる間口の広さは、この「バーチャル渋谷」ならではの特徴と言えます。
比較的早い段階でローンチされたメタバース施策でありながら、1回きりのイベント開催で終わらず、2025年現在に至るまで継続的に運用されている、バーチャル渋谷。これまでに実施されたイベントやコラボレーションの幅も広く、参考になる点も多いはず。メタバース活用を検討するにあたって、知っておいて損のない施策と言えるのではないでしょうか。


ポケモンバーチャルフェスト

「ポケモンバーチャルフェスト」は、2020年8月に期間限定でオープンしていたバーチャル遊園地。その名の通り、あの『ポケットモンスター』とコラボしたメタバース空間です。
イベントのテーマは、「みんなでつくる、夏の思い出」。来場者はポケモンをモチーフにした遊園地に入り、他の参加者や友達と一緒にアトラクションやミッションなどを楽しむことができました。
また、テーマパーク内の特設ステージではイベントも実施。アニメの同時視聴イベントや、ピカチュウのきぐるみたちが踊るダンスショーが行われました。最終日にはピコ太郎さんが登場し、ピカチュウとのコラボ楽曲を披露。「ポケモンのテーマパーク」という、ファンにとっては夢のような空間で、グランドフィナーレを迎えました。




少し補足すると、ポケモンバーチャルフェストが開催されたのは、コロナ禍真っ只中の2020年夏のこと。また、あくまでも「ポケモンをモチーフにした遊園地」であり、仮想空間でポケモンたちと触れ合えたわけではありません。そのような点を考慮すると、おそらくはポケモン社としても実験的な試みだったのではないかと推測できます。
ポケモン社の担当者によると、この企画の下地には「みんなでひとつのものを作り上げていく、一体感が生まれるものを作れないか1」という考えがあったそう。筆者も実際に何度か遊びに行ったのですが、ボイスチャットで喋りながら園内を巡る人の姿も見受けられていたことから、その狙いは達成されていたのではないかと思います。
現実世界で集まれない時期だったからこそ生まれた、夢のテーマパーク。動くポケモンたちと触れ合えなかったのは残念と言えば残念ですが、「こういうコラボの仕方もあるのか!」という新鮮さも感じたお祭りイベントでした。IPを活用したメタバース施策の事例として参考になるのではないでしょうか。

メタバース 黒ひげ危機一発

古今東西で知られる定番のパーティーゲーム「黒ひげ危機一発」のメタバース版。3年ぶりのオフライン開催となった「東京ゲームショウ2022」で発表され、大きな反響を呼びました。
船着き場や海賊船が表現された世界観のワールドに用意されているのは、3種類の「黒ひげ危機一発」。定番の「1人ずつ剣を穴に刺していき、黒ひげ人形が飛び出した人が負け」というゲームをはじめ、協力プレイやアクション要素もあるゲームを最大12人で楽しめます。
「無料で遊べるゲームワールド」として2025年現在もユーザーのあいだで遊ばれていますが2、有料のアバターとゲームを設けているのもこの施策のポイント。3種類のゲームのうちの1つは、200クラスターコイン(200〜300円相当)の価格設定でプレイ可能となっています。
タカラトミー社の担当者によると、「ブランディングとしては一定の成功を収めましたが、ビジネス面としての課題はいくつかあり――3」との話もあり、マネタイズに関してはまだ難しい部分もあるのかもしれません。インタビュー記事では「遊びの設計」やプロモーションなど興味深いお話もされているので、詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。




光と星のメタバース六本木

「光と星のメタバース六本木」は、テレビ朝日がcluster上で公開しているワールド。
もともとは2021年に放送されていたバラエティ番組『声優パーク建設計画 VR部』と連動したバーチャル空間であり、「バーチャル六本木」という名称で建設がスタート。番組の放送終了後に一定時間オープンし、出演者の関智一さん&ぺこぱの2人とワールドで交流することができました。
その後、番組名の変更に伴い「メタバース六本木」に改名。テレビ朝日のさまざまな人気番組と連動した企画やイベントが楽しめる空間として、本格的に活用されるようになります。アニメや映画のコラボレーションワールドなども次々に登場し、番組や作品のファンが集まる交流拠点としての側面を強めていきます。
2023年10月からは、メタバースをさらに深く掘り下げる情報バラエティ番組『金曜日のメタバース』がスタート。メタバース六本木をイベント会場としてだけでなく、「収録スタジオ」としても使うようになります。


