2月下旬に双葉社から発売された、『VRChatガイドブック~ゼロからはじめるメタバース』。
タイトルのとおり、VRChatで遊んでみたい人向けの「ガイドブック」として注目を集めている本書。Twitterでは既存のVRChatユーザーの感想が多く目に入りますが、一方では「この本を読んでVRChatを始めてみた」という声も散見されています。
本記事では、そんな『VRChatガイドブック~ゼロからはじめるメタバース』についてご紹介。購入を悩んでいる人向けに、本の内容と見どころを簡単にまとめていきます。
『VRChatガイドブック~ゼロからはじめるメタバース』はどんな本?
- 著者:岩佐琢磨、まつゆう*
- 出版社:双葉社
- 発売日:2022年2月26日
- 定価:1,980円 (本体1,800円)
- 判型:A5判
『VRChatガイドブック~ゼロからはじめるメタバース』の筆者は、岩佐琢磨さんと、まつゆう*さん。
岩佐琢磨さん(和蓮和尚)は、IoT機器の開発・販売をしている株式会社ShiftallのCEO。近年はVR機器も取り扱っており、フルトラッキング機器「HaritoraX」はVRChatユーザーのあいだでも大好評。先日のCES 2022では、VRヘッドセット「MeganeX」をはじめとする複数のメタバース向け新製品を発表して話題になりました。
まつゆう*さんは、長年にわたってWeb上のカルチャーを追いかけているコミュニケーション・エヴァンジェリスト。ホームページの時代から新しいサービスやSNSが登場するたびにいち早く活用し、常に第一線で情報を発信してきたインフルエンサーです。最近はVRChatにもどっぷりと浸かり、メタバースDJとして活動されています。
『VRChatガイドブック』は、このようにVR/メタバースに深く関わっている当事者であり、VRChatで実際に長時間を過ごしてきた「住人」でもあるお二方による共著。ゆえにこの本は、いっちょかみの人間が書いた本ではなく、ユーザー目線でも信頼の置ける「入門書」だと言って間違いないでしょう。
基本操作や具体的な楽しみ方の解説のほか、ユーザーインタビューも掲載
- Chapter1「VRChatの基本操作と基本概念」
- Chapter2「VRChatの楽しみ方」
- Chapter3「VRChatを楽しむキーパーソンたち」
- Chapter4「ヘビーユーザーの高度な楽しみ方」
Chapter1では、VRChatの基本について説明。VRChatを遊ぶにあたって必要になる諸々の知識・操作・概念について、順々に解説していく内容となっています。
具体的な項目としては、「どんな機材が必要?」「ログインするには?」「操作方法は?」「どこへ行けばいい?」「この用語はどんな意味?」「フレンド機能はどう使えば?」「ワールドの仕組みはどうなっているの?」「アバターを変えるには?」「好きな姿になるにはどうすれば?」などについて解説。
スクリーンショットもたくさん交えながら説明してくれるため、事前知識がない人でもサクサク読み進められるはず。初心者が引っかかりやすい操作方法や仕組みについてもまとめてくれていて、まさしく「VRChatの入門書」として多くの人が求めていた内容と解説だと感じられました。
Chapter1が「入門書」としての役割を果たしている部分だとすれば、Chapter2は、広大なVRChatを案内してくれる「ガイドブック」としての機能を持った章。「ユーザーの数だけ楽しみ方がある」と言っても過言ではないVRChatの魅力を、簡潔ながら網羅的にまとめて示してくれています。
本質的には“チャット”であるVRChatで、おしゃべりをするフレンドを見つける方法から始まり、「どうやって会話を楽しむか」といった部分まで説明してくれる細やかさ。と同時に、多種多彩なイベントや音楽ライブの存在を示しつつ、VRChatならではのアバター集会やパーティクルライブ、ホラーワールドやゲームワールドについて、それぞれの内容と魅力を紹介してくれます。
