家紋のネギを風呂敷に背負った、おもしろグラサンたぬき。
アホなゲーム実況や、ほかのVTuberとはちょっと違う企画に定評がある、おもしろマスコットたぬきVTuber。トークに自信あり。
今回は、ゲストであるねむねぎさんにテーマを用意していただいております。本日は何についてお話いただけますでしょうか?
今回はですね! みなさんがあんまり知らない、「歌い手」の掘り下げです!
「歌ってみた」の原点は「2ちゃんねる」にあり?
ねむねぎ:
「歌い手」って聞くと、「ネットでカラオケしてる人でしょ?」っていうイメージが多分強いと思うんです。最近はかなり変わってきてるんですけど……有名なところで言うと、Adoさんとか、まふまふさんとかですね。まふまふさんに至っては、NHKの紅白歌合戦に出ていますし。
――紅白、すごかったですよね! お茶の間でまふまふさんが『命に嫌われている。』を熱唱して、しかもあの本家のMV的な演出もあったので、ちょっと感動しました。
ねむねぎ:
すごかったですよね本当に! もう何年も前の話になりますけど、紅白で小林幸子さんが『千本桜』を歌ったときような衝撃を感じました。そういったネットコンテンツが、だんだん世間に台頭してきているように思います。
特に若年層は、ネットクリエイター時代の中に生きていますので。だからこそ、それ以外の世代の方もこのような歌い手文化を知れば、「流行りに乗れて、若い人たちの共感も得られて、もう何もかもウハウハなんじゃねぇか!?」と思いまして(笑)。今回はそんな、歌い手文化の原点についてお伝えできればと思います。
――今でこそ歌い手さんは有名ですし、検索すれば楽曲のカバー動画もたくさん出てきますし、YouTubeの登録者数も桁違いの人気を誇っています。でも一方で、「もともとどういった経緯で出てきたのか」は、もしかすると知らない人もいるかも……?
ねむねぎ:
知らない方もいるかもしれませんね。――ちょっとじゃあ、最初に歴史を話していきましょうか!
まずはそもそもの話として、「歌い手文化はニコニコ動画で始まった」と考えている人も多いと思うんですよ。でも実際は違います。ニコニコ動画よりもちょっと前の、2ちゃんねる(※当時)のカラオケ板……あそこから始まっているんです。
そこでは、自分の歌声をカラオケとかで録音して、掲示板に投稿するようなことが行われていました。ですが……それが無断転載されるようになるんですよ、ニコニコ動画に(笑)。「じゃったら、自分で投稿するわ!」という感じで、歌い手文化がニコニコで花開くことになったわけです。
時期としては、2007年から2009年にかけての頃ですね。2007年にボーカロイドが話題になり、やがてそれを歌った動画が「歌ってみた」として投稿されるようになり、2009年には怒涛の歌い手ブームに。現在はメジャーシーンで活躍されている方もいますが、多くの歌い手は2013年くらいまでのあいだにデビューしています。
そうして今に至るわけなんですけれども……まあ、ここまでが簡単な歴史ですね。発祥は2ちゃんねるですが、なんだかんだ言いながらやっぱりニコニコで育ってきた文化、という感じです。
でも、これだけたくさんの歌い手がいると、何を聞けばいいかわかんないじゃないですか。そこで今回は、私が特に「この人たちすごいな!? 音楽として完成してんな!」っていう人たちを――特に男性の歌い手さんについて――ご紹介していこうと思います。
――よろしくお願いします!
オンリーワンの歌声を持つ歌い手「島爺」
ねむねぎ:
というわけで、3つほどトピックを用意しておりますので、順番にお話していこうと思います。
1つ目が、オンリーワンの歌声の方々!
