記事作家中心、ゲームシナリオ等を書いている幽かな者。言葉と人と音。
配信よりTRPGやOBS記事、ボードゲーム等最優先。台本もゆるっと全力で。身体はまだ電子霊体なので、βテスト中。
今回はゲストのサザノノザサさんにテーマを用意していただいております。本日のテーマは何でしょうか?
本日のテーマはですね……!
大阪万博のロゴ「いのちの輝きくん」でございます!
あの形に決まったのは予想外……でも、気づけば好きになっていた
――出ましたね……いのちの輝きくん! 普段からSNSにどっぷり浸かっている人なら、もうみんな知っているようなレベルで盛り上がっていましたよね。今回、サザノさんはなぜこちらをテーマに選んだのでしょうか?
サザノノザサ:
すごく……深くないですか?(笑)
細胞みたいなイメージとか、1970年の日本万博のロゴの桜をリスペクトしてこの柄にしたとか、すごく考えていらっしゃるところがとても好きで。あのロゴマークのデザインコンセプトがネット上でも公開されているのですが、それがすごく好きで……あ、読んじゃってもいいですか?
――ぜひお願いします!
踊っている。跳ねている。弾んでいる。
ロゴマークについて – 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会より
だから生きている。
きっと心を踊らせるサイエンスやテクノロジーの発見。
だれもが飛び跳ねたくなるエンターテイメントの興奮。
つい胸を弾ませてしまうアートやクリエイティブの感動。
それらは人の身体のずっとずっと奥深くにまでとどいて、いのちをささえているCELL(細胞)たちにも元気をあたえてくれる。
2025年大阪・関西万博という、わたしたちがもうすぐ出逢える新しい未来。
一人ひとりの個性が躍動しながら集まって、繋がって、そこにはきっと、いのちの輝きがあふれている。
サザノノザサ:
……というのが、デザインコンセプトになっています。
――改めて読むと、ちょっと詩的な感じもあっていいですね。
サザノノザサ:
深い、ですよね。どちらかと言うと童話チックで、みんなに伝わる言葉で書いているので、すごく親しみやすいなあと。あと、デザインを担当された方はもともと大阪で育った方らしくて、太陽の塔を見て感じたインパクトもロゴに入れたいな、って思っていらっしゃったらしくて。
「ロゴ」って意味をいっぱい込めて作るものだと思うんですけど、あのロゴを初めて見たとき、何を伝えたいのかがわからなかったんです。でもだからこそ、「これはどういう意味なのか」「どんな意図があるのか」を調べたくなって。実際に調べてみると、「これは細胞を表しているんだよ」とか、「すごく喜んでいる様子を示しているんだよ」とか、意味や意図を本当に親切に書いてくださっていたんですよね。なので、ロゴの良さだけじゃなくて、「テーマ性をしっかり描いている」ことの良さをすごく感じました。
ロゴマークをデザインしたのは、大阪市浪速区稲荷を拠点に活動する「TEAM INARI」。デザイナー3人、コピーライター1人、イラストレーター1人で構成されるチームで、代表はシマダタモツさん。ロゴの発表会に登壇された際にも、「太陽の塔」が発想のきっかけになったと話していました(参考リンク)。
――第一印象のインパクトもあって、人によってはいろいろな受け取り方ができそうではありますが……。
サザノノザサ:
そうですね。『沙耶の唄』って言われてましたからね!
――言われてましたね(笑)。多くの人が大なり小なりインパクトを受けたんじゃないかと思いますが、そこに込められている意味を調べて読んでみると、納得できるものだった――と。それも、このロゴが話題になった一因なのかもしれませんね。サザノさんは、発表があった当日にはすでにロゴの存在を知っていた感じですか?
