2020年にIRIAMで活動をスタートした個人勢VTuber、絵川えい(@egawa_ei)。イラストもLive2Dもすべて自分で準備するセルフ受肉VTuberとして、4年近くにわたり活動を楽しんできた。どこにでもいる1人の個人勢VTuberに見えて、彼女には1つの大きな実績がある。
それが、「個人勢VTuberとしてイベントを主催し、アパレルショップでの展示&トークイベントを少人数の力で実現した」ことだ。
個人で活動するVTuberにとってはハードルの高い印象もあるリアルイベントを、彼女はいかにして実現したのか。また、イベント開催に際してどのような準備を行い、当日はどのように進行したのか。外部からはうかがい知れない「イベントの舞台裏」を、1時間以上にも及ぶインタビューを通して聞いてみた。リアルイベントの開催を考えているVTuberは、ぜひ最後まで読んでみてほしい。
インタビュー・執筆・編集 / けいろー(@K16writer)
写真提供 / 絵川えい(@egawa_ei)
ROM専だったインターネットJKが始めた、初めてのインターネット活動
――本日はよろしくお願いいたします! まずは自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか。
絵川えい:
セルフ受肉の美術部員、絵川えいと申します。主にYouTubeでの雑談や歌配信、お絵描きをメインに活動しています。イラストやLive2Dモデルはすべて自作でやっています。
もともとはIRIAMで活動していて、2020年10月に初配信をしました。その1年後にLive2Dモデルを作って、YouTubeでの初配信は2021年11月ですね。そこからはYouTubeでの配信をメインに活動しています。
――IRIAM時代も含めるとかなり長く活動されているのですね。最初に「セルフ受肉」と仰っていましたが、イラストは昔から描いていらっしゃったんですか?
絵川えい:
そうですね。ただ、それまではインターネットで活動したことがほとんどなく、「二次創作イラストを描いて、ちょっとでも反応がもらえたら嬉しいなー」くらいの感覚でした。pixivやTwitterで投稿はしていたものの、フォロワーさんやファンの方とがっつり関わるような活動は今回が初めてです。今はネットにイラストを投稿すると反応がもらえるので、めちゃくちゃ嬉しいです(笑)。
なので私にとっては、VTuber活動が初めての本格的な「インターネット活動」だと感じています。それまでは基本、ROM専みたいな感じだったので。
――VTuber活動を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
絵川えい:
直接のきっかけはVTuberの鈴村たまちゃんですね。私のリアル友達なのですが、「絵川、絵も描けるし、絶対に向いてるから、VTuber始めたほうがいいよ!」って執拗に勧めてくれて(笑)。最初は「そんな……! 私にはできないよー!」と思ってたんですけど、あまりにも何度も勧めてくるので、それなら楽しそうだしやってみようかなと。
それが直接のきっかけですが、にじさんじをその頃からよく見るようになったのも理由の1つです。ちょうどコロナ禍のタイミングだったのですが、そこで月ノ美兎さんなどを見るようになって、「なんかVTuberっていいかもしれん……!」とも思っていました。
あとは当時、プライベートでうまくいかないことが続いていて、ちょっと塞ぎ込みがちだったことも理由としてあるかもしれません。「創作活動もそんなできてないし……」というタイミングで勧められて始めてみたら、「人生めちゃくちゃハッピー!」みたいな感じになったので(笑)。だから、いつも「VTuber活動に救われてるな」って思っています。
俺たちの心の拠り所、いにしえのインターネット
――今回のリアルイベントに関連した呟きを読んでいても、本当に心の底からVTuber活動を楽しまれていることが伝わってきます。早速ですが、絵川さんが今回開催されたイベントの概要をうかがってもよろしいでしょうか。
絵川えい:
はい! 6月1日に、名古屋にある「ののやまあき」というアパレルブランドのお店で、初めてのリアルイベントを開催しました。タイトルが……えっと……「ぼくたちの†懐古厨的世界-ノスタルジア-†」って言うんですけど(笑)。
イベント当日は、遊びに来てくれたお客さんとモニター越しにリアルタイムでお話をしたり、「いにしえのインターネット🌐」をテーマにしたグッズを売ったりしました。それと、これまでに描いた絵のラフ画や、VTuber活動の中で生まれた資料の展示も行いました。一言でまとめると、「店舗でのトーク+ミニ個展+グッズ販売」を一気に実施したイベントですね。
絵川えいちゃんリアルイベント終わりました‼️‼️大成功‼️全国各地からえいちゃんに会いに来てくれてありがとうございました😭みんなすごく優しくて楽しかった!!!やってよかった!!
— ののやまあき (@nononono_aki) June 1, 2024
みんな気をつけて帰ってね〜!!!! pic.twitter.com/84wClnkbyM
――個人がソロで開催したイベントながら、結構なボリュームがありますよね。会場がアパレルショップである点も独特ですが、どのような経緯で開催が決まったのでしょうか。
絵川えい:
私はVTuberなので普段はインターネットで活動しているのですが、配信を始めたばかりの頃からずっと、リスナーさんがオフラインで同じ場所に集まって盛り上がれる、リアルイベントに憧れをいだいていました。配信でも「リアルイベント、いつかやりたいなー」とか、ボソボソ話してはいたんですけど。
そんななか、今回のコラボ先である、ののやまあきちゃんのお店に遊びに行く機会が去年ありまして。あきちゃんとはお互いに創作活動を始める前からの友達で、お店を始めたことも知ってはいたのですが、名古屋まで遊びに行くのは初めてでした。
「すごい素敵なお店だねー!」なんて話していたのですが、ふと「もしかして……コラボイベントとかできる?」と思いつきまして。その場でパッと相談してみたら意外と乗り気で、「いいよー! お客さんが1人でも来れるなら開催できるから、やろう!」って言ってくれて。それが今回のイベント開催のきっかけです。
――イベントの内容を決めてから会場を探し始めたのではなく、ののやまあきさんとの繋がりが先にあって、「一緒に何かできたら楽しそうだよねー!」という話からスタートしたわけですね。
絵川えい:
そうですそうです! 「お客さんが1人でも来るなら開催できるよ!」って言ってくれたので、その後すぐにXのアンケート機能を使って、「もし名古屋でリアルイベントを開催するとしたら、どのくらいの人が来れますか?」とリスナーに聞いてみました。
そうしたら、思ったよりも「行くよー!」って言ってくれる人が多かったので。「じゃあやろう!」ってすぐに実施を決めて、時期や内容などの具体的な話し合いを始めていった感じですね。
【おしえて🔍】
— 絵川えい🎨🎀美術部員VTuber (@egawa_ei) October 16, 2023
もし名古屋でリアル店舗イベントを開催したら来られるオタクはどのくらいいますか?