ねむねぎ:
「この声を出せるのは、この人しかいないよね」という歌い手を、2人紹介します。歌い手といえばボーカロイド曲を歌っている人も多いですが、ボカロ曲は人間が歌うことを想定していないので、歌おうにもうまく歌えない曲があると思うんですよ。
ですが、そんな曲でも見事に歌いこなしてしまう、曲の魅力を引き出せる歌い手さんもいます。聞いてみると、「あっ、この人の歌い方だったらうまく歌える!」とか、「この曲には、実はこういう魅力があったんだ!」って気づかせてくれる。「この人にしか魅力を引き出せない曲」っていうのがあるわけです。
では、そんな魅力を持つ人をまずは1人、紹介させていただきますね。――退廃的、かつ曲自体が偏屈で、どこかレトロな感じの音もありつつ、アップテンポで革新的な曲。そういう楽曲を完全にモノにできてしまう、稀有な歌声を持っている方が、1人いらっしゃいます。
その方は……島爺さんです!
――おお! 島爺さんといえば、ニコニコ動画で歌ってみた動画をたびたび見ていた覚えがあります。今はYouTubeでも活動されていますよね。
ねむねぎ:
そうなんですよ! めちゃめちゃ知名度があって、メジャーデビューもしていて、大人気な方なんですけど、なかなか話題に挙がってこないんですよね。個人的にはもう「まふまふさんとかと並んでいてもおかしくないでしょう!?」って思うような方なんですけど……意外と、世間の方々は取り上げてくれないんですよ。
最近ですと、アニメ『終末のワルキューレ』のエンディングテーマを担当されていまして、それで「やっと……!」ってなりました(笑)。以前からテレビなどに出る機会はあったと思いますが、やっとこういうふうに聞けるのが嬉しいなって。でも……もっと! もっと拾ってほしい!!
――まだまだ足りない、と。
ねむねぎ:
まだ足りない!! ――ということでね、その島爺さんの魅力を感じられる……というか「これはこの人にしか無理でしょ!?」という曲があるので、紹介できればと思います!
島爺さんで、『HATED JOHN』。
高難易度曲でも歌いこなせる歌唱力と、他の人には出せない退廃感
――はい、というわけで聞いていただきましたのは、島爺で『HATED JOHN』でした。
ねむねぎ:
島爺さんって、ほかに代表的な曲がたっくさんあるんですよ。なのでこれは、「ちょっとコアな島爺ファンだったら絶対に知っている」くらいの感じです(笑)。
やっぱりね、コアなファンだったらこれを挙げると思うんです。っていうのも、お聞きいただいた感じでわかると思うんですが、「この音って、狙って出せないんじゃない!?」って思いませんか?(笑)
――たしかに! 最初に聞いたときの印象が、「なんじゃこりゃあ!?」って感じだったので。情報量が多い!(笑)
ねむねぎ:
「なんじゃこりゃあ!?」ですよね。ラーメン屋さんとかに行くと、流行っている曲が流れていたりするじゃないですか。ああいう場所では絶対に流れないですもんね、これ(笑)。
だって歌詞が、目をつぶって聞いたら絶対に何を言っているかわからないので。なんなら、歌詞を見ながら聞いてもわからないですよね。「今、どこ歌ってるの!? え、ちょちょちょ、ちょっと待って! わからんわかわん!」ってなりますよね(笑)。
というかそもそも、この曲自体の難易度がめちゃくちゃ高い! 「歌」ってただ歌うだけじゃなくて、歌詞の意図を拾って、感情をのせて歌うものだと思うんです。「人の声を楽器にする」みたいなイメージがあるんですけど……。でもこの曲って、歌詞をメロディにのせて歌うこと自体が難しいから、どう感情をのせていいかわからないんですよ。
だけど、島爺さんのカバーを何回か聴いてみると、「あっ、なるほど、こういう感情を……へえぇ〜!」ってなっていくんですよね(笑)。最初はお経みたいにしか聞こえないんですけど、しばらく聴いていると、「めちゃめちゃノれるお経だな」って思えてくるんです。その後、2、3回聴いても、まだちょっと歌詞がわかんない。でも4周目くらいから、やっと歌詞が聞こえるようになってくると思うんです。
