2024年11月23日。VSInger・未確認動物うまぴが主催するライブ「UMA IDOL FESTIVAL 2024(ユーマアイドルフェスティバル)」が、HYPERMIX門前仲町で開催された。
執筆・編集・撮影 / けいろー(@K16writer)
「UMA IDOL FESTIVAL(UMAIF)」とは
「UMA IDOL FESTIVAL」は、未確認動物うまぴさん(@UMA_ill_be_back)が主催するアイドルフェス。通称「UMAIF(ウマイフ)」。
もともとは2022年にオンライン上で行われたライブ配信企画だったが、2023年5月には秋葉原の会場でリアルライブとして敢行。今回が3回目の開催となる、複数人のVTuber/VSingerが出演するライブイベントだ。
今や「VTuberが出演するリアル会場での音楽ライブ」は珍しくなく、対バンライブも毎週のようにどこかで行われている。本イベントもそんな「VTuberのライブイベント」の1つと捉えることもできるが、UMAIFならではの特徴がいくつかある。
まずは、イベント名の通り「アイドル」に焦点を当てていること。
全員が必ずしもアイドルとして活動しているわけではないものの、ステージに立って歌うのは、アイドル文化を愛するVTuber/VSingerたち。告知ポストでも「アイドル文化×VTuber=∞」というフレーズがイベントコンセプトとして掲げられている。
そしてもう一点、UMAIFならではの特徴として挙げられるのが、「声出しを推奨している」ことだ。
いわゆる「コール」をUMAIFでは全面推奨しており、ステージ上のパフォーマンスだけでなく、観客の声もあわさることによって、その場にいる全員で最高にアツい空間を作り上げることを目指している。会場では「コール表」が冊子として配布され、初めて聞く曲でも声を出して盛り上がれるような配慮までされていた。
自身もアイドル文化が大好きな主催者・未確認動物うまぴさんは、本イベントの意図するところとして、冊子の中で次のように説明している。
ファンの方々が届ける光や声は、ステージに向けたとびっきりのエール。1つ1つは小さくても、集まれば照明にもスピーカーにも負けない大きな輝きになって届きます。
ファンの方々から届いたエールを受け、パフォーマンスにも更に熱がこもる。するとまたファンの方々も……。そのようにしてお客様とアイドルが共にひとつのライブを作り上げる営みには、その一瞬、その場所でしか感じられない爆発的な熱量があります。
ファンの方にも、出演者の方にも、
次元の壁を超えるような体験をしてほしい!最高のライブを、一緒に心に刻みたい!!
それがこのUMA IDOL FESTIVALにあたっての、私の願いです。
アイドル好きが高じて、自らがイベントを主催するまでに至った、個人勢VTuberによるアイドルフェス。ライブの様子はYouTubeでも配信されていたが、それ以上にすさまじかったのが、現地会場の盛り上がりだ。
おそらくは画面越しでも伝わっていただろうその異次元の熱量を伝えるべく、ここからは会場の様子と、各アーティストのステージの写真をお届けする。残念ながら現地参戦ができなかった人にも、少しでもその熱量を感じ取ってもらえたら幸いだ。
会場風景
2024年のUMAIFの会場となったのは、東京・門前仲町のHYPERMIX。
多目的ホール、オフィス、住居、ダンススタジオなどを兼ね備えた複合施設であり、今回はその1階部分の多目的ホールを使ってライブが行われた。
ライブといえば、やはり外せないのが物販スペース。
開場後はすぐに列ができて、グッズを購入しようとする人たちで賑わっていた。
また、ライブの合間にも、推しのグッズや、この日知った出演者のCDなどを買い求める人の姿が散見されていた。
印象的だったのが、イベント中を通して漂っているように感じられた、どこかアットホームな雰囲気だ。お互いに顔見知りが多いのか、会場のあちらこちらでファンたちが談笑していた様子。
かと言って、ソロで参加している人の肩身が狭いように見えていたかといえば、そういうわけでもない。
フォトスポットやフラワースタンドの写真を撮ったり、ハッシュタグを付けてSNSで呟いたり、YouTube配信のチャット欄を眺めたりと、思い思いに開演を待つ姿が見られていた。
会場内には有志による寄せ書き企画のスペースも。このような光景からも、このイベントが「ファンと一緒につくるライブ」であることが、開演前の時点で垣間見えていた。
そうして始まった、UMAIF2024。
それは、演者と観客との並々ならぬ一体感を全身で味わうことのできる、オンラインでは体感できない熱にあふれた“アイドルの現場”だった。
猫目石ネモ
