バーチャルシンガー、イラストレーター、そして声優。
マルチな才能と唯一無二の歌声で多くのファンを魅了し続ける、バーチャルダークシンガー・ヰ世界情緒(いせかいじょうちょ)。彼女の新曲「ラケナリアの夢」は、TVアニメ『魔術師クノンは見えている』のオープニングテーマとして、物語の幕開けを鮮やかに彩っている。
香椎モイミとのタッグで生み出された新曲での挑戦や、『クノン』の物語に共鳴した創作への想い、彼女自身の意外なアニメライフと、密かに抱き続けてきたVR空間への憧れまで――。2026年、さらなる進化を遂げる彼女の現在地に迫る。
インタビュー・執筆・編集 / けいろー(@K16writer)
「光を届けたいわけではない」――ヰ世界情緒が“心の篝火”という言葉に託した、シンガーとしての矜持

――まずは自己紹介をお願いします。
ヰ世界情緒:
バーチャルダークシンガーのヰ世界情緒と言います。普段は歌を歌ったり、絵を描いたり、声優をしたりと、マルチに創作活動をさせていただいているシンガーです。よろしくお願いします。
――よろしくお願いいたします。では早速ですが、アニメ『魔術師クノンは見えている』のタイアップ曲である「ラケナリアの夢」についてお伺いできればと思います。楽曲を初めて聴いたときの第一印象はいかがでしたか?
ヰ世界情緒:
香椎モイミ1さんが楽曲を作ってくださったのですが、モイミさんらしい難解さと圧倒されるような迫力が同居したメロディーがすごく心に残りました。
でもそれだけじゃなくて、その中にある「気高さ」を感じられるような表現もいいなと。迫力があるけれど、美しさも一緒に感じられる。誇り高さを感じられるようなメロディーラインが個人的にすごくグッときましたね。
――お二人はこれまでも数多くの楽曲でタッグを組まれていますが、情緒さんから見ても、今回の曲は「モイミさんらしい」という印象だったわけですね。
ヰ世界情緒:
「モイミさんらしいな」という部分もありつつ、今まで感じたことのないモイミさんらしさもあった、という感覚です。
メロディーラインやバックで流れている音の複雑さ、壮大さはモイミさんらしいと思いつつ、ここまで迫力や力強さに振り切った表現は、今まで自分が歌ってきたモイミさんの楽曲の中にはあまりなくて。そういったところに挑戦させていただけるのはすごく嬉しいなと思いました。
――情緒さんは過去にゲームのタイアップ曲なども歌われていますが、今回のアニメのように「作品の主題歌」としてレコーディングする際に、普段とは意識を変えたり、こだわったりするポイントはありますか?
ヰ世界情緒:
原作あっての楽曲なので、原作が主題としていることや伝えたいこと、テーマにしているものと、自分が込める歌のテーマに一貫性を持たせることを意識しています。もちろん、すべてのテーマが完全に一致する必要はないと思いますが、芯の部分では一緒になるように意識して歌っています。
たとえば、今回の「ラケナリアの夢」では、クノンの意志の強さを表すような、力強さを込められるように挑みました。と同時に、先ほども触れたような気高さや美しさも感じたので、「夢を追う人の輝き」のようなエッセンスを声の端々に乗せることができたらいいな、と思って歌っています。