企画内容としては、
・画面の中の絵川と直接お話しできる
・限定グッズの販売
・イラストや活動関連資料の展示
などを考えてます💭
(どのくらい実現できるかはこれから!)
――即断即決&即相談で、展開が早い! では、その具体的なイベントの内容はどのように詰めていったのでしょうか。最初に会場が決まっているわけですから、「そこで何ができるか」を考えていった感じ……?
絵川えい:
もともと「リスナーと直接お話をする」ことは絶対やりたいと思っていて、あとは「グッズもせっかくだから出したいよね」っていう話もしていましたね。
個展もずっとやりたいと思ってたので、昔の資料を実は以前からそのまま保管して取ってありました。普通は捨てちゃうようなラフとかも、「これ、展示するタイミングがあったら役立つかもしれん……!」って思って(笑)。
――しっかり残していらっしゃったのすごいですね! 物持ちが良い!
絵川えい:
2023年10月に名古屋であきに会った後すぐのタイミングで、イベントでやりたいことの案を私のほうでざっくり出していますね。その時点ですでに「店舗で遠隔接客する」「コラボグッズを先行販売する」「ののやまあきの服とコラボしたアクスタやアクキーを作りたい」「イラストや設定資料を展示する」といったアイデアが出ていたので、その時点ではどこまでできるか確証が持てない状況ではありましたが、「書いちゃえ!」と思って先述のアンケート文面に盛り込んでいます。
これは叶わなかった案ですが、「ののやまあきに服をデザインしてもらって、それをLive2Dモデルで着る」ということも考えていました。まず私がやりたいことをバーっと出して、その中から実現可能性の高いものを「これができそうだね」と2人で話し合いながら実現していった感じですね。
6月のリアルイベントに向けて作りたいグッズをひとまず洗い出しているわけですが1人でこんなにつくれるわけないだろ pic.twitter.com/G2Ig4pUhst
— 絵川えい🎨🎀6/1初リアルイベントありあと! (@egawa_ei) December 8, 2023
――ののやまさんのお店でやりたいこと、できそうなことを固めたうえで、イベント全体のテーマとして「いにしえのインターネット」を定めていったと。
絵川えい:
そんな感じです! その後はグッズのアイデアをどんどん膨らませていって……あとは、イベントのタイトルですね。
最初は「ぼくたちの †懐古厨-ノスタルジア-† コレクション」にしていて、「†懐古厨的世界†」じゃなくて「†懐古厨†」で「ノスタルジア」って読ませていました。ほかのタイトル案だと、「ぼくたちわたしたちのインターネットコレクション」とか「闇より舞い降りた漆黒の翼コレクション」とか……。それっぽいフレーズをいくつか出して、その中からブラッシュアップしていった感じですねww
――すると、テーマとしては当初から「インターネット」「懐古」「老人会」みたいなキーワードが前提としてあり、「インターネット……いいよな!」みたいな方向性だったわけですね?
絵川えい:
雰囲気や文化も含めて、いにしえのインターネットが私はすごく好きで、配信でもちょいちょい話に出していたので。それをテーマにしたらおもしろそうだし、私のリスナーさんたちにもそういうのが刺さる人が多そうだなと思っていました。
この「いにしえのインターネット」というテーマに合わせて、ポエムみたいなものを展示で作ったので送りますね。これをですね、壁に印刷して貼ったんですけど……これがなんか……そう……すごいポエムなんですけど……(照)。
「私の中の『いにしえのインターネット』ってどういう存在だろう?」って考えたときに、「昔のネットって楽しかったよね」という、痛々しい記憶が心の中にあったんです。たまにそれを開けてみると、「たしかにこういう時代あったなあ」と懐かしく思える。その気持ちがあれば、今の時代、今の世界線に戻っても、がんばっていける気がしているんですよね。
一言で言うと「心の拠り所」であり、「みんなで一緒に盛り上がることもできる、自分にとっての大切な記憶」のような存在でもあるなあと。そんなことを、いにしえのインターネットに対して感じていました。そうしたら、イベント当日にこのポエムを見たリスナーさんが、「今日のイベントも大事な記憶になった」って言ってくれて。
――あらすてき……!(小声)
絵川えい:
痛々しくて、ポエマーな感じになっちゃって、ちょっと恥ずかしくはあるのですが!(笑)
でも、そんな痛々しい記憶も、自分の心の大切なところにしまっておけば、今後もし悲しいことがあったとしても、「この時、楽しかったよな」って振り返って、また前を向くことができると思うんです。
みんなが口にする「いにしえのインターネット」だけじゃなくて、今回のイベントもまた、私たちにとっての「いにしえのインターネット」の一部として思い出になるんじゃないかなと。いつか振り返った時に「あのイベント、楽しかったなー」って懐かしんで、また「がんばろう!」って思ってもらえるような。もしかしたら、そんなイベントになれたのかもしれない。そう思うと、すごくいいなあと。
……って、アツく語ってしまってすみません!(笑)
――いやいやいや! すっっっごくわかります! 多分、「あの頃のインターネット」の話をするときに思い浮かぶカルチャーやサイト、サービスって、世代によって幅の広さが生まれつつあるはずなんです。でも、人によって思い浮かべるものが違うとしても、世代に関係なく、「いつかのインターネットを楽しんでいた痛々しさ」っていうものが、きっと共通してあるとも思うんですよね。
絵川えい:
ありますあります!