サザノノザサ:
ロゴマークの最終候補に残った5つの作品の段階で、たしか1番……かな? あの候補と、お花みたいなマークもあってそれも好きだったので、そのどっちかになったらいいなと当初は思っていました。なので、「あっ、こっちになっちゃったんだ!」パターンの人でした、はじめは。
――もともとは別の本命があったんですね。
サザノノザサ:
ありましたね。「ロゴマーク」としてよく見る感じの、整っていてきれいだなと感じるロゴがすごく好きなので。「あっ……こ、こっちなんだ……」って少し戸惑って、どうしてなんだろうと思っていろいろ調べた感じです。そこで、「これはデザイナーさんがいろいろ考えた想いがこもっている作品なんだな」と。
あと、ファンアートや二次創作的な動きはあまり追っていませんでした。基本、オリジナル主体で見ちゃうので。でも、これだけ話題になって、みんなが知ろうとしてくれている光景を目の当たりにすると、「ロゴマーク」としての役割を完璧に果たしているようにも見えるので、良いことだと思います。
いのちの輝きくんと、ナザール・ボンジュウ
――ちなみに、最終選考の段階でチェックされていたということは、普段からロゴのようなデザインを意識して見られていたりするのでしょうか。
サザノノザサ:
そうですね。私はロゴをぜんぜん作れないので、お勉強の一環としてロゴを結構見たりしています。そうすると、やっぱりデザイナーさんによって色がぜんぜん違うのがわかって、すごくおもしろいなと。
――その中で万博のロゴマークもチェックしていたら、思わぬ案に決定し、しかもいつの間にか「いのちの輝きくん」という名前までついて盛り上がっていた……という(笑)。
サザノノザサ:
そうなんです。まさかの「くん」がついて。公式キャラクターくんに関しても……あの……どうなんだろう? (ロゴマークとは別に)「公式キャラクター」としてまた新しいのが出てきて、もともとキャラクターみたいなロゴにキャラクターがついたので、「??」ってなりながら、「これはどういうふうに咀嚼すればいいんだろう……?」と思いながら見てますね。
――そうすると、公式キャラクターのほうはロゴとはまた別の印象を持って見ている感じですか?
サザノノザサ:
また違う方が作ってらっしゃるはずなので――山下さん、ですかね? ――作者がもう1人増えるってなると、また解釈の意図が変わってくるので。私は基本的に、そのクリエイターさんベースの考えで作品を見たいので、公式キャラクターのデザイナーさんの考えがわからないかぎりは、「どう愛せばいいのかな?」って感じですね。
1,898作品もの応募があった公式キャラクターデザインの中から、最優秀賞作品として選ばれたのは、デザインレーベル「mountain mountain」の絵本作家・山下浩平さんの作品。「ロゴマークをそのままキャラクターに出来ないかな?」というアイデアから生まれたそう(参考リンク)。
――まずは原典ありき、ということですね。一方でロゴの発表からは早くも1年半が経ちますが、自分なりに咀嚼してみて印象が変わった部分などはありますか?
サザノノザサ:
もともとあのロゴ自体、作者さんが「これは細胞です」と意図して作っていらっしゃるものであり、「いろんなものに進化する可能性がある」という前提で作られている作品のはずなんですね。なので、そのロゴの二次創作が増えるというのは、作者さんのコンセプトに合っていることなんじゃないかなと。「愛され方が合っている」というか、作者さんも喜びそうな広がり方を多分しているので、みんな幸せだし、「このロゴもすごい幸せなんだろうな」って思っています。
――言われてみれば、ネット民が自由気ままに遊んでいる感じではありますが、たしかにコンセプト通りの流れになっているようにも見えますね。ちょっとふわっとした質問になりますが、この「いのちの輝き」というテーマについて何か思うところなどはありますか?
サザノノザサ:
いのちの輝き、ですか? いのちの輝き……なるほど……。私はTRPGをよくプレイしているのですが、あれって、しょっちゅう人が死ぬゲームなんです。なので、死にそうになると、
いのちの輝きうんにゃらこんにゃら!
とか言い始めたりしてる(笑)。そのたびにいのちの輝きくんが頭の中に浮かんで、「いのちの輝きくんっ……!」ってなります! なんだこれ(笑)。
――じゃあ割と生活に密着してくれているような部分があるんですね(笑)。
サザノノザサ:
密着してますね。どうにか助けてもらいたいときは、いのちの輝きくんを思い出して、ダイスを振って、100を出し、死ぬ……っていうところまでは定番ですね。悲しっ。
あと、いのちの輝きくんってトルコのマークにも似ているので、それもあって、気持ち悪さや違和感といったものは実はそんなに感じていなかったんですよね。
――トルコのマーク、というのは?