さらに2024年夏には、バーチャル文化祭「メタメタ大作戦」を開催。『ミュージックステーション』『Qさま!!』『しくじり先生』『あのちゃんねる』『ブルーロック』などの人気番組とコラボし、7月のオープンから10日で5万人もの来場者数4を記録します。この文化祭は9月1日までの夏休みいっぱい実施され、大勢が訪れる一大イベントとなりました。
現在は生配信ラジオ風番組『六本木メタメタRADIO』の発信基地として活用されつつ、訪れたユーザーがさまざまなゲームで遊んだり、テレビ朝日のコンテンツを楽しんだりできる空間となっています。常に大勢が行き交っているわけではありませんが、テレビ朝日が独自に持つバーチャルプラットフォームとして重要な地位を確立していると言えるでしょう。
その後も、2025年3月には羽生結弦さんの単独公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd ”Echoes of Life” TOUR」とコラボし、3日間で来場者数がのべ13万人を突破5。テレビ番組との連動のみならず、多様なIPとのコラボレーションやイベント開催などを通じて、メタバース六本木は新しい体験を提供し続けています。

- バーチャルあべのハルカス:近鉄不動産株式会社が2023年にオープン。高さ300メートルを誇る超高層複合ビル「あべのハルカス」をバーチャル空間に再現した。現実世界にもある施設と展望台から見える景色を楽しめるほか、バーチャルならではのゲームやアトラクションで友達と遊ぶこともできる。【公式サイト】
- 劇場版「BanG Dream! FILM LIVE」in イオンシネマVR:バーチャル劇場「イオンシネマ」で2019年に行われた、映画の上映イベント。キャストの舞台挨拶に始まり、本編の上映中にはオーディオコメンタリーを楽しめた。【イベントページ】
- 『ディズニー ツイステッドワンダーランド』バーチャル ハロウィーンイベント2021:『ディズニー ツイステッドワンダーランド』の世界をバーチャル空間に再現した期間限定イベント。ワールド内の複数のエリアでミッションをこなすことで、限定アバターを入手できた。【プレスリリース】
ブランディング:自社サービスの紹介や価値の向上
企業によるメタバース活用の目的もさまざまですが、その1つに「ブランディング」を掲げているケースは少なくありません。
自社の商品やサービスにまつわる体験をバーチャル空間に用意し、それをユーザーに提供することで、ブランドの認知度向上につなげる。「バーチャル展示場で商品を体験してもらう」「サービスの要素を取り入れたゲームで遊んでもらう」といった施策は定番です。
自社商品をデジタル化して販売することもありますが、目的はあくまでも「知ってもらう」「興味を持ってもらう」こと。商業性を前面に出さない、無料で遊べるゲームワールドを公開している施策も珍しくありません。あるいは、空間に「イベント会場」としての機能を持たせてトークイベントやライブを開催し、集客を狙うケースもあります。
自由度の高いメタバース空間は、業種に関係なくブランディングやプロモーションに活用できることも大きな魅力です。多岐にわたる企業のメタバース施策の事例の一部を紹介します。
明治安田バーチャルスタジアム

明治安田保険相互会社が2022年にオープンした、「明治安田バーチャルスタジアム」。
同社が2019年から展開しているプロジェクト、顧客の健康維持・改善に向けた取り組みを応援する「みんなの健活プロジェクト」の一環として実施されたメタバース施策です。
ワールドには「健康○×クイズ」や「メタバース保険アスレチックゲーム」といった、5つの常設コンテンツを用意。ゲームを通して、健康や保険について楽しく学べます。
他方では、「スタジアム」というワールドの特性を活かしたイベントも定期的に開催。Jリーグのバーチャル観戦を皮切りに、お笑いライブや金融セミナーが行われました。「健活LIVE」と題したイベントも何度か開催されており、過去には月ノ美兎さん、リゼ・ヘルエスタさん、周央サンゴさんたち人気VTuberも登場しています。