「VRChatを楽しむキーパーソンたち」と題したChapter3では、実際にVRChatを楽しんでいる住人――そのなかでもイベントを主催したりクリエイティブを発信したりしている“キーパーソン”たち――の、生の声を紹介。
VR BARでお客さんをもてなす店長や、ダンスや劇で観客を魅了するパフォーマー、空間を使ったVRならではの表現と演出で魅せるパーティクルライバーに、音楽シーンで活躍するDJ、バンド、音楽グループのメンバーなど。さまざまな場所や表現でVRChatを楽しむ人たちへのインタビューを掲載しています。
Chapterの冒頭にはおすすめワールドの紹介もあり、VRChatをさらに楽しむための参考になりそうな情報がたっぷり。すでにVRChatにどっぷりと浸かっている“住人”の目線でも、興味深く読めそうな章となっています。
最終章となるChapter4では、VRChatのコアなカルチャーをちょっとだけ紹介。
毎日のようにどこかで開催されているVR飲み会に、メディアでも取り上げられて話題になっていたVR睡眠、さらにはホストクラブや授乳カフェといった、SNSでたびたび注目を集めていたあれこれについても言及しています。
ほかにはVRにおけるマナーやファッションの楽しみ方なども簡単に紹介されており、本文では取り上げられなかった、しかしVRChatの魅力を語るうえでは外せない視点や文化を、この最終章にまとめているようにも感じられました。「マナー」の項目では悩んだときの対処法なども書かれているので、目を通しておきましょう。
どんな人におすすめ?
読んで字の如く「ガイドブック」である本書。実際に読んでみた印象としても、VRChat初心者にこそぜひおすすめしたい本だと感じました。正直なところ、「自分が初心者の時に、こんな本が欲しかった!」と言いたくなるほどです。
何と言っても、1冊を通してスクリーンショットが多く掲載されている本書は、「VRChatの始め方」の説明が非常にわかりやすい。初心者が引っ掛かりがちなポイントもしっかりと抑えつつ、必要な情報を網羅してまとめています。ネット上にも解説サイトはありますが、やはり「本」であるがゆえの読みやすさと情報の探しやすさは大きな魅力だと感じました。
その一方で、本書はこれからVRChatを始めようとする初心者だけでなく、以下のような人にもおすすめです。
- 始めるかどうかはともかく、シンプルに「VRChat」に興味がある人
- 最近話題の「メタバース」が気になっている人
- VR/メタバースで何が行われているのか、生活や文化を知りたい人
- VRChatの「現在」を他の人の目線から知りたいユーザー
- 友達や知り合いにVRChatをおすすめしたい住人
VRChatだけが「メタバース」というわけではありませんが、ユーザー数やコミュニティの盛り上がり、カルチャーの幅広さなどの面から見て、代表的なサービスのひとつであることは間違いないはず。参考になる情報も多いでしょうし、メタバースについて興味がある人は、本書を読んでおいて損はないように思います。
また、人によっては真新しい情報が少ないように感じられるかもしれませんが、既存のVRChatterにもおすすめ。大勢の住人のインタビューが掲載されたChapter3は深く楽しんでいる人ほど興味深く読めるでしょうし、「そういえば自分はやった/行ったことがなかった!」という遊び方やワールドとも出会えるかもしれません。
そして何より、初心者向けに必要な情報がまとまった「本」として、本書が役立つ場面も出てくるのではないでしょうか。以前までのように、VRChatを友人や知人に紹介する際に自分の口で説明したり、解説サイトや動画を見せたりしなくてもOK。「この本を読んでみて!」と叩きつけるだけで、VRChatの魅力・楽しみ方・始め方をまとめて示すことができます。
VRChatが気になりつつも手を出すきっかけがなかった人にも、これから始めようという初心者にも、すでに全力で楽しんでいるVRChatterにもおすすめの、『VRChatガイドブック』。Kindleをはじめとする電子書籍版も配信されていますが、せっかくの「本」ですし、まずは書店で手に取って読んでみてはいかがでしょうか。