普段は聞けないメタな話題も含めて、VTuberの「先輩」にあれこれ聞いてみるインタビュー企画。
「活動を始めたきっかけは?」
「どうやって“受肉”したの?」
「いわゆる“設定”はどう決めた?」
「VTuberとしての心構えを教えて!」
VTuber活動に興味がある人や、今まさにデビューのために準備中の人が読めば、何か得られるものがあるかも……?
今回お話をうかがったのは、2021年4月にデビューした 久遠ユキ(@quon_yuki_) さん。
2020年12月にSHOWROOMで開催された魂オーディションの候補生の1人であり、「オーディション終了後に個人で活動をスタートした」という背景を持つVTuberさんです。
当サイトでは以前、ユキさんも交えて魂オーディション参加者の座談会を実施しましたが、今回はソロでのインタビュー。改めてデビューのきっかけについてお話を聞きつつ、「ビジュアルはどうやって決めたのか」「“設定”はあったほうがいいのか」「自己紹介動画は必要なのか」といった、メタな質問も遠慮なく投げかけさせていただきました。
リスナー目線では思いもよらないお話も飛び出すなど、興味深いお話も聞けた約1時間。そのインタビューの模様を、たっぷりとお届けします。
インタビュー・執筆 / けいろー(@K16writer)
VTuberデビューのきっかけは、魂オーディション
――まずは自己紹介をお願いします。
こんわおん! 歌とゲームが大好きなゴールデンレトリバーの久遠ユキです!
久遠ユキ(くおんゆき):
普段は雑談・ゲーム配信・歌枠などを中心に、あとはおもろいアイデアが思いついたら、企画配信みたいなこともしています。
歌とゲームが大好きなゴールデンレトリバーVtuber🦴🐾
— 久遠ユキ🦴🐾 (@quon_yuki_) April 3, 2022
🐾YouTube:https://t.co/KvNLLZ5wgz
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🔴配信:#わおんらいぶ
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✂️切り抜き:#久遠ユキにほね抜き
📝予定表: #わおんじゅーる pic.twitter.com/6RrxydYfR5
――ユキさんと言えば周囲のVTuberさんとの絡みも多く、幅広く活動されていますよね。そもそものきっかけからまずお聞きしたいのですが、なぜVTuberとして活動を始められたのですか?
久遠ユキ:
どっから喋ろうかなあ……。もともと声優の専門学校に行ってて、そういうことは身近だったというか。インターネットも好きだったので、歌ってみたやゲーム実況のような活動を見たり、ちょっと自分でやってみたりとかもしていました。
で、ある時、友達から「VTuberのオーディションがあるらしい」と聞いて、「そんなのがあるのか最近は」と。
VTuberについてはぜんぜん詳しくなかったのですが、オーディションを受けてみたら――オーディション自体は最終面接で落ちちゃったんですが――想像以上におもしろくって! で、知り合いの絵師さんに「私を描いてくれないか」とお願いして、デビューした……みたいな感じですかね。
だから、ほかのVTuberさんと比べると、生まれがちょっと特殊かもしれません。もともとVTuberに興味があったわけではなく、「絶対にVTuberになるぞ〜!」という志を持って応募したわけじゃないので。……ちょっと言い方は悪いかもしれませんが。
どっちかと言うと、「VTuberになりたい」というよりは「配信活動をしたい」というか。実況者さんや歌い手さんをよく見ていて、「配信するのおもろそうやなあ」という理由で応募したので、ちょっと周りの人とは違うかもしれないですね。特に最近は、「VTuberになりたい!」と思ってVTuberになる子のほうが多いと思うので。
――VTuber自体はあまり知らなかったけれど、カルチャー的には近い「ゲーム実況」や「歌ってみた」の活動には興味があり、当時のユキさんのモチベーションとしてはそちらのほうが強かったわけですね。
久遠ユキ:
そうですね。VTuberは「にじさんじなどの有名所だけは切り抜きで見ていた」くらいの認知度だったので。バイト先の先輩がにじさんじの緑仙さんのファンで、たしか『乙女解剖』を最初に聞かせてもらったんだった……かな? それがVTuberを知ったきっかけです。配信とかはぜんぜん見ていなくて、「歌が良いなあ」と思って見ていました。