――当然、そこで黒歴史を量産してきた人もいるでしょうし、「慣れないネットコミュニケーションで変なことを言っちゃった」といった後悔もあるかもしれません。ただ、そういった経験も含めて、「でも初めて触れた『インターネット』の世界って楽しかったよね」「あの時の『インターネット』が今も地続きにあるよね」といった感覚を持っている人も、きっと多いんじゃないかなと。そんなことを絵川さんのお話を聞いて考えながらエモさを感じていたので……めちゃくちゃわかります!(早口)
絵川えい:
まさにそんな感じです! めっちゃ伝わっててよかったです……!
参加人数は?グッズはいくつ発注すればいい?イベントを円滑に進めるための「事前アンケート」
――ここからは、イベントの準備段階のお話をうかがえればと思います。FANBOXでも記録されていましたが、6月のイベント開催に向けて、どのような流れで準備を進められていたのか教えてください。
絵川えい:
まず最初に、キービジュアルを作りました。このキービジュアルにも「いにしえのインターネット」の要素を入れたいなと思って、自分であれこれ考えて作りました。それがこちらですね。
これは、例のイルカ(※)の「何について調べますか?」「お前を消す方法」が元ネタですね(笑)。ポップ体のフォントを入れたりして、Excel初心者っぽくしています。
キービジュアルが完成したら、2023年12月に「リアルイベントをやります!」という告知をYouTube配信で行いました。もともと「リアルイベントやるかも」という匂わせをXでしていたので、ずっと見てくれている人はわかってたと思うんですけど。みんな「え〜!? リアルイベントやるの!?」って新鮮な反応で驚いてくれましたね(笑)。
※例のイルカ:かつてMicrosoft Officeのヘルプ表示に登場していた、イルカの姿をしたサポート役のキャラクター。名前は「カイル」。画面内をアニメーションで移動することがあり、それが人によっては邪魔に感じられていたらしく、入力欄に「お前を消す方法」と書き込んでいる画像がミーム化した。
――配信では、イベントの内容についてどこまで告知をされたのでしょうか?
絵川えい:
「店頭のモニターでお話する」「グッズシリーズを発売する」「イラストの個展をやる」といったことを、この最初の告知で発表しました。そこからグッズの制作に入って、本格的にイベントの準備を始めた感じですね。
それと準備に関しては、3月にリスナーさんに回答してもらったアンケートの結果が、精神衛生上とても助けになりました。Googleフォームで「当日は現地参加する予定ですか? それとも通販を予定していますか?」「買おうと思っているグッズはどれですか?」といった項目のアンケートを作成して、参加人数やグッズの発注数の参考にしようと思いまして。
📝イベント参加者&グッズ部数調査アンケート📝
— 絵川えい🎨🎀6/1初リアルイベントありあと! (@egawa_ei) March 25, 2024
6/1のリアルイベント
「ぼくたちの†懐古厨的世界ーノスタルジアー†」へ
参加予定orグッズ購入予定の方!
準備とグッズ発注数の参考にしたいので、
アンケートへの回答をお願いします!
回答期限:3/31(日)23:59https://t.co/C75tTzE6bJ pic.twitter.com/sFm7sDBt2W
――なるほど! たしかに初めてのイベントだと見積もりなども想像がつきませんし、これはやっておいたほうが良さそうですね。事前準備とはまた別の、「事前調査」のような。
絵川えい:
そうなんです。pixivFACTORYで受注生産をしたことはあるのですが、今回のように個数を決めて、発注して、イベント会場で実際に販売して――という形で進めるのは初めてだったので。
「いくつ作ればいいのかわからん!」っていう状態だったので、このアンケートの結果を根拠にして、「これくらい作っておけば大丈夫そう!」と決めることができたのはよかったですね。ある程度は参加人数も把握できたことで、「これだけの人が来てくれるはずだから……!」と心の支えにできたのも大きかったです。
――事前の想定と実数の把握、めちゃくちゃ大事ですね……! イベント当日に向けての準備としては、やはりグッズ制作をメインに時間をかけて進められたのでしょうか。
絵川えい:
そうですね。「もともと進めていたLive2Dモデルのリニューアルを間に合わせたい」とか、「せっかくのアパレルコラボなので、Live2Dのすがたでも、ののやまあきの服を着たい」とか、いろいろ想像はしたんですけど、グッズが盛り盛りになってしまって(笑)。すべて撮り下ろし(描き下ろし)で新しく6個のグッズを作ったので、結果的にはすごく力を注いだ形になりました。
こちらがグッズの一覧なのですが、ほかにもBOOTHでTシャツを事前販売しています。Tシャツに関しては、当日の現地販売はサイズや在庫の問題で難しかったので。
――ソロ開催のイベントでグッズ6個は結構な数ですよね!?
絵川えい:
多分、一般的には「イベントのキービジュアルを1個か2個作って、それをもとにグッズをいくつか作ります」っていう感じだと思うんですけど。私の場合、すべてのグッズについてイラストを新しく描き下ろしたり、デザインをし直したりしたので。めちゃめちゃ大変でしたが、その分すごく力の入った、オリジナリティのある作品になったかなと思います。
愛とこだわりが詰まった「メル画」と「自演スレTシャツ」
――グッズそれぞれにこだわりがあるんじゃないかと思いますが、特にお気に入りのグッズはありますか?
