MVきっかけで観に行った、『映画大好きポンポさん』
――今回はゲストである浅田カズラ(@asada_kadura_vb)さんに、テーマを用意していただいております。本日ご紹介いただくのは何でしょうか?
浅田カズラ:
CIELさん(@CIEL_VanillaSky)というシンガーの――言ってしまえばバーチャルシンガーなんですけど、ちょっとこの話はあとに置いといて――『窓を開けて』という曲のご紹介をさせていただければと思います。
――この『窓を開けて』という曲は、映画の主題歌でもあるんですよね?
カズラ:
はい、そうですね。『映画大好きポンポさん』という、今年6月に公開されたアニメ映画の主題歌として採用されている楽曲でございますね。
――『ポンポさん』といえば……たしか、Pixivとかで話題になったのが一番最初でしたっけ。
カズラ:
そうですね。PixivあるいはTwitterのどちらかで公開されていたものがコミカライズされて、今年に入って映画が公開された、という形で……結構トントン拍子で映画化された、シンデレラな映画ですね。
――僕もたしかPixivで読んで「あ! いい! 好き!」ってなった記憶があったので、映画化と聞いて「行かなきゃ!」と思ったんですけど、ちょっとこのご時世で行けてないんですよね……(笑)。
カズラ:
まあまあ(笑)。行きにくいご時勢ですわね、たしかに。
――浅田さんは観に行かれたんですよね?
カズラ:
私は劇場に観に行きましたね、はい。
――いかがでしたか?
カズラ:
サイッコーでした……!(絞り出すように)
ただ、観に行ったきっかけ っていうのが、この『窓を開けて』のMVを観た、っていう。MVを観て「あ、これ、映画本編そのまんまだろうから、ぜってー映画観に行かないとダメだ!」って思って。もう翌日くらいには映画館の予約をさっさと取って、走って観に行きましたね。
――ほ〜! じゃあほんと、MVを観て衝撃を受けて、その熱量に突き動かされるままに映画館へ! みたいな感じで。
カズラ:
そうですねー……ほんと、そのくらいの勢いで行きました。
――なるほど……! あの、僕も映画は観に行けてないんですけど、MVのほうは観ていて。それで、MV自体もアニメーションですし、ポンポさん自身も出演されていて、印象に残っていました。
カズラ:
映画本編の監督である平尾隆之さん(@hira0takayuk1)が、実はこのムービーの監督も担当されていて。そういった意味だと、まんま「映画のティザームービー」に近い気がするんですよね。映画にもMVにもポンポさんというキャラクターは登場していますが……だいたいもう、まんま本編なんですよね。あのMVの展開自体も。
映画本編・アーティスト・楽曲のすべてがリンクしたMV
カズラ:
ちょっとここで、CIELさんがどういう方なのか、っていうのをご紹介させていただくと――。今年5月1日に最初の動画投稿をしてデビューした、っていうような方で。KAMITSUBAKI STUDIO所属で、2019年に行われたオーディションで採用された方なんですね。
「KAMITSUBAKIの新人」ということでデビュー当初から話題になっていて、なおかつ6月4日に最初のオリジナル曲として『窓を開けて』をリリース。これがそのまんま『ポンポさん』の主題歌に抜擢されたことで、なお話題になった、というような方ですね。
カズラ:
ちなみに肩書きがですね……「リアルとバーチャルを行き来する越境型フィメールシンガー」ってなっていて、実は「バーチャルシンガーではない」っていうのが厳密に言うとありまして。花譜ちゃん(@virtual_kaf)なんかは実際、 「バーチャルシンガー」っていう肩書きでちゃんとオフィシャルにも紹介されているんですよね(※)。
これが何を意味しているのかはちょっとまだわかんないんですけど、現時点だとLive2Dも3Dのアバターも持っていないっていうような感じなんで、ほんとこれから何をしていただけるのか……みたいな。期待の新人ですね。
※花譜:KAMITSUBAKI STUDIO所属のアーティスト。公式サイトでは、「日本の何処かに棲む、何処にでもいる、何処にもいない17才。様々な偶然により発見された類い稀な歌声を持つ次世代型バーチャルシンガー」と説明されている。2021年5月リリースの『例えば』は、『映画大好きポンポさん』の挿入歌。
――「リアルとバーチャルを行き来する」ってことは、いわゆる「2.5次元」的な感じになるんですかね……?