最初に登場したのは、昭和アイドルと歌謡曲をこよなく愛するVSinger・猫目石ネモさん。VTuberとしては2020年から活動しており、UMAIFにも2022年の第1回から3回連続で出演している。
多彩なジャンルのオリジナル曲が次々に繰り出され、ただ歌って踊るだけではない「アイドル」の幅広さと奥行きが感じられたステージ。この後に続くアイドルたちのライブをも期待させられるパフォーマンスで、見事にトップバッターを務め上げた。
宇佐木そら
二番手は、2020年デビューのアイドルVTuber・宇佐木そらさん。UMAIFへの出演は今回が初めてとなる。
J-POPやアニソンはもちろんのこと、歌謡曲や演歌といった幅広い楽曲を普段から歌いこなしている彼女。主催のうまぴさんが作詞を務めた「はっぴー♡えんどれす」に始まり、1stアルバムの収録曲を中心としたセットリストでフロアをピンク色に染め上げる。会場から巻き起こるコールに応えるように、ファンに向けて感謝を叫ぶ姿も印象的だった。
- はっぴー♡えんどれす
- 祭
- MOON JOURNEY
- ひとやすみ
- 居場所
- DREAM SKY
合法!!バツ子チャン
続いて登場したのは、合法!!バツ子チャン。同じくUMAIF初出演であり、リアルでのライブイベント出演も初めてだったそう。
中毒性の高い1stオリジナルソング「バツ子のGO!HO!的ゆ~とぴあのス♡ス♡メ」でフロアを一瞬のうちに掌握したのちに、憧れのVTuber・宝鐘マリンさんの楽曲を歌唱。慣れた様子で合間合間のトークをまわす様子も含め、とても初ライブとは思えないほどの堂々たるステージで会場を沸かせていた。
- バツ子のGO!HO!的ゆ~とぴあのス♡ス♡メ
- 美少女無罪♡パイレーツ(cover)
- ユメヲカケル!(cover)
- BET your BEST
小純マアメ
しばしの休憩時間を経て、後半戦の1人目は小純マアメさん。アイドルを目指して活動するVSingerであると同時に、自身も生粋のドルオタでもある。UMAIFの出演は3回目。
誰よりも彼女自身が楽しんで歌っていることが伝わってくるアイドルソングのカバーも挟みつつ、オリジナル曲「こずみっくあいどる」では会場中を巻き込んでの大盛りあがり。待ってましたと言わんばかりに声を張り上げ跳び上がるファンたちの様子と楽しい曲調に、思わず笑顔になってしまうほどだった。
えのぐ
未確認動物うまぴ
ライブのトリを飾るのは、UMAIF主催・未確認動物うまぴさん。このアイドルフェスを一から作り上げ、当日はイベントの準備やナレーションもこなしてきた、アイドル好きの個人勢VTuber。
ここまでのステージで高まり続けていた会場のボルテージを引き継いで、オリジナル曲を次々に歌唱。「うまぴのうた(仮)」で全力コールを観客たちに促しつつ、「自由のホシ」ではしっとりと優しい歌声を響かせる。フロアから届くエメラルドグリーンの光に照らされつつ、最後は「刮目せよ!ミラクルハッピーニューイヤー!」で、最後まで最高潮のままライブパートを締めくくった。
エンディング
アンコールの声に答えて出演者全員で歌ったのは、2023年のUMAIFで制作されたテーマソング「New Dimension Call」。
ステージに立つ十人十色の出演者たちと、アイドルたちのパフォーマンスを全力で応援してきた観客たち、そしてこのイベントを最高のものにするために動いていたスタッフたちも含めて、全員が一緒になって盛り上がった全体曲。みんなで作るアイドルフェスを締めくくる1曲として、最高の幕切れとなった。
みんなで一緒に作り上げた、最高の1日
お昼すぎにスタートし、4時間以上にも及んだUMAIF2024。気づけば外も暗くなっていたが、そんなことも気にならないくらいに濃密で充実のライブだった。
長時間にわたって声をあげ、腕を振り、体を動かし続けた観客たちも、さすがに終演後は疲労困憊の様子――かと思いきや、そこはやはり現場慣れした猛者が集っていたのだろうか。多くの人が晴れやかな表情のまま、出演者とのツーショット特典会の列形成に臨んでいた。同様のイベント構成は別の場所でも見覚えがあるはずなのに、その協力的な姿勢と、ライブから特典会へのスムーズな移行の様子が妙に印象に残っている。
もちろん、ここまでに書いてきたとおり、ステージに立つアイドルたちのパフォーマンスが格別だったのは間違いない。
曲調もテンポも異なる緩急のあるセットリストで会場を盛り上げ、完璧なトップバッターを務めた、猫目石ネモさん。
キュートなボイスと奥行きのある歌声で空間を桃色に染め上げ、大切な“居場所”を歌う曲のなかで感謝の想いを叫んだ、宇佐木そらさん。
軽妙なトークも挟みつつ、新曲を引っ提げ、すでに熱気のこもったフロアを右肩上がりに盛り上げ続けた、合法!!バツ子チャン。
アイドル曲をパワフルにカバーし、アイドルへの愛を淡々と語り、そして自身もエールが飛び交うなかを“あいどる”として歌い上げた、小純マアメさん。