絵川えい:
全部お気に入りではありますが……そうですね……「いにしえのメル画ラミカ」でしょうか。こだわりはこのイラストですね。2000年代の美少女ゲーム風の絵柄で描いたんです。
――あー! Key作品とかそのあたりのイメージでしょうか?
絵川えい:
ですね! 目が大きくて、口がちっちゃくて、触覚があって、エアインテークがあって……みたいな(笑)。私はこの時代の絵柄がすごく好きなので、「このテーマのイベントなら、全部あの時代に寄せて描ける!」と、自分の好きな絵柄で描けてめちゃくちゃ嬉しかったです。
あとはこの本文も……「メル画(※)」の文化ってご存知ですかね……?
※メル画:好きなキャラクターや芸能人から届いた「メール風の画像」のこと。二次創作の一種であり、作った画像を待ち受け画面にするなどして楽しんでいた。現在は「LINE風の画像」としてこの文化が受け継がれているらしい。
――ぞ、存じております!
絵川えい:
「絵川さんからメールが来た」という体で文章を書いているのですが、それがすごく痛々しくて(笑)。この文章を作るにあたって「地獄のメル画を作ろう」という配信を2月にしたのですが、それも楽しかったです。
配信でリスナーと一緒に、「メル画、どういう感じがいいかな?」「シチュエーションはどうする?」「付き合ってる? 付き合ってない?」といったことを話し合って、完成したのがこの文章です。「リスナーと一緒に作った文章」と、「私が好きな絵柄で好き放題描いたイラスト」が、悪魔合体して生まれたわけですね(笑)。
それと私、ラミネートカードにすごく憧れがあって! 初めて行った同人誌の即売イベントで、初めてラミネートカードが――『NARUTO』のカードだったんですけど――売っているのを見て、「こんなものがあるんだ!」と。そんな原体験が思い出として残っていたので、それを自分で作れたことにもちょっとした感動がありました。実際に印刷してみたら、パステルの色味がめちゃくちゃかわいい感じに仕上がっていたのも嬉しかったですね。
――それだけたくさんの「好き」や思い出が組み合わさって完成したグッズなら、思い入れもきっと大きいでしょうね。
絵川えい:
激重感情が混じり合っています(笑)。
――激重だし、激エモですよね! この文章のちょっとじわじわくる感じもたまりませんねえ……! 「暗黒微笑」とか「(照)」とか斜線の「////」とか(笑)。
絵川えい:
そうなんですよ! 「きっつーww」みたいな(笑)。ちなみに、この文章を使ったボイスも録ってショート動画にしているんですけど、めちゃくちゃ痛々しいのができたのでお気に入りです。
あ、これですね(送信)。
――ありがとうございます! あとで拝聴いたします!!
絵川えい:
あ! 聞かなくて!! 聞かなくて大丈夫です!!!(笑)
――改めて一覧を眺めていて思ったのですが、グッズのバリエーションが本当に豊富ですよね。VTuberのリアルイベントのグッズと言えば、イベント用に新しく準備したキービジュアルを使ったアクリルスタンドやファイルが鉄板かと思いますが、今回の絵川さんのイベントはラインナップが充実しているなと。これを半年間で準備したわけですよね……?
絵川えい:
いやあ、やりきりましたね! 学校に通いながらなので大変だった部分もあるんですけど、どうにかこうにかがんばってできました。
あとは先ほどもちょっとお話ししましたが、「自演スレ」をプリントしたTシャツもお気に入りですね。
――あー! 見ました見ました! このスレッドの感じ、たまりませんよね!(笑) この手のスレの「あるある」が、良い感じに存分に詰め込まれていて。
絵川えい:
そうなんですよ!! めちゃくちゃがんばって詰め込みました!
一番最初に作っていた頃は現代っぽい表現も混じっちゃっていて、「【悲報】関東民ワイ、低みの見物」みたいなフレーズも入れていたのですが(笑)。途中でふと「これは2010年代に出てきた表現な気がするなぁ」と思いまして。
――たしかに、なんJあたりで出てきたイメージがあります。
絵川えい:
ですよね? それよりもちょっと前の時期が良いかなと思って、「凸しようずwww」とか「⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン」とかに変えました。そういった細かいこだわりが結構あります。
このスレの設定としては、「リアルイベントを開催した絵川が、イベントの始まる13時になっても人がまったく来ないから、慌ててこの『個人VTuberについて語るスレ』に自演コメントをして、複数の端末を駆使することでいろんな人が興味を持っているように見せかけているが、すべて自分1人で書き込んでいる」という感じで作ってます(笑)。
――あ、ほんとだ! 同じIDがある! すっごく細部までこだわってますね!?
絵川えい:
こだわってるんですよ〜! 伝わるか怪しい部分もあるかと思いますが(笑)。
――わかる人はニコニコニヤニヤしながら見ちゃうやつですね。これは最高すぎる。
絵川えい:
嬉しい……! そうやって共感してくれる人がいることがすごく嬉しいなあ、っていつも思ってます。
リスナーに向けて進捗報告をしながら制作を進めるメリット
――今の「グッズ作りが大変だった」というお話と重なるかもしれませんが、個人勢としてリアルイベントを開催するにあたって、ほかに何か大変だったことや、乗り越えるべきハードルのようなものはありましたか?
