モデリング代やデザイン費、アプリのサブスク代に広告費など、何かとお金のかかるVTuber活動。しかしいざ稼げるようになると、今度は別の問題が顔を覗かせるようになります。
それが、毎年1〜3月にかけての時期に、VTuberだけでなく大勢のクリエイターが向き合うことになる4文字――そう、「確定申告」です。よく見る単語ではあるものの、「青色とか白色とか聞いたことはあるけど、ぶっちゃけよくわからん!」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、VTuber向けに確定申告のやり方をご紹介。本記事では特に「副業VTuber」を対象として、 白色申告 の基礎知識と手順を説明します。平日は働きながらVTuber活動をしていて、ある程度の収益が得られるようになった――そんなVTuberさんの参考になれば幸いです。
本記事の内容は、白色申告と青色申告の経験がある筆者(個人事業主)の目線でまとめたものであり、厳密な会計知識に基づくものではありません。なるべく根拠となるソースを記載するようにはしていますが、国税庁のサイトや税理士による解説記事なども参照しつつ読んでいただくようお願いいたします。
【副業VTuber向け】確定申告ざっくり一問一答
- 収入があるVTuberは全員、確定申告をする必要があるの?
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所得(売上から経費を引いた額)が20万円を超えていなければ、確定申告は不要!
- 「青色申告」とか「白色申告」って聞くけど、どっちを選べば?
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青色申告をするには開業届が必要なので、大半の人が 白色申告 になるかと!
- 平日は仕事で忙しいんだけど、税務署に行かないとダメ?
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インターネットでも申告が可能です。ただし手順が複雑なので、初めての確定申告は税務署に行っての提出を推奨します。もし難しければ郵送で!
- 確定申告の期間は?
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毎年2月16日から3月15日のあいだに行いましょう。
ポイント①「所得が20万円を超えたら、確定申告が必要!」
まず大前提として、「副業」としてのVTuber活動で発生した所得が20万円未満の場合は、確定申告をする必要はありません1。
「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた額のこと。YouTubeのメンバーシップやスーパーチャット、FANBOXなどで20万円以上の収益が発生していたとしても、活動のために使った経費の支出を差し引いた額が20万円未満になる場合は、確定申告は不要です。たとえば、以下のようなケースですね。
収入 | YouTube | ¥100,000 |
---|---|---|
FANBOX | ¥50,000 | |
グッズ販売 | ¥50,000 | |
企業案件 | ¥50,000 | |
計 | ¥250,000 | |
支出 | 機材購入 | ¥30,000 |
イラスト依頼 | ¥30,000 | |
計 | ¥60,000 | |
所得(収入-経費) | ¥190,000 |
こちらは極端な例ではありますが、活動で得た「収入」が合計25万円であるのに対して、機材の購入とイラストの依頼で支払った6万円を「経費」として支出しています。25万円から6万円を差し引いた19万円が「所得」となり、20万円を下回るため、確定申告はしなくてOKです。
VTuber活動とは別の本業がある人は、この「20万円」が基準となります。もちろん、実際は上記の例のようなわかりやすい計算にはならず、複数の収入源と活動経費を整理して所得を算出することになるはず。まずは全体の収入をざっと計算して、20万円を超えるようであれば経費も洗い出してみましょう。
1年間で発生した所得(収入−経費)が20万円以下の場合、確定申告は不要!
ポイント②「開業届を出していない人は、白色申告をしよう」
確定申告には 青色申告 と 白色申告 の2種類があります。SNSを見ていてなんとなく、「白色のほうが簡単だけど、青色にすればおトク」というイメージを持っている人もいるかもしれません。
その認識も間違いではありませんが、以前は免除されていた記帳作業が義務化された2ことで「白色を選ぶメリットはあまりない」との声もあります。本記事では詳しい説明はしませんが、税制上の優遇措置の有無も大きいため、「青色を選ばないと損」と指摘する税理士さんもいるようです。
ただし、青色申告には事前の手続きが不可欠。今後を考えれば青色申告を選びたいところですが、事前に準備をしていなかった人は必然的に 白色申告 を行うことになります。今回は白色申告で書類を作成しつつ、その作業の過程で「青色申告がどのようなものか」も学んでおくと良いでしょう。青色申告に関しては後述します。
初めての確定申告は「白色申告」で。来年は「青色申告」も検討しよう!