だからVTuberとにじさんじの存在くらいは知ってたけど、それ以外はほとんど何もわからないので、「最近はオーディションとかもあるんだなあ」みたいな(笑)。当時は時間的に余裕もあったし、すでにVTuberとして活動していた友達も身近にいたから、「おすすめされたし、やってみようかなー」と思って応募しました。
――「絶対にVTuberとして活動をするんだ!」という強い気持ちはなかったものの、オーディションを通して実際に配信活動をしてみたら、思った以上に楽しかった……という感じでしょうか。
久遠ユキ:
オーディション自体がアツかったのもありますね(笑)。SHOWROOMの配信って、ギフトを投げて応援してくれる人の名前が見えるじゃないですか。だからすごく身近に感じられて、「オーディション期間中に応援してくれてた人に報いたい」と思うようになって。
だって、ぽっと出の配信者ですよ? ほかにも配信者やVTuberはいっぱいいるのに、その中で自分のことを見つけてくれた。1、2ヶ月しか活動していないのに、有料ギフトを投げて応援してくれた。お互いにぜんぜん知らない間柄なのに。「こんだけ熱を込めて応援してくれてる人がいるんだったら……VTuber、やってみようかなー」って。
ビジュアルはどうやって決めればいい?絵師さんに伝えておきたいポイント
――残念ながらオーディションでは選ばれなかったものの、その経験がきっかけとなり、「個人勢としてVTuber活動を始めよう!」と決意されたわけですよね。いざVTuberとしてデビューするにあたって、最初に取り組んだのはどのようなことでしたか?
久遠ユキ:
キャラクターデザイン、ですかね。あ、でも改めて考えると……さっきの“特殊”とは違った意味で、私って生まれが特殊だな!?
――というと?
久遠ユキ:
デザインについても、何か特別なこだわりがあったわけじゃないんですよ。「オーディションのキャラクターが犬だったから犬にした」くらいの感じで。あとは、オーディション中に考えて使っていた「こんわおん!」の挨拶や、「#わおんらいぶ」のハッシュタグなどをあまり変えたくなかった、というのもあります。個人的にすごく気に入っていたし、親しみもあったので。……私、猫派だし、一番好きな動物はキツネなんですけど(笑)。
そんな感じで、「犬にしよう!」ということは一番最初に決まっていました。「じゃあ一番好きな犬ってなんだろうな?」って考えて……私、でっかい犬が好きなので、「ほな、ゴールデンレトリバーかー」と(笑)。
すごく思い入れがある犬なんですよね、ゴールデンレトリバー。長くなるので割愛しますが、幼なじみの家の隣の家に犬がいて。その子がゴールデンレトリバーだったんですけど、初めて会ったときに超懐いてくれたんです。そんな「個人的思い入れワンちゃん」がいたので、ゴールデンレトリバーにしようと決めました(笑)。
そのうえで、デフォルトの衣装には自分が好きな要素をいろいろ入れたいなーと思って。ママに「こうこうこういう感じがいいんだけど……どうかなあ?」ってポイッて投げたら、「じゃあこういうのはどう?」ってラフを描いてもらって、「いいねえ……!」って返す、みたいな(笑)。そういうやり取りをして固めていったのですが、私のイメージそのままの姿で描いてもらえたので、本当にスムーズに進んだ記憶があります。
――それはすごい! 「自分のイメージを伝えてデザインしてもらう」ってなかなか大変そうなイメージもあるのですが、そこはうまく汲み取ってもらえた、という感じでしょうか。それとも、イメージの伝え方に何か工夫があったり……?
久遠ユキ:
まず、「相手が友達なのでやり取りがスムーズだった」というのは大きいと思います。あとは……アレかな。「ママと趣味が一緒かどうか」も結構大事かもしれない。
久遠ユキのデフォルト衣装は「中華ロリータ」と「軍服ワンピ」をモチーフにしているんですが、そういう服がすごく好きなんですよ私。それを私のママである柊とろちゃんに言ったら、「え! 私もめっちゃ好きだから、ちょっと考えてみるねー!」って言われて。
最初は「2つの要素のどっちかがあればいいかなー」って考えていたのですが、とろちゃんが良い感じにどちらの要素も汲み取った衣装を作ってくれたんです。ほんっとすごいですよね! 絵師さんって!!(大声)
――ユキさん自身の「好きなモチーフ」がもともとはっきりしていたから、デザインの希望を伝えやすかった。しかもそのモチーフは絵師さんの好みでもあったから、イメージをすぐに共有することができた。結果、実際に描いてもらった衣装も、ユキさんのイメージどおりだった――というわけですね。ちなみに、挙げてもらった2つのモチーフ以外に、絵師さんにお伝えした細かい要素などはありますか?