島爺:「HATED JOHN」を歌う以前と以降で、実は歌い手として大きな変化があって、僕にとってもターニングポイントになったんです。この曲で、単純に歌詞を言葉として歌うだけでなく、母音と子音に至る全ての音に意味があることを気づかせてくれたというか。もともとボーカロイド曲を歌うことで技術的な訓練も積んでいたんですけど、「HATED JOHN」を歌ったことによって、歌の解像度をより高めることを意識し始めたんです。
島爺×VACONが語る、コラボ曲「虚仮の一念」に表れた“信念”「何かを成すためには病的なほどの熱量がいる」 – Real Soundより
――自分もまさにそんな感じでした(笑)。最初に聞いたときはとにかくインパクトがすごくて「なんじゃこりゃあ!?」ってなったんですけど、2回目からちょっとずつ気持ちよくなってきて……噛めば噛むほどハマっていくような、そんな魅力がありましたね。
ねむねぎ:
実は今回、裏の目標として「スルメ曲を紹介しよう」というものがありまして(笑)。噛めば噛むほど味が出てくる楽曲って、特に音楽通の方々は好きなんじゃないかなと。
島爺さんに関しては、曲の最初の入りの部分から声を――めちゃめちゃ歪ませているのかな? それとも音割れをあえてさせてるのかな?――やり方はわかりませんが、ああいう声で歌い始めているので、まず驚きがあるでしょうし、ちょっとアウトローな感じの印象を受けると思うんですよね。あとはレトロ感みたいなものもあるかもしれない。
でも、「ロック」なんですよね。ロックで、新しい。これらの要素を兼ね備えた島爺さんの歌声だからこそ、『HATED JOHN』の魅力をしっかりと引き出せているんじゃないかな、と思います。実際、この曲を華麗に歌いこなしているのを聞いた作者さんがめちゃくちゃ驚いていた、っていう逸話もあります(笑)。
――作曲者さんを驚かせるってすごいですね!?
ねむねぎ:
すごいですよね(笑)。人間に対応できないものを華麗に歌いこなしたりとか、他の方にはない退廃感を出せたりするのは、島爺さんのすごさだと思います。あと、Spotifyでは配信されていなかったかと思いますが、『セーラー服が大嫌い』という曲も私のおすすめです。
――ありがとうございます! 島爺さんといえば、自分の中では「とにかくカッコいい歌声の持ち主」というイメージがあって……というのも、『IMAGINARY LIKE THE JUSTICE』の歌ってみた動画を無限にリピートしていた時期があったんですよね。
ねむねぎ:
あ〜〜〜! アレはなぁ……! カッコいいんだよなぁ……!!
――そうなんですよ! 一方で他の歌ってみたはあまり聞けていなかったので、今回ご紹介いただいた『HATED JOHN』を聞いて、ほかにもいろいろ聞いてみたくなりました。
ねむねぎ:
いやー、よかった! では……2人目も紹介していこうと思います!
この方はですね、プロの普通の歌手にはありえない歌声の魅せ方を持っています。そして、1曲でいくつもの楽しみ方をさせてくれる、不思議なカバーをしてくれる人です。それはですね……。
宮下遊さんです!
――おお! 少し前に新曲をリリースされていましたよね。
ねむねぎ:
はい! 『プラチナエンド』というアニメのエンディングに採用されている曲なんですが……まあでも、これは実際に聞いていただいたらだいたいわかると思うので、まずは曲を聞いてもらおうと思います。
宮下遊さんで、『降伏論』。
続きはPodcast本編で!
Spotifyの仕様上、上の再生プレイヤーでは楽曲が流れません。合間合間に紹介している楽曲も合わせて聞きたい方は、iOS/Androidアプリ版Spotifyで開くようお願いいたします。