ニチレイCOLDワールド

株式会社ニチレイが2024年に公開した、「ニチレイCOLDワールド」。
一面の氷の世界で写真を撮ったり、サーキットを走ったりして遊べるワールドで、サーキットのコースにはニチレイの冷凍食品が登場。中華鍋や段ボールに乗って氷上のコースを進み、最後のクイズに正解すると、アバターに装着できるアクセサリーを獲得できます。
このサーキットが思いのほか難しく、純粋にゲームとしても楽しめますが、その遊びの中で「ニチレイ」という企業について知ることができるのが、このワールドの肝です。
単に自社製品を紹介するのではなく、同社のコア技術である「冷力」や低温物流の仕組みを、エンタメ性のあるアトラクションとして提供。それをユーザーに体験してもらうことで、企業活動への理解促進と、安心・安全な食を支える企業としての信頼性のブランディングにつなげています。
担当者インタビューでは、メタバースを起用した理由や、ワールドを作るにあたっての工夫、ユーザーからの反響などについても言及されています。clusterを使ったメタバース施策に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。


爆創クラブ

トヨタ自動車株式会社とダイハツ工業株式会社との共同プロジェクトとして、クラスター社が開発したメタバースゲーム「爆創クラブ」。
もともとは「東京ゲームショウ2023」などのイベント限定でプレイできたゲームであり、その際は前述の2社のほか、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、日産自動車株式会社、本田技研工業株式会社、マツダ株式会社、三菱自動車工業株式会社を加えた、自動車メーカー8社との共同プロジェクトとして公開されました。
その後、一般公開版として2024年にリリースされたのが、現在公開中のワールドです。
ワールドではまず、実際に存在するトヨタ&ダイハツの車両から、好きなクルマを選んで乗車。コース上に落ちているパーツに触れると、自動でクルマに装着されていきます。そうやってカスタムしたオリジナルマシンを展示したり、好きなパーツで組み立てたりして遊べるのが、この爆創クラブです。
そもそも、自動車メーカーは早い段階でメタバースに参入しており、VRChatでも以前からさまざまな施策を展開していました。この爆創クラブもその試みの1つですが、特に「ゲーム」としての要素が強く全面に出ていること、また、それでいて定番のレースゲームではなく、「創る」ことに着目している点が特徴的な施策だと言えます。