久遠ユキ:
「たれ耳」「人間耳なし」「ショートカット」「タレ目」「水色」「金髪寄りの茶髪(ゴールデンレトリバーだから)」みたいな感じで、衣装は「軍服ワンピか、華ロリがいいなあ」って書いた記憶があります(笑)。
……あっ、画像が! 画像があります!
――おお! 貴重な資料が……! デフォルメ絵だけ見ると、普段からユキさんが描かれているイラストと何ら変わりがありませんね(笑)。
久遠ユキ:
ねー! そう! でも本当にこの、私が描いた「こういうのがいいなあ」の理想のまんま描いてくれたので、「すげー」ってなりました。
――衣装もそうですが、「水色」「茶髪」といった「色」を伝えるのもやっぱり大切なのでしょうか。
久遠ユキ:
こだわりがあるんだったら絶対に言ったほうがいいと思うし、ないんだったら「こういう系統の色が好きです」くらいは伝えたほうがいいかも。
あとは、イメージするもの――私だったら「犬」ですけど――こう、「○○系VTuber」のようなイメージが固まっているなら、そこから連想できるイメージカラーを一言添えておく。そうすると、絵師さん側で汲み取ってラフを出してもらえる……んじゃないですかね! わかんないけど!(笑)
――VTuber活動においては「自分の体」になるわけですから、こだわりがあるなら盛り込んだほうが良さそうですね。ほかに何か意識したポイントはありますか?
久遠ユキ:
「犬」っていうところだけはブラさずに、あとは好きなものを詰め込んだ感じですかね。好きな服を着て、好きなデザインで。夢の姿っすからね! VTuberって! メタいですが、「なりたい自分になれる」わけですから。
――簡単にまとめると、① 参加したオーディションのキャラクタービジュアルが「犬」だった、というきっかけがまず最初にあり、② ご近所のなかよしワンちゃんの存在から「ゴールデンレトリバー」という犬種に結びつき、③ そのモチーフを主軸として、自分の好きなデザインと要素を盛り込んでいった――という、このような流れでよろしいでしょうか?
久遠ユキ:
そういうことです! うま! 日本語! でも自分で話してみて、改めて「生まれが特殊だな」なんて思えてきました(笑)。
――かもしれませんね(笑)。でもデザインの決め方に関してはほかのVTuberさんにも当てはまりそうですし、準備中の方の参考にもなりそうだと感じました。
久遠ユキ:
そうですね。ただ、さっきも言いましたけど、私は「絵師さんがもともと仲の良い友達だったからスムーズに進んだ」というところもあると思います。
「はじめまして! 描いてくれませんか? よろしくお願いします!」みたいな場合は……うーん……どうなんだろう? 私はそういう依頼をするときに、めっちゃ緊張しちゃうから……。まあでも、こだわりがあるんだったら先に言っておいたほうがスムーズに進むだろうとは思いますね!
――お互いに良いものを作りたいはずなのに、情報伝達がうまくいかずにこじれてしまった……となると、誰も幸せになりませんからね……。
久遠ユキ:
気軽な1枚絵のリクエストとかならまだしも、依頼としてデザインをお願いするわけですから、要望はあらかじめ伝えたほうがいいと思います。自分の伝達不足が原因で、想定しているのとは違うデザインになってしまったら、絵師さんにも申し訳ないので……。
だから「ここはこうしてほしい!」というこだわりがあるんだったら、絶対に最初に伝えておいたほうがいいと思いますね。「お金を払っているからどんな要望をしてもいい」ってわけじゃないし、モヤモヤするじゃないですか。
――そうですね。最低限の希望やこだわりはあらかじめ書き出しておいて、整理したうえでお伝えしたほうがいいのかなと。お伝えしておけば、もしわからない部分があったとしても、絵師さん側からも「この部分について詳しく教えてください」と聞けそうですし。
久遠ユキ:
そうですね。「相談しながら決めていく」ような方法もあると思います……が、でも絵師さん的には、最初からある程度決まってたほうがやりやすいのかな……? いや、どうなんだろうなあ……ちょっとそこらへんはわかんないんですけど。
まあでも、「自分のイメージがあるんだったら伝えておいたほうがいい」ということは、声を大にしてお伝えしたいですね!