ほかの誰よりも、どのグループよりも現場に立ち続けてきたバーチャルアイドルとして、洗練されたパフォーマンスで会場を鮮やかに彩り魅せてくれたVRアイドル、えのぐの3人。
この舞台を作り上げるため尽力してきた主催であり、時にハツラツと、時にしっとりと、時にエモーショナルな歌声を高らかに響かせた上で、ライブを最高の幕引きへと導いた、未確認動物うまぴさん。
そのすべてのステージが熱気にあふれていたし、これだけ大勢の魅力的なシンガーの歌を味わえたことによる充実感もすごかった。初めて聞く曲も多かったため、帰宅するまで我慢できず、帰りの電車のなかで各出演者のYouTubeチャンネルをチェックしてしまうほどだった。
その一方で脳裏に焼き付いて離れないのが、あの空間で五感を通して味わった、観客たちの熱量と一体感だ。
ライブに行くのが初めてだったわけではないし、もっと激しい、モッシュが巻き起こるような現場で音楽を楽しんだ経験だってある。アイドルのライブに関しても、今回のような対バン形式のイベントでコールが巻き起こっている光景は何度も見ていたため、なんとなく「そういうもの」というイメージはあった。
ところが、今回のUMAIFで見た光景は、自分の知る「そういうもの」の想定を超えるものだった。
そもそも「ライブ」と呼ばれる体験それ自体が、自然発生的に「一体感」が生まれる場所ではある。ステージ上の出演者に視線を注ぎつつ、大勢で歌とパフォーマンスを楽しむ。それはどんなライブでも変わらないが、そこに「コール」が加わるとどうなるか。周囲の人と一緒になって同じタイミングで声を出すことで、ライブ体験がより自分ごとのように感じられる。「自分もそこに参加している」という実感が生まれる。そうやって醸成された熱量のすさまじさに、まず圧倒された。
と同時に、本イベントで一体感が感じられたのは、何もライブの最中に限った話ではない。出演者が切り替わるあいだの時間、小休止をする観客たちでざわついている会場にすら一体感が漂っていたように感じられるくらい、居心地の良い空間だったのだ。
会場の後方で談笑している人がいるかと思えば、フロアでコールのタイミングについて会議をしている人もいる。さらにステージ前の最前列付近では、「〇〇さんのファンの方ー! スペースあいてますよー!」と、お互いに譲り合うような光景も見られていた。うまぴさんがナレーションで呼びかけるまでもなく、「みんなで一緒に、最高の現場にしよう!」という意識が会場全体に行き届いているような、そんな心地の良さが常に感じられていた。
もちろんライブ中はライブ中で、「ステージ上の推しを応援しながら、自分たちも全力で楽しんでやるぜ!」という心意気が伝わってきて、なんだか感動してしまった。アイドルライブの現場って、こんなにもアツくて、楽しくて、幸せそうなのか……!
素敵なアイドルたちのステージを楽しむのみならず、イベントの“現場”でしか味わえない熱量と体験、多幸感を、全身で浴びることのできたUMAIF2024。それは、ステージ上で輝くアイドルの魅力と、大勢で一緒になって音楽を味わう楽しさと、その両方があわさることで生まれる唯一無二の「熱」の温度を思い出させてくれる、そんなライブだった。
最後に、主催のうまぴさんが話した言葉を引用して、この記事の締めくくりとしたい。
私はネモちゃんから、アイドルの「生き様」を学び、
そらちゃんから、「アイドルはカッコいいんだぞ」と学び、
バツ子さんから、「どんなときも人を楽しませるのがアイドル」だと学び、
マアメさんから、「アイドルは絶対に諦めない」と学び、
えのぐのみなさんから、「アイドルはファンのみなさんと一緒につくる“希望”」だと学びました。そして、ここにいるみなさんから、「夢は叶う」と! 「全力のライブは伝わる」と! 「みんなとなら、最高の1日をつくれる」と学びました!
アイドルとファンが共につくる、最高のステージ。その熱が画面越しにも伝わるアーカイブがしばらく配信されているので、気になった人はぜひチェックしてみてほしい。
アーカイブ配信のチケットの販売は12月11日まで。ただし視聴期間が長く、買ってしまえば来年6月まで何度でも見ることができるので、気になっている人は購入しておくことをおすすめします。
【イベント概要】UMA IDOL FESTIVAL 2024 in TOKYO
- 開催日時:2024/11/23(土)13:00〜20:30
- 会場:HYPERMIX門前仲町
- 運営:未確認動物うまぴ、けそ、白須うなぎ
- 協賛:和田農園(12月末までコラボパッケージ米を販売中!)
- ハッシュタグ:#UMAIF2024
- アーカイブ配信:UMA IDOL FESTIVAL 2024(配信チケットの購入は12/11まで、アーカイブ視聴は2025/6まで)