ポイント③「確定申告はインターネットでもできる!ただし…」
毎年2〜3月の時期には「確定申告のために税務署に行くの、めんどいわー」と呟く声がSNSでも散見されますが、必ずしも税務署に行く必要はありません。確定申告書は郵送での提出にも対応しており、現在はインターネットでの電子申告も可能です3。
ただし、電子申告の手順は少々複雑。
専用のアプリと、申告のための番号、マイナンバーカードが必要になるほか、カードを受け取る際に設定したパスワードも欠かせません。中でも曲者なのが、このパスワード。間違えるとマイナンバーカードにロックがかかり、市役所の窓口に行って解除しなければならなくなります。
手順を調べるのが手間でなければ電子申告を利用するのもありですが、確定申告自体が初めての人は、「どこか間違えてないかな……」という不安もあるのではないでしょうか。窓口でなら書類に不備がないかを確認してもらえますので、1年目は税務署での提出をおすすめします。わからないことがあれば、その際に遠慮せず質問しましょう。
税務署に行かずに、自宅からの電子申告も可能! ただし手順が複雑なので、初めての確定申告は税務署に行って提出するのがおすすめ。
ポイント④「会計ソフトを使って確定申告書を作成しよう」
会計の知識がある人や調べる時間のある人は、自分でデータを整理して、手書きで確定申告書を作成してもOKです。ただ、一から勉強するのは少々ハードルが高め。基本的には会計ソフトを利用するか、プロである税理士さんにおまかせしましょう。
とはいえ、税理士費用を捻出するのも大変ですので、1年目は会計ソフトを使って白色申告を行うのがおすすめ。代表的な会計ソフトとしては、以下のようなサービスがあります。
どのサービスも1ヶ月間のトライアル期間を設けているので、期間内に書類を作成して提出すれば、料金の支払いは発生しません。ただし来年も確定申告をする場合は、この機会に登録して会計ソフトを使い始めることを推奨します。1年後の作業量を減らせて楽になりますので、少しずつ使い方を覚えていきましょう。
確定申告書の作成には、会計ソフトの利用を推奨。トライアル期間を活用して、無料で書類の作成〜提出まで終わらせよう!
どの会計ソフトを使うかは好みの問題になってきますが、本記事では「freee」をおすすめします。だいたいのサービスは初心者向けの機能や解説を取り揃えていますが、その中でもfreeeは「会計の知識がなくても簡単に記帳作業ができる」と定評があるからです。
確定申告に関しても、質問に答えていくだけで書類を作ることが可能。さらに、副業収入がある人向けの「簡単モード」を使えば、最低限の操作と記入だけで白色申告の書類を作成できることも、本記事でおすすめする理由の1つです。詳しくは下記ページを参照ください。
【副業VTuber向け】白色申告の手順
ではここからは、実際に白色申告を行う際の大まかな流れを見ていきましょう。
必要な書類を準備し、1年間の収入と支出を整理する
まずは、この1年間のVTuber活動における「お金」の動きを整理します。保管していた請求書と領収書を引っ張り出してきて、1年間の収入と支出を把握しましょう。
収入面では、企業案件で発行した請求書などのPDFデータはもちろん、Google AdSenseの管理画面もチェック。支出面では、Amazonの購入履歴のほか、店舗で買い物をした場合はそのレシートや領収書も手元に準備しておきましょう。源泉徴収票や控除証明書がある場合は、そちらも忘れずに。
- 請求書
- 領収書・レシート
- 銀行口座・クレジットカードの取引履歴
- 源泉徴収票(あれば)
- 各種控除証明書(あれば)
確定申告書を作成する
準備したデータを使って、確定申告書と収支内訳書を作成します。
税理士さんにお願いしないのであれば、クラウド会計ソフトを使って作るのがおすすめ。初めての人向けのチュートリアルなども用意されているので、そこまで複雑には感じないはずです。使い方を解説したサイトや動画もネット上で多く見つかりますので、不安な場合は都度調べてみましょう。
作成した確定申告書を提出する
書類が完成したら、以下のいずれかの手順で提出します。確定申告の受付期間は毎年2月16日〜3月15日と決まっているので、忘れないよう気をつけてください。
- 税務署の窓口に持参
- 郵送
- オンラインで電子申告(e-Tax)
税務署まで行くのが難しい人は郵送で、自分で手順を調べられる人は電子申告でもOKです。
ただ、繰り返しになりますが、本記事では税務署に持参することを推奨しています。普段はそうそう行くことのない場所でしょうし、書類に不備がないか、その場で職員さんの目で確認してもらえます。来年は青色申告を考えている人は、ついでにその手続きも終わらせてしまいましょう。
- 確定申告書
- 収支内訳書
- 控除証明書
- 本人確認書類
- 印鑑(念のため)
- 開業届・青色申告承認申請書(来年は青色申告をする場合)
1年後の自分に楽をさせてあげよう!来年に向けた準備のススメ
以上の作業を終えれば、今回の確定申告は終了です。お疲れさまでした! おいしいものでも食べて、1年間の自分を労ってあげましょう。
ただ、その前に済ませておきたいのが、来年の確定申告に向けた準備です。やることを終わらせてすっきりしているところに水を差すようで恐縮ですが、確定申告は毎年の恒例行事。1年後の自分に楽をさせてあげるためにも、今のうちに来年の準備をしておきましょう。
特にこの記事を読んでいる副業VTuberさんに対しては、以下の3つの「準備」をおすすめします。
準備①「VTuber活動の専用口座&クレジットカードを作る」
活動の収入は、生活費を管理してる口座に振り込まれるようにしてるよ!
機材の代金はプライベートで使うクレカで支払っちゃってます!