教育:学びの可能性を拡張
clusterは、教育機関での無償利用が認められているメタバースプラットフォームです。
サービスを運営するクラスター社としても教育現場での活用を推奨しており、教育者向けの資料として「Educator’s Guide」を配布中。導入のハードルが低く、サポート体制も整っていることで、ICT教育や「情報」科目の授業での利用のほか、オープンキャンパスや大学の講義での導入も広がっています。
また、学校が主導してメタバースを導入するだけでなく、生徒が主体となって実現した活用事例があるのもこの分野の特筆すべきポイントです。デジタルネイティブならぬ「メタバースネイティブ」な世代の取り組みにもご注目ください。
青山学院高等部
青山学院高等部は、2022年に必修科目となった「情報Ⅰ」の授業でclusterを活用しています。
授業内でメタバースについて学ぶ際に、さまざまなデバイスで利用できるclusterを採用。担当教師へのインタビュー記事によると、実際にアバターを設定して仮想空間に入るのみならず、ワールドクラフト機能を使ったワールド作成も授業に取り入れているそうです。
同記事によれば、仮想空間内で注意すべきことを実体験ベースで学べることが、clusterの魅力だそう。また、プログラミングや情報セキュリティといった他の学習内容と紐づけることもでき、1年間の総まとめに使える点も、clusterを授業に取り入れるメリットだとコメントしています。
その取り組みも1年だけで終わらず、「2025年度にVRゴーグルを45個程度購入している」との話もあることから、授業でのcluster活用が一定の成果を挙げていることがうかがえます。詳しくは下記記事を参照ください。
青翔開智中学校・高等学校
いち早く教育現場へのcluster導入を試みたのが、青翔開智中学校・高等学校です。
2020年のコロナ禍には、clusterを活用したオンライン学園祭を実現。生徒自らUnityを使ってワールドを制作し、各クラスの出し物もcluster上で公開しました。
その後、文化祭でclusterの担当教員を務めた社会科の池田先生が、自身の授業でもclusterを活用するように。歴史の授業では関ヶ原のワールドを、地理の授業ではマンハッタンを再現したゲームワールドを作って、「体験」を通した学びを生徒に提供しています。
さらに、池田先生が作成したワールドを使って、物理の授業ではモンキーハンティングの実験を実施。ゲーム感覚で操作できる点もそうですが、現実世界では困難なさまざまな条件下で実験を行えるのもメタバースの魅力です。この実験の様子はYouTubeチャンネルで公開されているので、気になる方はぜひ見てみてください。
現在も学校のアカウントでは生徒の作品や成果物が展示されており、継続してclusterを活用していることがわかります。また、同校の卒業生には、clusterを活用した研究が評価されたことで、筑波大学に学校推薦型選抜で合格した生徒もいるそうです。これもメタバース教育の顕著な実績だと言えるでしょう。
アート&カルチャー:創造性と表現の新たな舞台
最近はリアルの美術館や博物館でもVRコンテンツの導入が進んでおり、ヘッドセットを使った体験型展示を見かける機会が増えています。その一方で、オンラインでアートを楽しめるメタバース上での施策にも、いろいろなタイプの事例があることはご存知でしょうか。
それは、自宅にいながらにして芸術作品や文化遺産に触れることのできる、バーチャル美術館・博物館。さらに近年は、そこに動物園も参入しています。芸術や歴史を中心とする「カルチャー」の分野では、どのような活用事例があるのか。見ていきましょう。
バーチャル東京国立博物館

東京国立博物館が凸版印刷株式会社と協力して2020年にオープンしたのが、「バーチャル東京国立博物館」。東京国立博物館の一部を「バーチャルトーハク」としてcluster上で再現し、たびたび展覧会が開かれています。
2020年のオープン時には、アニメ映画『時をかける少女』とコラボレーションした特別展「アノニマス ―逸名の名画―」を開催。作中に登場する、現実世界には実存しない作品「白梅ニ椿菊図」を中心に、さまざまな作品が展示されました。
また、2023年には東京国立博物館の創立150年を記念して、「エウレカトーハク!◉89」を開催。トーハクが所蔵する全89点の国宝のほか、バーチャルならではの没入感のある作品を展示し話題になりました。現代アーティストによるリスペクトアートの展示やNFTアートの販売など、実験的な試みも行われています。
いずれも期間限定の特別展ではありましたが、2025年4月からは「エウレカトーハク!◉89」の再公開をスタート。今回は2026年3月までの長期間開催となっています。国宝を間近で見られる機会ですので、ぜひ今のうちに足を運んでみてください。






Virtual Edo-Tokyoプロジェクト

東京都が2024年1〜2月にかけて開催した、「Virtual Edo-Tokyoプロジェクト」。
「持続可能な新しい価値」を生み出す「SusHi Tech Tokyo」を推進する取り組みの一環として実施された、メタバースから東京の魅力を国内外に発信するためのプロジェクトです。
このプロジェクトでは、江戸・東京の魅力を体験できるバーチャル空間をcluster上に構築。個性豊かな12の「江戸・東京の新名所」をメタバース空間に再現し、ユーザーはその広大な空間と街並みをアバターの姿で散策したり、歴史や文化に触れたりすることができます。


clusterでまず入るのは、「Entrance」エリア。そこから7つのエリアにワープできます。江戸城でクイズやスタンプラリーを楽しみながら江戸の歴史や文化を学んだり、さまざまなテーマのVR映像を鑑賞したり、ゲームやアトラクションで遊べたり、都内の高校生が作ったワールドを散策できたりと、非常に多くのコンテンツが用意されています。
1月のオープニングイベントにはきゃりーぱみゅぱみゅさんが出演したほか、期間中にはたびたびイベントを実施。VTuber・朝ノ瑠璃さんとMaiRさんが出演する音楽ライブなども行われ、SNSでも話題になりました。
2024年2月に一旦は終了したプロジェクトですが、翌月にはワールドを再オープン。その後もコンテンツのリニューアルや募集企画をたびたび実施しているようです。公式サイトではプロジェクトの結果をまとめたレポートも掲載しているので、来場者数をはじめとする詳細なデータを知りたい方はチェックしてみてください。