絵川えい:
まず普段から思っていることとして、「締め切りを決めるのが一番大事」というのがあります。「この日までにやります!」って計画を立ててやりきることが大切だと、イベントに限らずいつも思っているので。
なので、「一番最初にイベントの日程を宣言してしまって、それから実際にどうするかをみんなと一緒に決めていく」という今回のやり方は、私には向いていたのかなと。「これでいきます!」というのをまず決めて、リスナーさんに都度相談をしながら「進捗こうです!」とXで逐一報告し、「すごく進んだね!」と褒めてもらうことで、それを原動力にがんばっていました。
ずっと1人で作業をしていると、進んでいるのかどうかもわからなくなって、「土日を潰して朝からカフェで作業してたはずなのに、ラフが終わらなかった……」みたいなことが結構あるんですよね。でもそんな時でも、「不完全でも良いからリスナーさんに見せる」ことを意識していました。
すごく拙い、本当は見せたくないようなレベルのラフでも、「過程も含めて楽しんでもらえたらいいな」と考えて、出せるものは出してしまう。すると、リスナーさんが「めっちゃ進んだじゃん!」「楽しみー!」ってリプをくれるので、「え! そう言ってもらえるなら、意外と進んでるかも!」と思って、がんばることができました。
たとえば、この「インターネットやめろ」ステッカー。本当はFANBOXで進捗を記録したかったのですが、そんな余裕もなかったので、Xでツリーにつなげる形で「進捗こうです」と途中経過を報告していました。でも、報告するたびに「すごいね!」「がんばれ!」とリスナーさんが応援してくれたので、「がんばろう!」と自分を奮い立たせて、なんとか完成までこぎつけた感じですね。
6/1の初リアルイベントで出す予定の
— 絵川えい🎨🎀6/1初リアルイベントありあと! (@egawa_ei) March 14, 2024
インターネットやめろステッカーのラフができました pic.twitter.com/nIAog5p6Zv
――進捗を報告することで、リスナーさんからモチベーションをもらいながら準備を進められたわけですね。先ほどのラミネートカードのお話もそうですが、いろいろな部分で「リスナーさんと一緒に作り上げたイベント」であることが伝わってきます。
絵川えい:
たしかにそうかもしれません。去年、私の誕生日に合わせてオリジナルソングを作ったのですが、作詞もMV用のイラストもすべて自分で考えて準備をしたので、制作がすごく大変だったんです。
でもその時は、「みんなをびっくりさせたいから、完成するまで秘密にしよう」と思って、あんまり進捗を出さずにやってしまったんですよね。結果、そのあいだは配信もしないし何をやっているのかもわからない、「インターネットに浮上しない人」みたいになっちゃって(笑)。なので、公開したあとに、「少しでも作業の過程をみんなに報告していたら、一緒に作っているように感じられて、みんなにその過程も含めて楽しんでもらえたのかな」って思ったんです。
完成していないものを出すのは恥ずかしいとも思っていたのですが、「その過程も含めて楽しみたい!」って言ってくれる人がいたから、今回は「ここまで進みました!」とか、「こういう予定でやろうと思ってるけど、まだわからんです」といった情報も積極的に出していきたいなと。そう考えて準備を進めていました。
――自分が力を注いだ作品を見せるなら、完成したものを見て驚いてほしいし、楽しんでもらいたい。でもその一方で、途中経過を見せることで演出できる手作り感があり、過程そのものも楽しんでもらえるかもしれない。「見せるとしても、どこまで見せるべきか」という問題もあって、なかなかに悩みどころですよね……。
絵川えい:
そう! そうなんですよね! 「え!? こんなことやってたの!?」ってびっくりさせたい気持ちもやっぱりあるので。だけど、学校に通いながら個人で活動しているので、リソースが限られているなかでそれをやってしまうと、インターネット上に存在しない期間が生まれちゃうんですよね(笑)。
なので、「作品が完成するまでの過程もコンテンツとして楽しんでもらう」のは、兼業していたり学校に通っていたりする個人勢VTuberにとっては、悪くないやり方の1つであるように思います。
――逆に、「過程を見せられる」ことは個人勢の強みと言えるかもしれませんね。大きな企業に所属していたり、たくさんのクリエイターが関わっていたりするようなプロジェクトほど、未完成のものを世に出す判断をするのは難しいように思うので。
個人勢VTuberのリアルイベント開催には「協力者」が不可欠?
絵川えい:
少し話がそれるのですが、場所を貸してくれる人がたまたま身近にいたことも、今回のイベント開催に際して無視できないポイントだったように思います。それも場所を貸してもらうだけじゃなくて、機材の調整や当日の対応までしてもらえたので。
ののやまあきちゃんには展示の方法や必要なものを都度相談していたのですが、彼女自身もデザフェスなどの経験があり、「こういうふうにしたらいいよー」と適切な答えをくれるので助かりました。あきちゃんという協力者の存在があったからこそ実現したイベントだったと思っていて、背中を押してもらえた感覚があります。
イラストもモデリングも動画も配信も全部1人でやっていたセルフ受肉VTuberの私が、ほかの人の力を借りながらイベントを開催できた。それは、すごく大事なことだと思っています。今回ばかりは、自分1人だったら絶対にできなかったので。だから大切なのは、一緒に手伝ってくれる協力者や、相談に乗ってくれる人を見つけること。そうすれば、イベント開催のハードルも下がるんじゃないかなと思います。
えいちゃんと長い付き合いで、服を作り始めたころ、こういうことをやりたいとかお互いいろんな夢を話して、上手くいかないこともいろんなことあったんだけど、Vtuberとアパレルブランドとしてコラボできてたくさんのお客さんにきてもらえてさいこうのイベントできる未来があるとは…❣️😭良かった… pic.twitter.com/uNAm6C2krb
— ののやまあき (@nononono_aki) June 1, 2024
――個人勢の場合、当日の設営なども自分でやるケースが多そうですものね。さらにイベント中は遠隔での交流になるので、受付やお客さんの対応は誰かにお願いする必要があり、1人ではなかなか成り立たせるのは難しそうな……。
絵川えい:
VTuberのリアルイベントに関しては、現地対応を担当するスタッフさんは絶対に必要になると思います。お客さんとコミュニケーションをするときも、モニター越しだと、見えるのがカメラの視野の範囲だけになってしまうので。今回はののやまあきちゃんがお店に立って、お客さんを誘導したり、うまく話を振ってくれたりしたので、本当に助かりました。
そういえば、ののやまあきちゃんの提案で名札を作ってもらったのですが、それがすごく良くて! リスナーさんに大きな紙を渡して、名前を書いてもらって、首からかけるようにお願いしたんです。
リスナーさんって、インターネット上では名前とアイコンを見ればすぐにわかるんですけど、「リアルのアバターでのお姿は初めて見ることになるので、誰が誰だかわからない状況になっちゃうかも」と心配してたんですよね(笑)。でも、ののやまあきちゃんが名札を首から下げるように提案してくれたことで、コミュニケーションが円滑にまわりました。
――名札システム! いいですねー! もし参加者が事前にわかっているイベントなら、アイコンと名前が印刷された名札を準備しておいても良さそう! いずれにせよ、設営の手伝いに、イベント当日の会場受付、場合によっては機材トラブルにも対応してくれる協力者の存在なくしては、個人でのイベント開催は難しいと。
絵川えい:
ほかにも、お会計はそのお店のスタッフさんがやってくれたり、展示周辺で剥がれてしまったマスキングテープを修復してくれたり、現場の細かいイレギュラーにも適切に対応してくださって、感謝しかありません。どれもこれもVTuberである私1人ではできなかったことなので、協力してくれる人の存在は不可欠だと思います。
「平成」の展示と、同じTシャツを着て集うオタクを見て、すごい一体感を感じた
――リスナー目線では意識する機会の少ない「準備」のお話、とても参考になります。ここからは実際のイベントの様子についてうかがえればと思うのですが、まず最初に、イベントを終えた今、どのような感想をお持ちですか?