会議前に「どれどれ~?」って言いながら資料の最終確認をしにきてくれる世話焼き先輩社員久遠ユキ#わおんあーと pic.twitter.com/rlnfR7ZSIh
— 柊とろ9/4コミティアぬ01a (@rikku_m_hiragi) May 18, 2021
VTuberに「設定」は必要?世界観を決めておくとこんなメリットも!
――またメタい話になりますが、VTuberと言えば「世界観」や「設定」をデビュー前に考える人も多いのではないかと思います。ユキさんの場合はどうだったのかお聞きしようと思ったのですが、改めて考えてみると……そもそも、設定らしい設定はあんまりない……ですよね?
久遠ユキ:
あんまりないですねー。
というか! ないです! ない!(笑)
そもそも「生まれがふわっとしてるから」というのあると思うんですけど、私、デビューまでの期間が短かったんですよ。とろちゃんもすごく筆が速いので、オーディションが終わったらすぐに立ち絵を描いてもらって、準備して、Live2Dができあがるのを待って、4月にはVTuberとしてデビューしました。
あとはさっきもお話したように、「犬だったから、犬になろう!」っていう感じだったじゃないですか。だから、世界観とかないんですよね(笑)。でも一方で、私の周りにもいますが、世界観がちゃんとしている人はすごいなと思います。特にセルフ受肉の子は、世界観がしっかりしてるなって思います。
でも、私は……ない……ですねぇ……(笑)。世界観が生きるのは見た目だけじゃなくて、口上とかで個性を出すのにもつながるから、大事っすよマジで。今からVTuberデビューするつもりの人は、絶対に考えたほうがいい! あと、言い方はちょっとアレかもしれませんが、言い訳が効くんですよ! 世界観があると!
たとえば、「帰省するときは『魔界に帰る』って言う」とかあるじゃないですか。VTuberあるある。あるいは「永遠の17歳だよっ☆」とか。世界観がしっかりしていると、自分にとって都合の悪い質問を避けやすくなるんですよね。
――なるほど……! その発想はなかった! 「出身は?」「年齢は?」といった自分のパーソナルに関わる質問を、「VTuberとしての設定」で隠せるわけですね。
久遠ユキ:
活動をしていると、都合の悪い質問をされることって絶対にあるじゃないですか。そういうのを回避しやすくなるので、世界観はあったほうがいいと思う。……ちょっと変な観点からのおすすめになっちゃいましたが!
――むしろすごく納得感があります! 「ビジュアル」というガワをかぶることで顔出しを避けるのと同時に、「世界観(設定)」というもうひとつのガワをかぶることによって、自分のパーソナルを守ることができる。「VTuberとして活動するメリット」のひとつとして捉えられるように思いました。
久遠ユキ:
VTuberに限った話じゃありませんが、最近はネット上で活動している人も多いじゃないですか。もちろん、素に近い状態で配信している人も普通にいるけれど、言いたくないことや答えたくないこともいっぱいあると思うんです。
そういう時に世界観がちゃんとあると、リスナーさんを傷つけず、かつ自分も傷つかず、華麗にスルーすることができるんじゃないかなーと思います。あとはシンプルに、世界観があったほうがいろいろやりやすい、というか。
……あの、私、友達に「悪魔」と「神」が多いんですけど(笑)。
――なんかここだけ切り抜くとすごいパワーワードですね!?