バーチャル天王寺動物園

近鉄不動産株式会社が2024年にオープンした、天王寺動物園公認ワールド「バーチャル天王寺動物園」。
リアルの天王寺動物園のアフリカ・サバンナゾーンをモチーフとしたワールドで、岩や水辺を再現した展示スペースで動物たちを観察できます。鳴き声は本物の動物たちの声を実装していて、天王寺動物園提供のクイズも楽しめます。


バーチャルならではの「上空から動物を観察できる乗り物」といった要素もありますが、特筆すべきはショップエリア。天王寺動物園と共同で制作した動物のアクセサリーなどを有料アイテムとして販売しているのですが、売上は全額を同園に寄付。動物園の運営や動物福祉に役立てられています。
「動物を見て、楽しんで、帰り際にショップでおみやげを買う」というリアルの動物園と同じ体験ができるだけでなく、その購買体験が社会貢献活動にも結びついている。この取り組みについてはSNSでも反響があり、動物園×メタバースの掛け合わせによる新しい社会貢献事業として注目を浴びています。






- バーチャルムサビ展:武蔵野美術大学の学生が2020年に開催した企画展示。学生が制作した作品を見られるほか、会期中には武蔵野美術大学の講師でもあるデザイナー・有馬トモユキさんによる講評会も行われた。ワールドは現在も公開中。【公式X】
5年以上にわたる導入実績があり、活用事例も豊富なメタバース「cluster」
オンラインイベントの需要が高まり始めるコロナ禍以前から、バーチャル空間でイベントを開催してきたcluster。5年以上にわたって種々様々な分野で活用されてきた実績もあり、本記事で取り上げた事例は全体のほんの一部に過ぎません。
他方では、VRChatやRobloxといった別のメタバースを活用したイベントや、独自にプラットフォームを開発する企業も最近は増えつつあります。リッチな空間表現に関してはVRChatの得意とするところですし、全世界で圧倒的なユーザー数を誇るRobloxも魅力的ですが、clusterならではの強みも当然あります。
端的にまとめるのであれば、日本企業が運営する国産メタバースであり、大勢が同時に参加可能で、スマホからでもアクセスできること。そのようなメリットもあることから、プラットフォームの選択肢が増えた今もなお、clusterは多くの企業から選ばれるメタバースであり続けています。少なくとも日本国内では、clusterが数あるメタバースの中でも一定の地位を確立していることは間違いありません。
とはいえ、一口に「メタバース活用」と言っても、その目的や方法はさまざまです。今回は取り上げられなかった事例もありますし、cluster以外のメタバースでの活用事例を知ることで見え方が変わる部分もあるかもしれません。当サイトではVRChatの事例も取り上げる予定ですので、ご興味のある方はブックマークまたはXのフォローをお願いします。
- ファンは絶対行くべき!「ポケモンバーチャルフェスト」をVRで先行体験 – MoguLive ↩︎
- ワールドの写真を撮るためにログインしたところ(2025年6月)、テキストチャットで会話をしながらゲームを楽しんでいる人たちと偶然に遭遇したことから、今も日常的にユーザーのあいだで遊ばれていると思われます。 ↩︎
- メタバースを「新たなアソビの活用法」に。「メタバース 黒ひげ危機一発」が示した可能性 ↩︎
- グランドオープンから10日間で総来場者5万人を突破!史上最大のバーチャル文化祭 「メタメタ大作戦」絶賛開催中~今後も地上波「高校球児ランキング」特番など地上波注目番組とのコラボなど続々決定 | クラスター株式会社のプレスリリース ↩︎
- 羽生結弦さんがアバターで降臨!?日本最大級のメタバースファンイベントを開催!オープンからわずか3日間で来場者数のべ13万人を突破! | 株式会社テレビ朝日のプレスリリース ↩︎