絵川えい:
まずは「無事に終わったアアアアア!!!!」という感じで、めちゃくちゃホッとしています(笑)。
ここまでのお話でもありましたが、グッズの入稿や展示の準備、機材の調整など、本当にやることがたくさんあったので。イベントの開催日が迫るなか、リスナーさんが「有給取ったよー!」「新幹線取ったよー!」「ホテル取ったよー!」と伝えてくれるのが嬉しくもありつつ、「絶対にやり遂げなければ……!」というプレッシャーもありました。
「もし機材がうまく使えなかったら」「グッズの入稿が間に合わなかったら」といろいろ考えて不安になることもあり、火がついている状態の爆弾を半年間ずっと持ち続けているような感覚でした。イベントが終わったことで、「爆弾を投げて、爆発して、終わり!」みたいな感じで、「解放された!」という気持ちが正直なところ大きいです。
イベント当日は、オタクが――私はリスナーのことを「オタク」っていつも呼んでいるのですが――わざわざ私に会いに来てくれたことや、今まではテキストでのやり取りだった相手と直接お話できたこと、グッズを買ってくれたり、いろいろ展示を見てくれたりしたこと、その全部が本当に嬉しくて、楽しくて、非日常のような、夢みたいな1日だったなあ……と思っています。
そうそう、嬉しかったことといえば、飛行機に乗って来てくれた人がいたんですよ! 北は東北、南は九州から、飛行機や新幹線に乗って、ホテルを取ってまで来てくれた人がたくさんいたことがすごく嬉しかったですね……! 「こんな私でも、誰かの1日を変える力があるんだ!」って(笑)。
絵川えいちゃんリアルイベント開催中‼️#絵川えいリアルイベント pic.twitter.com/P8Q32DQ7LJ
— ののやまあき (@nononono_aki) June 1, 2024
――当日はイベントのハッシュタグを見ていたのですが、本当に楽しい空間だったことが伝わる投稿ばかりで、ニコニコしながら読んでいました。リスナーさんとはどのようなやり取りをされたんですか?
絵川えい:
他愛もないやり取りをしましたね。本当にいつもの雑談配信そのままというか、「雑談配信をリアルでやった」みたいな感じでした。1on1のトークではなく、私を中心にして、その周りに集まったリスナーさんたちとみんなで一緒に雑談するスタイルだったので。
基本的には他愛もない話をしたのですが……あ、でも「話題デッキ」は作っていきました。「きっとみんなはコミュ障だから、話題デッキを用意しておいたほうがいいよね!」って事前に配信で話をしていて(笑)。私が紙にいろいろなトークテーマを書いて、それを引いてもらって、話す――という。「どこから来たの?」「絵川といつ、何をきっかけに出会ったの?」とか聞いたり、せっかくの機会なので「絵川の好きなところを1人ずつ順番に言ってください!」みたいなことを直接話してもらったりしてましたね(笑)。
――周りにリスナー仲間がいて恥ずかしいけど、絶対に楽しいやつだ!(笑)
絵川えい:
本当に「VTuberのリアイベ」って感じですよね! 話のネタが尽きたら、私から「天気、いいですねえ……?」って振ってみたり(笑)。
――天気デッキだ!!! VTuberにとっては「日常」である雑談配信のような雰囲気もありつつ、でも「非日常」としてのイベントの緊張感と高揚感もあり、それでいてオフ会のような楽しげな空気も漂う――そんな光景が浮かびます。展示やグッズに対するリスナーさんの反応はいかがでしたか?
絵川えい:
グッズに関しては、何を販売するのかみんなすでに知ってくれていたので、「これが現物かぁ……!」みたいな感じでしたね。一方で展示は、「ぼくたちの†懐古厨的世界-ノスタルジア-†」というイベントのタイトルにあわせて、「平成」を彷彿とさせるグッズをちょいちょいと置いていて……多分、どこかに写真が……。
――あ、ちょうど気になって写真を拝見していました。ゲームボーイアドバンスとかMDとかありますね!?