久遠ユキ:
すごく多いんですよ! 悪魔と神! あと、魔女とか王族も多いな。友達はだいたいみんな魔界に住んでるんですよ……って言うと、なんか治安が悪そうですが(笑)。でもそういった世界観がはっきりしていると、「この人は神なんだなあ」とか「あなたは悪魔なんですねー」とか普通に話せますし、リスナーさん的にもわかりやすいんじゃないかなと。
――大型連休などで活動ができないときも、「あの人は今、魔界に里帰りしてるから」とか話せますもんね。世界観があることで、VTuberさんは自分の話をしやすくなり、リスナーさん側もその世界観を取っ掛かりにして話しかけやすくなる。そう考えると、コミュニケーションのきっかけになっている側面もありそう!
久遠ユキ:
私も犬なので、「いぬだしなあ」とか言ったりするので(笑)。人間もいいなあと思いますけどね! いずれにしても、「世界観があったほうがお互いにやりやすいよね」というメリットはあるような気がしています。
――少し見方を変えると、ユキさんの場合は「世界観を深く考えて決めなかったから、フットワーク軽く動けて、すぐにVTuberデビューできた」とも捉えられそうですが、そのあたりはいかがでしょう?
久遠ユキ:
あー、そうかも。言葉遊びが好きなので、世界観よりもハッシュタグとか、そっちのほうに重点を置いて考えてたから(笑)。今使っているタグとか、すごく気に入ってるんですよ。
設定を考えなくてもVTuberにはなれるから、もしそういう部分にハードルの高さを感じている人がいたら、ぜんぜん深くは考えずに……「ただ『犬』というだけで戦っている犬もいるんだよ」ということを、お伝えしたくはあるかもしれない(笑)。結構、考えるのって大変じゃないですか。
――世界観を考えるにしても、「どこまで掘り下げて作り込むか」という問題もありそうです。
久遠ユキ:
「あとから設定が生えてくる」ようなケースもいっぱいあると思いますけど、ベースになる部分くらいは考えておくとか。たとえば、「魔界……ほにゃららかんにゃら……第十王子……の……なんとか……ほにゃらら……かんたらら……」みたいな(笑)。「魔界を統べる王の息子である」みたいな、あるじゃないですか、いろいろ。
そういう「プロフィールに書けるような設定だけ考えておいて、あとは生やす」とかでもいいかもしれないですね。配信でリスナーさんとコミュニケーションを取るなかで、その人のチャームポイントとかが見えてきて、その流れで設定が生えてくる……みたいな。これもVTuberあるあるですし、あんまりがっつり決めなくてもいいような気もする。
――活動内容次第、といった感じでしょうか。セルフ受肉のクリエイターさんや、VTuber活動を通して何か表現をしたい人は、自分で世界観を作り込むこともできる。一方で、雑談・ゲーム実況・歌ってみたなどを中心に活動するなら、世界観はほどほどでもOK。もし作り込んだとしても、普段の活動にはそこまで深くは関わってこないのかなと。
久遠ユキ:
多分、マンガとかと一緒ですよね。マンガも設定がふわっとしてると、物語に入り込めないことがあるじゃないですか。VTuberも同じで、普段の配信以外に、キャラクターとしてのストーリーも展開させていきたいんだったら、ロールプレイできるような設定をあらかじめ作り込んでおいたほうがいいんじゃないかな。
もちろん、個人勢はラフに活動している人も多いと思うので、そんなに気負いしなくていいんじゃないかなとも思います。めちゃめちゃロールプレイして、声も作って、がっつり表現活動をしている人もいますが、私はそのままの自分でやっているので。基本的には「自分を売る」ものだと考えて、「ありのままの自分をどこまでコンテンツ化して、みんなに見せるか」が肝になってくると思います。
――「マンガ」のたとえはわかりやすいですね! 細かい世界観や設定を背景にして骨太の物語が描かれるマンガがあり、そういうVTuberもいる一方で、いわゆる「日常系四コマ漫画」のようなVTuberがいてもいいわけですよね。世界観や設定ではなく、その人の存在や言動それ自体が魅力になるコンテンツ、のような。
名前の由来は?どうやって決めればいい?
――話は変わりますが、ユキさんのお名前の由来についてうかがってもよろしいでしょうか?