サザノノザサ:
青い目がついた、トルコのお守りがあるんです。えっと……(カタカタとキーボードで検索する音)……あった。「ナザール・ボンジュウ」ってやつです。これにはもともと「願いを叶える」とか「魔除け」とかの意味があるんですが、この子(いのちの輝きくん)にも近いイメージを感じている部分があるかもしれないです。
私は小さい頃にこれを持っていて、本当に「目玉かわいいな」くらいの感じで見ていたので。なので、いのちの輝きくんが出てきたときも、「あ、かわいい」くらいの感じで済んだ感はありますね。あの、気持ち悪くは感じないけれど、私の一番ではなかったから、お通夜……って感じです(笑)。
「愛おしくはあるけれど、かわいいとは思えない」
――ちなみにこの、公式キャラクターとして決まったC案についてはどんな印象を持ってますか?
サザノノザサ:
最終候補が発表されたときに「どうせCになるだろう」って思ってて、案の定Cになって、案の定みんな喜んでるっていう(笑)。でもこのC案……すごいですよね。ロゴマークのコンセプトをそのまま使っていらっしゃる。あと私、いまだにこの「水の都」の部分が咀嚼できなくて。「水の都なんだー!?」って。
――あれですよね、体の部分が水を表している、という……。
サザノノザサ:
そうなんですそうなんです。で、「いろいろ姿を変えられる細胞」としてデザインされたロゴマークと、そこに変幻自在な水が合わさって、2つともいろいろ自由に変われるよ、っていう。どちらも無限に想像できるし、いろんなものに進化できる。ロゴマークのコンセプトと同じコンセプトで作った子なんだろうな、っていう感じはします。
――そういえばC案には、いろいろな変身バリエーションの画像もありましたよね。
サザノノザサ:
すごいですよね。特に飛んでるやつ。象みたいなやつがあるんですけど、いのちの輝きくんの目の部分が象の目になっていて、鼻の部分が3つに裂けていて、そこの先端に目が3つついてるんですよ。すごいなーって。……ただ、あの、尊敬はするんですけど、自分はこのデザインを見たときに、「お、おぉう……」ってなってしまったんですよね。このキャラクターの部分が、まだうまく咀嚼できてなくて……。
――引っかかっているのは、「水の都」の部分ですか?
サザノノザサ:
いえ、形があまりにも……トリッキーすぎて……。愛してはいるんだけれども……この姿が……うまく愛せない……(笑)。心がっ……! つらいっ……! すごい……あの……なんだろう……。
愛おしくはあるけれど、かわいいとは思えない――。
それです! それですきっと!
――愛はあるけれど、ちょっと自分の「かわいい」の価値観からは離れてるかな、みたいな。
サザノノザサ:
そうなんです! これを缶バッジにして持ち歩きたいかって言われたら、「それよりは猫とか犬とかのバッジを持ち歩きたいですね」ってなっちゃうので。
もちろん、水の都くんはもう見慣れてしまったし、この子(C案のキャラクター)自体は、「いのちの輝きくんのことが大好きな水の都くん」みたいな感じの雰囲気が出ているので、すごく好きなんですよ。ただ、このロゴマーク自体をかわいいって思った人間にとっては……ちょっと……。ほかのバリエーションを見ると、ロゴマークであるいのちの輝きくんの部分が……引き裂かれてるんですよね(笑)。そこから解釈が始まるんですよ。どういう思考でこうなっちゃったんだろう……って。
でも多分、C案のデザイナーさんは、「この2人(水の都くんといのちの輝きくん)は仲良し!」みたいな感じで作ってるんだろうな、とは思うんですけど。ただ、人間目線の感想としては、「体が分割される」ことは「仲良し」とはちょっと違うように考えてしまうので……。「私も人間の考えを捨てないと、ここの境地まで至らないな」と強く感じています。基本的に、人間は体を分割したら犯罪なので。
――そうですね(笑)。少なくとも現代の人類からすれば、「上半身と下半身を分割して、あなたに半分を分けてあげるから、仲良し!」みたいなことにはなりませんからね……。
サザノノザサ:
本当にそうなんですよ! でも2人はめちゃめちゃ楽しそうに遊んでいるように見えるから、この光景を咀嚼するのには、相当時間がかかるなと……。
――どのバリエーションもめっちゃ笑顔ですもんね(笑)。
サザノノザサ:
そうなんですよ困る!! 本人たちが幸せならそれでいいんですけど(笑)。
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