絵川えい:
そうですそうです! まさにそのあたりに反応してくれた方が当日もいました(笑)。この写真に写っているのがグッズと展示のスペースで、あとは壁にもラフ画や資料を展示しています。
それと、去年のオリジナルソングの構想を書いたメモも展示していたのですが、それを見て「感動して泣きそうになった」って言ってくれた方がいたんです。「伝わってたんだな」とわかって嬉しかったですね。
――リスナーは普段、配信のコメントやSNSでVTuberに感想を伝えられますが、基本的にはテキストでのやり取りになりますものね。逆にVTuber側からしても、リスナーの生の反応を見られる機会ってそうそうないでしょうし……やっぱり、実際に声と表情で感想を伝えてもらえると嬉しいですか?
絵川えい:
すごく嬉しかったです! 「みんな、こんな顔をして私と話してるのかー」って(笑)。
それと当日、グッズとして作っていたTシャツを着てお店まで来てくれたリスナーさんが多かったのも嬉しくて! わかるんですよね、遠くからでも。水色で、“自演”の文面が書かれている、美少女アニメみたいなTシャツを着てお店に入ってくる人がいると、「オタクだーーー!!」ってなるので(笑)。
多分、リスナーさん同士も、お互いに「ネットで名前は見るけど実際に話したことはない」という人がほとんどだったと思うんです。でも、そういう人たちが同じ服を着て、同じ絵川に会いに来てくれて、同じ空間で話していたので、なんというか……一体感……?
――「すごい一体感を感じる」ってやつですね?ww
絵川えい:
そうそうwww クラスTシャツをみんなで着ているような一体感が会場にあって、それもリアリベだからこそ得られる実感と嬉しさだったように思います。
――「クラスTシャツ」って表現、いいですねー!
絵川えい:
「こういうことだったんだ!」ってなりました(笑)。というのも、学生時代の私はいわゆる“陰の者”で、あんまりそういう学校行事は楽しめなかったので。「同じシャツを着て感じる一体感って、こういうことだったんだ……!」と。
――イベント用に描き下ろしたビジュアルをプリントするだけではなく、絵川さんご自身がスレの書き込みも考えて形にしたものだからこそ、その「手作り感」がクラスTシャツのように感じられたのかもしれませんね。
絵川えい:
クラTの話とも関連して、私は今回のイベントが「文化祭みたいだったなあ」とも思っていて。中学生までの私は学校でもそんなに目立たないタイプで、文化祭などの行事をめちゃくちゃエンジョイしていたわけではなく、いつもクラスの端っこや保健室にいるような“陰の者”だったんです。
だからなんというか、「日陰者だった私が、インターネットで文化祭してる……!」「俺が主人公だ!」みたいな感じがすごく嬉しくて。協力してくれる人たちと一緒に、一生懸命に物を作って、イベント当日はリスナーさんが来てくれて、みんなで同じ服を着て盛り上がる。イベントが終わったあとは「よかったね!」って言って、写真をみんなでXに投稿して――という一連の流れの「文化祭感」がヤバくて……すごい……よかったなぁ……!
「学校でできなかったことを私、今できてる!!」みたいな(笑)。いわゆる「陽キャ」と呼ばれるようなみなさんがやっていたことを自分もできているような感覚があって嬉しかったです。
――ある意味では「青春のやり直し」というか、VTuberとして活動を始めたからこそ実現したことでもありますよね。……あ! もちろん今もインターネットJKでいらっしゃいますけどね!
絵川えい:
あっ! そう! JKなんですけどね! そうですね! 学校では、あの、静かにしてるので! 「学校ではできないことをインターネットでやっている」っていう感じですね(笑)。
――「インターネットを通してみんなと文化祭ができる」って、言葉にしてみると最高すぎますね……!
絵川えい:
最高でした……文化祭……してました……(しみじみ)。
イベント前の予習としてだけでなく、コラボ先の想いも伝えることができた対談配信
――そういえば「VTuberのリアルイベントの会場がアパレルショップ」というのも結構珍しい気がするのですが、その会場や空間だからこそ生まれたエピソードはありますか?
絵川えい:
それで1つ思い出したのですが、今回のイベントでは展示やモニターを設置するスペースをお借りしつつ、通常営業で販売しているお洋服やアクセサリーも試着したり購入したりできる形になっていまして。
イベント当日にお店に来てくれたお客さんはほとんどが私のリスナーさんだったので、お洋服に関しては「試着してくれたらいいなー」くらいに考えていました。ですが、思いのほか興味を持ってくださった方もいて、実際、絵川が着ているキービジュアルの服の色違いを買ってくださった人もいたんです。
ほかにも、リスナーさんがお洋服を買うときに、「これとこれとこれで悩んでるんですよねー」「絵川はどの服が似合うと思う?」って聞いてくれたので、「じゃあもう1回、全部着てみようか!」って言って、その場で改めて一着ずつ試着して見せてもらった、なんてこともありました。「この服はここが良いけど、こっちの服はここが良いんだよね……」「そっちの服は……うーん……シルエットが良いよね!」みたいな話をしたのですが……これって、一緒に買い物をしているみたいじゃないですか?
VTuberの私とリスナーが、「どの服がいいと思う?」「これはここがカッコいいよね」なんて話しながら、一緒に買い物を楽しむ。まさかそんなことになるとは思っていなかったので、なんだかすごく貴重な体験ができたように思います。
――それはリスナーさんにとってもめちゃくちゃ最高な体験だったのではないでしょうか! アパレルブランドとVTuberのコラボレーションはたびたび聞きますし、実際に店舗でバーチャル接客をした例もあったかと思います。ただ、その場で実際に試着しながら「推しに服を選んでもらう」ような体験はあまり聞いたことない気もするので……いや、本当に最高ですね!?