久遠ユキ:
あー、これもオーディションきっかけですね。オーディションを受けていたときの名前のままなんですよ、私。今になって考えると、「もうちょいひねればよかったな」とも思いますけど(笑)。
まず、オーディションで示されていたキャラクターの名前が「ムゲンちゃん(仮)」だったんですよね。なので、参加者には「ムゲン○○」とか「△△ムゲン」といった名前の子がめっちゃ多かったんですよ。だから「絶対に『ムゲン』は使わないぞ」と思って。じゃあ自分の名前はどうしようと考えたときに……「類語辞典」みたいなものがあるんですよ、インターネットには。
――あー! ありますね。いつもお世話になっております。
久遠ユキ:
そうそう、お世話になってます(笑)。すごい、アイツ、マジ優秀。
そこで「無限」の類語を調べたら「久遠」って出てきて、「名字っぽいし響きもいいな」と。で、下の名前は犬っぽい名前がよかったんですよ。ビジュアルが白かったので「シロ」……というのはちょっと単純すぎるなと思ったので、「『ユキちゃん』とかかわいいなー」「『ユキ』にするかー」って(笑)。
もともと、全部で5文字がよかったんですよね。呼んだときの響きがすごくいいので、「5文字にする」というこだわりはありました。それで、ちょっとアレなんですけど……あの、私、「難しい名前アンチ」なんですよ(笑)。いるじゃないですか! 初見で読めない名前の人。
「読み仮名を書かないと読めない名前はよくないな」と思って、読みやすい名前にしようと考えていました。あとは見た目がすっきりするので、「ひらがなよりはカタカナのほうがVTuberっぽいかあ」とも。それで「久遠ユキ」になりました。ただ、ちょっとエゴサーチしづらい名前なんですよね……。
――あー、そこはちょっと悩みどころですね……。
久遠ユキ:
そう! エゴサのしやすさは大事だと思う。今、デビューを考えているみなさんには声を大にして言いたい。エゴサしやすい名前にしたほうがいい!(笑) マジ大事! これ! 本当に!
特に「ユキちゃん」なんて珍しい名前ではないので、「くおんゆき」とか「くおにゅき」とか、リスナーさんには「フルネームで呼んでくれ!」「呟くときはフルネームで呟いてくれ!」ってお願いしてます。エゴサできないから。
――「難しすぎると初見で読めない」けれど、「簡単すぎるとエゴサで引っかかりにくい」という、いずれにしてもメリットとデメリットがあるわけですね。
久遠ユキ:
そうなんですよね。普通過ぎる名前だとエゴサが困難なので、その子だけのあだ名とかがあるといいかもしれません。あと名前がかぶる可能性もゼロじゃないので、事前に調べておくのは大事かも。
VTuberさんって、不思議な響きの名前の方が結構多いじゃないですか。絶対にかぶらないし、字面もかわいいし、いいなあって思いますね。「名字と名前を引っ付けると、ひとつの単語になる」みたいな名前の人もいますし。
――名前と世界観が直結しているVTuberさんもいて素敵ですよね。一方で、シンプルゆえにわかりやすくて呼びやすい名前には親しみを感じられますし、「久遠ユキ」のしっくりくる感じはすごく好きです。
久遠ユキ:
「声に出して読みたい」ってよく言われますね(笑)。
「オレとオマエ、トモダチ。タノシイジカン、キョウユウ」
――ほかに何か、準備中の期間に取り組まれていたことってありますか?
久遠ユキ:
ツイキャスをしてました。YouTubeでの初配信は動けるようになるまで取っておいて、それまではツイキャスで立ち絵を映しながら配信してた感じですね。あとはやっぱり、Twitterですかねー。そういえば今って、タグを使っての宣伝とかって、どうなんだろう……?