――楽曲の持つ世界観やテーマを歌で表現しつつ、そこに作品やキャラクターのエッセンスも乗せている、という感じでしょうか。他方で、楽曲に寄せられていたアーティストコメントの中の「心の篝火(かがりび)」という表現が印象的でした。これはどのような意味なのかお聞きしてしまっても……?
ヰ世界情緒です。
このたび、TVアニメ『魔術師クノンは見えている』の主題歌を歌わせていただくことになりました。
「ラケナリアの夢」は、誰しもが内側に抱えるような沸々とした静かな闘志、迷いながらでも突き動かされる、そんな強さを描いた楽曲です。
厳しい環境下や逆境の中でも、決して希望から目を背けることなく、成長を止めないクノンに寄り添うように歌いました。
聴いてくださる皆さんの心の篝火を守り続ける、そんな楽曲になったらいいなと思っています。
ぜひアニメと合わせて楽しんでいただけたら嬉しいです!
ヰ世界情緒:
ちょっと恥ずかしいですね(笑)。
「篝火」自体は、夜や暗闇を照らす小さな光のことを指しています。自分の心の内に希望や夢が浮かんだ時の感覚と、暗闇の中で静かに燃える篝火の空気感が、すごく似ているように感じることがよくありまして。
心の内にある暗闇の中に、小さな灯りがぽっと灯っている――。そんなイメージを「心の篝火」と表現していて、「心のありようを守り続けられますように」「光を絶やさずに持っていられますように」という想いを、歌にも込めたつもりです。
――「篝火」以外にも「光」や「灯火」という言葉をたびたび使われている印象がありますが、そこにはたとえば、「音楽を通して光を届けたい」というような気持ちがあったりするのでしょうか。
ヰ世界情緒:
実はちょっと違っていて、自分は「光を届けたい」と思ったことはそんなになくて。
自分の中にある希望や、追いかけている目標、遠くの対岸にある憧れへの視線のようなものを、ずっと守り続けたいし、抱き続けていたいし、追いかけ続けていたい。そう思うことのほうが多いです。
なので、それを歌に乗せるときに「光」の表現がよく出てくるのかなと。今言われて、自分でも気づきました。煌々とした光や太陽光ではなく、暗い空間に、灯台のようにぽつんとついている。そういう「灯り」のイメージかなと思っています。

「めちゃくちゃコミカルだ!?」と驚きも。クノンに見出した、表現者としての共通点
――今回の新曲はタイアップ曲ということで、『魔術師クノンは見えている』についてのお話もお聞きしたく思います。現在放送中のアニメのほかに原作小説やコミックも展開されていますが、率直な感想をお聞かせください。
ヰ世界情緒:
アニメはもちろん見ていて、小説も所持しております。タイアップのお話を聞いたときに作品を知って、漫画版も読みましたね。感想としては、「めちゃくちゃコミカルだ!?」というのが率直なところではあります(笑)。
物語としては「目が見えない」という前提から始まるので、最初はすごくシリアスな感じなのかなと受け取っていました。でもそれを吹き飛ばすぐらいに、クノン自身も、周りのキャラクターも底抜けに明るくて驚きました。
クノンは「目を作れるようになって外の世界を見たい」という夢を持つことになるのですが、それだけじゃなくて、周りを笑顔にできるような優しさや明るさも持っている。その様子や周囲とのやり取りは見ていておもしろいですし、なかなかいないタイプのキャラクターなんじゃないかなと思いました。

――自分も最初はシリアスな作品なのかと思っていたので驚きました。第1話の冒頭では、暗い雰囲気の中、目が見えないクノンの諦観が描かれていたので、そのままシリアスな展開になるのかと思いきや……。
ヰ世界情緒:
そのイメージはあっという間に払拭されてしまうので、おもしろいですよね(笑)。
でもそこに至るまでには、自分たちは想像するしかない苦悩の過程もあったと思うんです。「最初から明るかったわけではない」ということは作品の中でも提示されていたので、そこも含めて「いろいろなことを考えてきたキャラクターなんだろうな」と考えたりもしました。
――クノンの姿を見て、情緒さんご自身と重なる部分や、共感したポイントはありますか?
ヰ世界情緒:
共感した部分としては、「目が見えない中、魔術で世界を広げていく」というところでしょうか。
活動を通して、自分の内側にある世界や、自分だけに見えているものを、ちゃんとわかる形でみんなに届けたい。そう考えて、歌ったり、絵を描いたりしているので、そういった意味では繋がりみたいなものはあるのかもなと思います。
――たしかに、他人がどのような想いを胸に秘めているのかは周囲からわかりませんし、同じ景色やモノを視界に収めていても、そこで何を見るか、世界をどう見るかは十人十色。それに、クリエイターとしての創作活動も、魔術師としての研鑽も、「試行錯誤の積み重ね」という点では共通しているのかもしれませんね。
ヰ世界情緒:
そうですね。クノンみたいにありとあらゆるものを創造できるまでは自分は行けていないので……憧れでもありますかね(笑)。