絵川えい:
たしかに、私がオタク側だったらめちゃ嬉しいし、その服もルンルンしながら着れるように思います。
――これはちょっと偏見かもしれませんが、いわゆる旧来の「オタク」的な層のなかには、自分1人で服を買いに行って選ぶのが苦手な方も少なからずいらっしゃると思うんです。……というか、僕がそうなのですが(笑)。
絵川えい:
私もそうです! 店員さんに話しかけられたら「ジュワァ!」って言って消えちゃうので(笑)。
――そうそう! 「アッ…スミマセン…ミテルダケデス…」って言って、スススーって(笑)。でも推しに見てもらえるなら、「それならいろいろ試してみちゃおっかな〜!」って気持ちになる人もいるんじゃないかなと。絵川さんのイベントでは実際に購入まで至っている方もいらっしゃるので、お店にとってもきっとありがたかったのではないでしょうか。
絵川えい:
そうなんですよ! 実はイベントの準備でいろいろ相談に乗ってもらいながら、「ののやまあきちゃんのお洋服の魅力を伝えるお手伝いが、私からもできたらいいな」とずっと考えていました。彼女がお洋服に対してすごく真剣な想いを持っていて、一着一着を大切に作っていることを私は知っているので、それを私のリスナーさんにも伝えたいなと。
それがちゃんと私のリスナーさんにも伝わって、実際に買ってくれる人までいたのは、本当に嬉しく感じています。ののやまあきちゃんの力になれた――というか、「全員が幸せになった」ような感じがあってすごくよかったですね。
――三方よし、もといWin-Win-Winですよね。
絵川えい:
それともう一点、イベントに関連して言えば、ののやまあきちゃんとの対談配信を、開催日の1週間前にしています。マシュマロで募集した質問に答えていく形で、「ファッションデザイナー」というお仕事について掘り下げて聞いてみた配信だったのですが、これもやってすごくよかったなと思っています。
というのも、アパレルブランドとオタクって、相性がめちゃくちゃ悪いと思うんです(笑)。それこそ、先ほどの「店員さん怖い……!」「服を買いに行く服がない……」というお話ともつながるんじゃないかなと。でも、彼女はそういう不安や問題を払拭したくてお洋服を作っている人なので、その想いを事前に伝えておきたかったんです。
事前に、リラックスした状態で、VTuberリスナーにとっては障壁がない「配信」という場所で、ののやまあきちゃんのことを知ってもらえたらいいなと。実際、「こういう想いで作っているから、店員さんは怖くないよー」という話もしてくれましたし、配信を通して人となりを事前に知ってもらうことで、リスナーさんも彼女と気兼ねなく話せた部分も若干はあると思うんです。「『はじめまして』の怖いお姉さんがいる……!」じゃなくて、「配信で話していた人だ!」みたいな。
「こういう想いで服を作っている人だから、別に買わせるために試着させているわけじゃないんだ」ということがわかった状態でイベント当日を迎えられたので、リスナーさんもすんなり接客を受けられたんじゃないかなと。
――リアルイベント前にある種の「予習」ができるので、イベント自体の参加ハードルも下がりそうですね。
絵川えい:
そうですそうです。予習してもらって、「怖くないから……オタク〜? ちゃんと来てねー!」って(笑)。
くぅ~疲れましたwこれにて終了です!
――会場がアパレルショップだからこそ生まれた素敵なエピソードに、あまり意識したことのなかった「予習」という観点での準備のことなど、示唆に富んだお話をありがとうございます! もし次にまたイベントを開催するとしたら、今回を踏まえてどのような内容でやりたいですか?
絵川えい:
配信を始めた当初から考えていたことではあるのですが、3Dの姿でリアルライブイベントをやりたいです。VTuberの多くが考えることかなとも思うんですけど(笑)。私はまだ3Dの姿がないので、その体を自分で作るところから始めようかなと。
――3Dも自分で作っちゃうんですね!?
絵川えい:
実際はちょっとどうなるかわかりませんが、自分で作りたいなとは思っています。みんなでノリやすくコールも入れやすい、“それっぽい”オリジナル曲も作っているので、リアルのライブで歌いたいですね。ダンスもやってみたいなー。
――ちなみに、ライブ以外で何か構想などはありますか? たとえばですけど、今回のイベントの拡大版のようなイメージで、「いにしえのインターネット」が大好きなVTuberを何人か集めて、共同で展示&トークイベントを開催するとか。
絵川えい:
あ〜! いいですね! 「ぼくたちの†懐古厨的世界-ノスタルジア-† 〜Returns〜」みたいな(笑)。私は今までソロプレイばかりだったので、「他の人と協力してやるのって……できるのかな……!?」って感じではあるんですけど……!
でも、今回も「こういうことがやりたいんです!」言ってみたら、意外とみんな協力してくれましたし――それこそ、けいろーさんとかもそうなんですけど――「いいですよ!」って乗っかってくれた人が多かったのが、すごく嬉しくて。基本はソロですが、「自分から声をかけてみるのも意外とありなのかもしれん」って今はちょっと思っています。
――もし何かご協力できそうなことなどありましたら、インターネット老人会に片足を踏み入れている1人として、喜んでお手伝いさせていただきますので……よろしくお願いします(ニチャァ
絵川えい:
アッ…!! よろしくお願いします><
――では最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします!
絵川えい:
イベントに参加してくれたオタクも、参加はできなかったけど応援してくれたオタクも、本当にありがとうございました!!! 活動当初からずっとやりたいと言っていたリアルイベントを実現できたのは、あなたたちがいつも一緒にいてくれたからです。
これからも一緒にインターネットを楽しんでいきましょう〜! えいえいおー!!!
いにしえのインターネットJKにして、セルフ受肉の美術部員VTuber。個人勢。
2020年にIRIAMで活動をスタートし、2021年からはYouTubeでの雑談・お絵描き・歌ってみたなどの配信を中心に活動中。2023年8月に初のオリジナルソングを公開し、2024年6月にはリアルイベント兼個展を名古屋で開催。