――どうなんでしょうね……? 自分は「#VTuber準備中」のタグで新人さんを探すこともありますが、積極的にVTuberを探している人がはたしてどのくらいいるのか……。どちらかと言うと、新人VTuber同士でつながるためにタグを付けてツイートをしている人が多いようにも見えます。
久遠ユキ:
あー、友達を増やすことは大事っすねー。活動のことで悩んだり「つれー」ってなったりしたときに、わかってくれるのってやっぱり同業の子じゃないですか。状況がまったく同じってことはないと思いますが、自分と同じような悩みを持っていて、相談できる存在がいると、精神的な支えになるので……マジ大事。
VTuberって、「ずっと見られている」わけじゃないですか。それって意外と「圧」なんですよね。もちろん、見せたくないところは見せていないでしょうが、自分の生活を切り売りしているような部分もあるので。これはちょっと考え過ぎかもしれませんが、「ツイートしなきゃ」とか「休んではいけない……!」みたいな焦燥感が少なからずあるんですよね。
「休んでたらリスナーさんが離れていっちゃうかも……」っていう不安って、やっぱりあるんですよ。私は最近になって、やっとちゃんと休めるようになりましたけど(笑)。でも1周年の誕生日までは本当に休めていなくて。気持ちとしては休みたいんですけど、来週の予定を組んでみると「あれ? 今週も休みがないな?」みたいな。ずっと配信しちゃう。
休んだら、それだけ人が離れていくような気がするんですよね。自分の配信を見てもらっているときは、リスナーさんも自分のことだけを考えてくれている。でも一方で、「自分が提供しているコンテンツがなくなったら、離れていっちゃうんじゃないか」って不安にも襲われるんです。
――VTuberも人数がすごく多いですもんね……。
久遠ユキ:
そうそうそう。最近よく見るじゃないですか? 単推しというか、「浮気しないでね? 私のことだけ見ててね?」みたいな。でも多分、そんなの大多数のVTuberが思ってるんですよ。ただ私の場合、リスナーさんには「単推しは嬉しいし、悪ではないけど、依存先は増やしておいたほうがいいよ」って言ってるんですけど。
もちろん嬉しいですよ? 単推しは! めっちゃありがたい……のですが、私のことが嫌になったとき、もしくは私がダメになっちゃったときに、共倒れになるじゃないですか。それって誰も幸せにならないから、依存先は増やしておいたほうがいい。これは割と、人生においてそうだと考えています。単推しは嬉しいけど、「責任は取れないよ!」って(笑)。
――少し前にもそんな話がありましたものね。推しに対する気持ちが強すぎて、思い通りにならないことがあったときに、ちょっと困った言動をしてしまうファンの存在とか……。
久遠ユキ:
私の場合は「私だけ見ててね?」「ぜったい、単推しじゃないと、やだやだ!」みたいな感じじゃなくて、
オレとオマエ、トモダチ。
タノシイジカン、キョウユウ。
みたいな(笑)。基本的なスタンスは、「タノシイ、ウレシイ、ハッピー!」みたいな感じなんですよ。だから結構、良い距離感での関係性を築けているんじゃないかなと。
『Vtuber一問一答自己紹介』は何がすごい?
――ガラッと話が変わりますが、自己紹介動画を作るときに気をつけたことってありますか?
久遠ユキ:
何を言ったか覚えてないっ……! (笑)
もともと、詳しい自己紹介は初配信でしようと思ってたんです。でも「みんな出してるし、自己紹介動画ってマストなのかな」と思って作った感じですね。
久遠ユキ:
自己紹介といえば、今は『Vtuber一問一答自己紹介』があるじゃないですか。アレ、マジすごい! 本当にヤバい! 「流行っているものには理由があるな」って思いますね。テンプレがあるのはマジでありがたい。だって、困ったらアレやっとけばいいですもん。
流行っているテンプレだから、リスナーさんも当然知っているはずなので、「○○ちゃんも一問一答やったんだ!」ってすぐにわかるし、見やすいんですよね。なので、困ったらアレをやったほうがいい。ほんとに神!
――VTuberさんのあいだで一気に普及しましたもんね。
久遠ユキ:
ね〜! ああいうのを待ってたんだよなー! テンプレとしてめちゃめちゃしっかりしているから、ちょっと字幕を足すだけでいいですもんね。私がデビューするときにアレがあったら、絶対にやってましたね。
――そういえばもう随分前からあるような気がしていましたが、ユキさんのデビュー前にはなかったんですね?
久遠ユキ:
なかった! なかったです! ……なかった、よね?
――えーっと、どうでしたっけ……(元動画を検索しつつ)……あ、ありました! VTuber一問一答自己紹介……あっ、2021年4月17日公開になってます(笑)。
あっ! クソっ!!