――アニメは今まさに放送中ですが、印象に残っているシーンやエピソードはありますか?
ヰ世界情緒:
ハッとしたのは、クノンが水魔術を使えるようになって、それをどのように転用させていくのかを試行錯誤する場面です。そこで初めて、「魔術って、いろいろな“深さ”みたいなものがあるんだな」と思いました。
たとえば「水の魔術」と聞いたときに、自分は単に「水が出せる」くらいの想像しかしていなかったのですが、それは初歩に過ぎなくて。そこからどう転用していくかが魔術師としての腕の見せ所であり、「魔術」へのこだわりが伝わってくるシーンだったので、見ていてハッとさせられました。
あとは作中で、馬車を快適に走らせるために車輪に水を撒くシーンが出てくるのですが、めちゃくちゃ便利だなと思って。「そういったことに使えるなら、こういうこともできるんじゃないか!?」という考えが自分の中でもいろいろ浮かんで、創意工夫の幅広さに度肝を抜かれました。
すべてがファンタジーではない、ある種のリアリティをそこで感じたことで、この作品における「魔術」という概念の奥深さを感じました。グッときたのは、そういった魔術のシーンですね。

――そんなアニメのオープニングとして、ご自身の楽曲が流れた時の印象はいかがでしたか?
ヰ世界情緒:
自分の楽曲と、キャラクターたちの人生や背負っているものが結びついて、自分が想像できていなかったイメージまでたくさん乗ってきたような感覚があって、すごく感動しました。
「『魔術師クノンは見えている』といえば『ラケナリアの夢』」といった感じで、楽曲を聴いたときにクノンのことがふわっと浮かぶような存在であってほしいですし、逆に、アニメの傍にも「ラケナリアの夢」がずっと寄り添えるようであれたらすごく嬉しいです。
半年に1回見てホッとした気持ちになれる、思い入れが深いアニメ作品
――『クノン』は「小説家になろう」発の人気作としても知られていますが、情緒さんはいわゆる「なろう系」などのインターネット発の小説は読まれますか?
ヰ世界情緒:
自分からサイトで小説を掘って読むことはあまりないのですが、アニメ先行で知った作品を読みに行くことはあります。そのジャンルで言うと、『Re:ゼロから始める異世界生活』2ですかね。「この先が見たい!」とアニメの続きが気になっちゃって、読みに行ったことがあります。
――情緒さんといえば、ジャンルを問わずいろいろな作品に触れられている印象が個人的にあったのですが、最近注目されているコンテンツはありますか?
ヰ世界情緒:
え〜! いっぱいありすぎて……待ってくださいね!(笑)
そうですね……アニメだと、自分は昔好きだった作品を何回も見てしまうタイプなので、新しいものを追いかけつつも、定期的に戻ってくるアニメが大切な存在になっています。
それで言うと、『GUNSLINGER GIRL』3がすごく好きです。「『GUNSLINGER GIRL』を定期的に一気に見て、すごくホッとする」というのを半年に1回くらいのペースでやっています。
――予想外のタイトルが飛び出してびっくりしました! 「食らう」とか「刺さる」ではなく、「ホッとする」なのですね。
ヰ世界情緒:
すごくホッとしますね!
食らう瞬間もあるんですけど、最終的にはホッとしてしまう。
あの作品が持っている特殊な空気感に触れること、それ自体が好きなので。お話の中ではみんなひどい目に遭ったりもしていて、そこは悲しいなと思うのですが、作品の持っている存在感みたいなものがすごく好きです。
――最近のアニメだといかがでしょうか?
ヰ世界情緒:
『死亡遊戯で飯を食う。』4がすごくおもしろいなと思って見ています。初回が1時間放送だったのですが、尺がある分、アニメではあまり見ないような、挑戦的な表現をしていて。
たとえば、まるでそのシーンを覗き見しているような頭上からの視点で、画面の半分が壁で、半分がキャラクターを占めているカッコいい構図があったりして。「デスゲーム」という不穏なジャンルではあるのですが、その中にある美しさを切り取って見せようとしてくれているのが伝わってきておもしろかったです。
「めっっっちゃ興味あります!!」2年越しの片思い(?)、VR空間への挑戦に意欲