もし現在、このようにVTuber活動に関わるお金をプライベートの口座やカードで管理している場合は、「VTuber活動専用」の銀行口座とクレジットカードを作ることを強くおすすめします。
なぜなら、私生活のショッピングも活動機材の購入も1枚のクレジットカードでまとめて支払っていると、「どれがプライベートの出費で、どれがVTuber活動の出費なのか」を分類する手間が発生するから。確定申告の際には利用明細を見て、どれがVTuber活動に関する支払いなのかを自分でチェックしなければなりません。
その点、「プライベート用のカード」と「VTuber活動用のカード」を分けて使っていれば、そもそも出費を分類する必要がないため、確定申告の作業をスムーズに進められます。加えて、後述するクラウド会計ソフトと活動用のクレジットカードを連携すれば、データ入力の作業も省くことが可能。同じ理由で、VTuber活動用の銀行口座を持っておくと便利なので、この機会に開設しておきましょう。
VTuber活動専用の銀行口座とクレジットカードを準備して、会計作業を効率化しよう!
(クレジットカードは何を選んでもOKですが、定期的に利用するサービスと紐づいたカードにすればポイントが貯まっておトクです。AmazonならAmazon Mastercard、楽天なら楽天カード、というように)
準備②「クラウド会計ソフトを契約する」
この記事では会計ソフトの活用をたびたび推奨してきましたが、「確定申告書を作る」ためではなく、「VTuber活動のお金の流れを普段から記録する」という目的でも、クラウド会計ソフトを導入することをおすすめします。ただし全員に勧めるわけではなく、
活動を縮小するので、来年は確定申告の必要がなさそう。
次回も白色申告にして、書類は年始に会計ソフトのトライアル版で作成するつもり。
という人に関しては、会計ソフトを年間契約しなくてもOKです。筆者自身、青色申告に切り替える前の2回の確定申告は、会計ソフトのトライアル期間を利用して済ませていました。そのほうが節約になりますしね。
ただし、今後も副業としてVTuberを続けていく、活動の幅を広げていくつもりであれば、早い段階でクラウド会計ソフトを導入しておいて損はありません。次の項目でも説明しますが、「来年は青色申告で!」と考えている人は、今のうちに登録して使い方を覚えてしまいましょう。1年後の作業の効率化と短縮に繋がります。
クラウド会計ソフトを使って普段からお金の流れを記録しておけば、来年の確定申告が楽になる!
(本記事ではやよいの白色申告オンライン、マネーフォワード クラウド確定申告、freeeの3つのサービスを取り上げていますが、どのサービスを選ぶかは好みです。知人・友人と同じソフトを選ぶのもありかもしれませんね)
準備③「開業届と青色申告承認申請書を提出する」
今後もVTuber/クリエイターとして活動を続けていくつもりの人、活動の中で得られる収入が増えてきた人は、次回の確定申告は 青色申告 で行うことをおすすめします。
青色申告の大きなメリットとして挙げられるのが、白色申告にはない「最大65万円の控除」という優遇措置の存在ですね7。他方では「書類作成が難しい」ともよく言われますが、基本は白色申告と変わりません。少なくとも個人で活動するVTuberであればそこまで悩むポイントはないでしょうし、会計ソフトの使い方さえ覚えてしまえば基本は単純作業です。
ただし 青色申告 をするには、「青色申告承認申請書」と「開業届」が不可欠8。その年の3月15日までに、2つの書類を所轄の税務署に提出しておかなければなりません。なので、「来年は青色申告で!」と考えている人は、確定申告の準備をしている今が最高のタイミング。今回の 白色申告 のついでに、 青色申告 の手続きも済ませてしまいましょう。
白色申告のついでに、来年の青色申告に必要な書類も提出してしまおう!
(開業届と青色申告承認申請書は国税庁のサイトでダウンロードできるほか、開業freee
まとめ
最後に、本記事のポイントをざっと振り返っておきましょう。
- 副業VTuberは、所得が20万円を超えたら確定申告が必要になる
- ほとんどの人は 白色申告 をすることになる
- 書類はクラウド会計ソフトで作るのがおすすめ
- 申告はオンラインでもできるが、1年目は税務署で提出すると安心
- 来年に向けて 青色申告 の準備をしておこう
確定申告に限らず、事務作業全般を面倒に感じる人も多いかと思いますが、活動を続ける以上「お金」の問題とは無縁ではいられません。
改めてお金の流れを整理することで見えてくるものもあるでしょうし、還付金が入る人も少なくないはず。一度覚えてしまえばそこまで難しい作業でもありませんし、この機会に確定申告の流れを把握して、来年はスムーズに進められるようにしましょう。VTuber/YouTuber向けに「確定申告」や「税金」の解説をしているページを本記事の末尾にリストアップしているので、そちらも参考にしてみてください。
また、確定申告や節税といった「お金」まわりの知識を身につけたい人は、副業をしている人やフリーランスに向けて書かれた関連書籍を読むのもおすすめです。専用の棚が設けられている書店も多いかと思いますので、足を運んでパラ読みしてみてはいかがでしょうか。筆者のおすすめ本はこちら↓です。