(※2021年4月上旬デビュー)
久遠ユキ:
惜しい!! なんてこったい!!(笑)
でもすごいっすよアレ。革命っすよ。ネームバリューがあるじゃないですか。「VTuber〜♪ 一問一答、自己紹介〜♪ \いぇ〜い!/」って言ったら、すぐにわかるし伝わるじゃないですか。そんだけ普及してるってことは、やったほうがいいっすね。わかんないけど。
よっぽど「自分で伝えたいことがある」ということでしたら、自分で作ったほうがいいとは思います。さっき話に出た「世界観を大事にしたい」とか、「俺は『VTuber〜♪ 一問一答、自己紹介〜♪ \いぇ〜い!/』なんて言わないぞ!」っていう人でなければ(笑)。
でも一方で、「自己紹介動画を作るのに困ってる」とか、「自己紹介で何を話したらいいかわかんない」と悩んでいる人には……こういう、神の助けもある。そもそもめちゃくちゃ有名ですし、もしかしたら、デビューを考えている人はみんな「これで自己紹介するぞ!」って考えているのかも?
――あえて「みんなやってるから、自分はやらない」という考えの人もいるかも?
久遠ユキ:
あーでも個人的には、「みんながやっていることを最初はやったほうがいい」と思います。
みんながやっていること、普及していること、流行っているものって、流行っている理由があるし、みんなが知っていることだから。多分、検索にも引っかかりやすいんじゃないかな。なので最初のうちは、みんながやっていることをやったほうがいいんじゃないかなと。「全部真似しろ」とは言わないけど、困ったらテンプレは使うべきだと思いますね。
でも逆にアレですよね。「厳格な魔王のVTuberさんが一問一答自己紹介をやる」という、ギャップもまた然り。「いぇ〜い!」とか絶対に言わなそうじゃん(笑)。あるいは、自己紹介動画を2本用意しても別にいいですしね。「一問一答」はテンプレとしてやっておきつつ、ティザーPVでは自分の色を出す――みたいな戦略もありそう。まあ私は魔王じゃないのでわかりませんし、どっちかって言うと「いぇ〜い!」ができるほうなので(笑)。
――「いぇ〜い!」をできるほうだし、なんならやりたかったけれど、残念ながらタイミングが合わなかったわけですね……。
久遠ユキ:
そう! くそぅ……! 悔しい、マジで。タッチの差だったことに気づいてしまった……!
VTuberデビューを考えている人にメッセージ
――では最後に、これからVTuberデビューを考えている人に何かメッセージを送るとしたら、どのようなことをお伝えしたいですか?
久遠ユキ:
何回か言ったんですけど、VTuberや配信者には自分のプライベートを切り売りする部分があって、人格や人間性を見られることがあるじゃないですか。これって、ちょっと特殊だと思うんですよ。今でこそYouTuberは職業として成り立っていますが、仕事としてやるにしても、趣味としてやるにしても、自分そのものをコンテンツとして売り出す部分はある。なので、大変なこと、悩むこと、苦しいこともいっぱいあると思います。
でも同時に、ゲームをする、歌う、話す――といった、自分のやりたい楽しいことを自由にできる。しかもその様子を、自分がぜんぜん知らない人や、普通に暮らしていたら絶対に出会わないような人が見に来てくれて、かつ反応して、好きになってくれる。それもまた、ほかにはない配信業ならではの喜びだと思うんです。
それに、VTuber……配信業って、見てくれているどこかの誰かに寄り添って、救えるものだとも思うんですよ。今この記事を読んでいる方も、誰かの言葉で救われた経験があるかもしれないし、私だってもしかしたら、どこかの誰かを自分の言葉で救っているかもしれない。大変なこともいっぱいありますが、楽しいこともたくさんあるので。
だから、迷っている人、悩んでいる人、VTuber活動をしてみたいけれど、どこから手をつけたらいいかわからず困っている人――。さまざまな理由でこの記事を見に来た方がいらっしゃると思いますが、ここまで話した内容が、そういう人たちの助けというか、「こんな感じなんだー!」になっていたらいいなと思います。
迷っている人はぜひ、VTuberを始めて、僕とお友達になってください!
――ありがとうございました!!
歌とゲームが大好きなゴールデンレトリバーVTuber。
普段は歌枠やゲーム実況を中心に活動しており、歌ってみた動画も多数。企画力にも定評があり、学力テストや紹介企画「ケモ耳VTuberを探せ」などを主催。
コンテンツ力に優れたつよつよDogだが、猫舌。