――そろそろいいお時間ですが、最後にもうひとつだけお聞きしてもよろしいでしょうか。弊サイトではVRの話題も取り扱っているのですが、VRに関して何か気になっているカルチャーや、注目しているコンテンツはありますか?
ヰ世界情緒:
めっっっちゃ興味あります!!
これはぜひ強調してお伝えしたいです(笑)。
「機材がなくてもできるよ」と言っていただくことは多いのですが、自分の活動形態のこともあって、なかなか踏み込みづらくて……二の足を踏んでいる状態ですね。
でも、いろいろなワールド5の情報はよく見ています。ゲームにも引けを取らない高クオリティなワールドとか、世界観で勝負しているワールドとか、いろいろな場所があって、すごく素敵だなと。あとはVR空間から配信している人もいて、そういう人の配信もたまに見ているんですよ。
自分は世界観のある歌や配信を届けていきたいと思っているので、VR空間から言葉を届けたり、ライブをやったりする機会があったら、とても素敵だなと思っていますね。
――そういえば、2年ほど前に「VRChat6をやりたい」と呟かれていましたよね。
VR chat というものがヤリタヒ
— ヰ世界情緒 (@isekaijoucho) January 21, 2024
ヰ世界情緒:
呟きましたね!
あれから2年間、足踏みしてしまいました(笑)。
でも機会があったら飛び込みたいですし、周りから言っていただくことも多いですね。「多分、情緒さんはすごく好きだと思うよ」って。
――VRの世界にいらっしゃる日を楽しみにしております! 最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
ヰ世界情緒:
V-meguriの記事をご覧のみなさん、最後まで読んでいただきありがとうございます。ヰ世界情緒と言います。
このたび、アニメ『魔術師クノンは見えている』のオープニングテーマ「ラケナリアの夢」を歌わせていただきました。アニメと合わせて楽しんでいただけたら嬉しいです。楽曲では、心の根っこにあるような無垢さだったり、芯のあるような気持ちだったり、それを歌に乗せて届けられるように歌いました。ぜひみなさんに聴いていただけたら嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
ヰ世界情緒でした。また会おうね!

自らの歌と創作で世界を表現する、バーチャルダークシンガー。
力強く儚い歌声で、 “ヰ世界情緒”というキャンバスの上に闇と光、新しい物語を紡ぐ。
シンガーとしてだけでなく、イラスト、ナレーション、声優など 様々な方面で自らの表現をおこない、作品を創り出す、唯一無二のクリエイター。
ヰ世界情緒 E.P.「幻視録」がリリース決定!
2026年1月放送のTVアニメ『魔術師クノンは見えている』『カヤちゃんはコワくない』のOP主題歌を収録した本作は、ふたつの物語を通じて“幻視”をテーマに新たな音楽世界を描くE.P.となっている。
「ラケナリアの夢」は、香椎モイミによるダークで力強いサウンドが印象的な1曲。
「まぼろしの行方」は、Airaが手がけた緩急あるオルタナロックで、ヰ世界情緒の新たな側面を引き出す楽曲に仕上がった。
アコースティックアレンジやキャストfeat.ver.を含む全6曲を収録。
TVアニメ『魔術師クノンは見えている』作品情報

- 放送情報:2026年1月よりTOKYO MX、BS朝日、WOWOWにて放送開始
- 配信情報:ABEMA / dアニメストア
- オープニング主題歌:ヰ世界情緒「ラケナリアの夢」
- 公式HP:https://kunonanime.jp/
- 公式X:https://x.com/animekunon
©南野海風・Laruha/KADOKAWA/「魔術師クノンは見えている」製作委員会
© KAMITSUBAKI STUDIO
※「小説家になろう」は株式会社ヒナプロジェクトの登録商標です。
- 2018年12月から活動するボカロP。2021年よりKAMITSUBAKI STUDIO所属。代表曲に「偏食」「キャットラビング」など。【関連リンク:X(@moi__moimi) / YouTube】 ↩︎
- 長月達平のライトノベル。略称は「リゼロ」。2012年に「小説家になろう」で連載がスタート。2016年にアニメ第1期が放送され、2026年には第4期が放送予定。【作品リンク:小説家になろう / Prime Video】 ↩︎
- 相田裕の漫画。全15巻。略称は「ガンスリ」。2003年にアニメ第1期が、2008年に第2期が放送された。【作品リンク:アニメ 第1期 / 第2期(Prime Video)】 ↩︎
- 鵜飼有志のライトノベル。2022年よりMF文庫Jで刊行。2026年1月からアニメが放送中。【作品リンク:Prime Video】 ↩︎
- VRChatなどのVR SNSでユーザーがアクセスし、おしゃべりをしたり、写真を撮ったり、ゲームを遊んだりして過ごす「世界(空間)」のこと。 ↩︎
- ソーシャルVRプラットフォーム。好みの3Dアバターの姿になり、バーチャル空間で世界中のユーザーと音声やチャットで交流できる。現在はVR機器だけでなく、PCやスマートフォンからも利用可能。 ↩︎
- https://x.com/uc_kamitsubaki/status/2017162316224282806 ↩︎
- https://v-puroland.sanrio.co.jp/contents/kamitsubaki ↩︎