カズラ:
ワンチャンありそうなんですよね。
――すでに投稿されている動画にも、シルエットで歌っているMV……というか映像があって、「これは本人なのかしら?」ってちょっと思ってました。
カズラ:
何かありそうですよね……。最近この領域(2.5次元)はアツいだけに、KAMITSUBAKIからこのポジションにいる人が出てくると、「すごくアツいなあ……!」とは思ったりしますけど。
まあそんな感じで、オーディションでポンと選ばれて、しかもいきなりデビュー曲が映画の主題歌になるっていう、相当なシンデレラストーリーを歩まれている方で。でもMVの内容を観ると、「普通の女性が『ポンポさん』のマンガを読んで、衝動的に歌を投稿する」っていうような、そういうシナリオラインが組まれているんですね。
で、それをポンポさん本人が見てて……多分おそらく、「ウチで歌わないか!? 主題歌として!!」みたいな感じで、勧誘を仕掛けにいくような感じかな、と思っているんですけども。これが! マジで! 映画の内容まんまなんですよ! 本当に。
カズラ:
ちょっとだけ映画の紹介をさせていただくと、『ポンポさん』っていう映画の舞台は「ニャリウッド」っていう――あの、もろハリウッドっていうような――そういう世界観で、映画産業がすごく盛んな場所で。
そこに登場するポンポさんっていうのは、映画業界におけるいわゆるフィクサー的なポジションとして、監督さんなり、スタッフさんなり、キャストさんなりっていうのを、一手にキャスティングするようなキャラクターなんですよ。……でも実はポンポさん、主人公ではないと。
主人公は、映画のポスターの中央にいる……なんか目が死んだ青年、「ジーン」っていう方なんですけど。この人がポンポさんの助手として、付き人として、映画業界の端くれとしてちょっと関わっているようなところから、いきなりポンポさん自ら脚本を手がけた新作映画の監督に急遽抜擢される、っていうような話で。
なおかつ、その映画のメインヒロインを担当することになった女優が、オーディションに連戦連敗中の、まだ作品デビューすらしたことがない新人女優、っていう。二重の意味で「選ばれた」人たちが、映画作りというクリエイティビティの極地みたいなところに挑んでいく、っていうような、そういう作品なんですよね。だから本当に……もう「まんま」なんですよね。
――そうですよね、(MVのストーリーも映画の物語も)「見出されて」っていうところですもんね。
カズラ:
そうですね。「見出された人たちが、もうひたすら突き進んで行く」っていうような、そういう内容なんですよね。
CIELさんがどういう経緯でKAMITSUBAKIにオーディションを受けに行ったのかはちょっとわからない、とはいえ……まあ……「KAMITSUBAKIのオーディションに挑む」って相当、なんかもう「うわーーーっ!」って行かないと、行けなさそうな雰囲気があるので。何かしら突き動かされるものがあったのかな、と思ってはいて。
で、歌詞もね、これすごく良くって。「大丈夫 そう大丈夫 心がそう叫んでるんだ」っていうのがサビなんですけど。「衝動から無謀な挑戦に飛び込む」っていうような……これ多分 、ある意味ではCIELさんの心情でもあるのかなと。
さらにそれだけじゃなくて、ジーンと、女優として作品内で選ばれるナタリーっていうヒロイン、彼と彼女の心情なのかなというふうにも思っていて。そういう意味で、「(MVと本編が)リンクしているように感じられることがすごい」、っていうのがひとつあります。
――これ、初めてサビを聞いたときに、「大丈夫」をサビで繰り返すのが「あ、ずるい!」ってちょっと聞いてて思ったんですけど(笑)。
カズラ:
ズルいっすよねえ(笑)
――しかもこの繰り返される「大丈夫」が、 曲が後半へ向かうのにしたがって、イメージがすごく変わってきてるなあ、っていうのが感じられて。
カズラ:
そうですね。多分、Aサビのところは「うまくいくかわかんないけど、やってみるか!」っていう、ちょっと破れかぶれだけど、同時にひたすら突き進んでいくような感じなんですけど。それが後半のサビだと、「自分を見出してくれる人がいるんだから、今行けるでしょ!」っていうような、よりポジティブな意味合いになってるかな、っていう。
――そうそう! そういうところでも、すごく(いい意味で)ズルいですよね。曲からしてズルいし、しかもそれが本編とリンクしてるようにも見える、っていうのもズルいし、っていうので。
カズラ:
なんだったら、これ多分、その辺はある程度は意図的にやってるはずで。
「#ポンポさん突撃インタビュー」っていう企画がTwitter上で行われてて、思いっきり芸能人みたいなテイストで、「ポンポさんがCIELにインタビューする」って体裁で行われた画像が、映画の……公開前後かな? そのタイミングで公開されているんですけど。
その中の「監督への事前調査」っていうところで、監督へのインタビューが載っているんですけど。「主題歌には、その作品のテーマに対する『答え合わせ』のような役割も求められます」と、実は監督自ら証言されていまして 。そう考えると、「まず歌自体で、映画のテーマをまんまぶつけてきたんだな」っていう。
なおかつ、「歌う人にも、ジーンとかと同じようなポジションの人を当て込んでいるんだな」ってことが見て取れるようになってて、「うわー! やるなぁ……!」って思いましたね(笑)。
――しかもその「事前調査」のところを読むと、KAMITSUBAKI STUDIO側がCIELさんを前面に推したっていうよりは、「監督さん自ら抜擢した」っていう感じっぽいんですよね。
カズラ:
そうなんですよ! 監督さんがどうも選んだっぽい、というように見えるので、「それは相当すごいぞ!?」っていう。なかなかこういうケースって、ないっちゃないですよね……?
――あまり聞いたことないですよね……。
カズラ:
本当に。そこで選ばれたCIELさんも、ある意味では“キャラクター”的な運用ができる「リアルとバーチャルを行き来する越境型フィメールシンガー」っていうポジションで採用されていて。つまり、『ポンポさん』っていう物語に溶け込めるような状態になってる。そういう戦略もあるかなと思ってて。
単純なタイアップじゃなくって、「溶け込ませる」ようなタイアップを仕掛けるのって、相当すごいなと。戦略としてすごいなと思ったんですよね、これ。こういうタイアップを仕掛けることができてしまうのが、ある意味――ちょっと広くなっちゃうけど――「VTuber」っていう、バーチャルの特性だよなーっていうのを、改めて思わされましたね。
――たしかに! しかもその「監督さん自ら選ぶ」っていう構図自体も、『ポンポさん』的な感じがありますし。それに当のCIELさん自身も「オーディションで選ばれている」っていうのが、二重三重に文脈が重なってる感じで……なんかこう……ヤバいっすね(笑)。
カズラ:
曲も、バックストーリーも、実際のシナリオも、何もかも重なってるから、「うわ〜〜〜〜〜!!!」……って、なるんですよね。3分47秒間のMVを観るだけでなんかこう、「あっ……!」ってなる。それくらいもろに感じさせられちゃうので、本当に「映画のティザームービー」と言っても過言ではないんですよね。
クリエイターの背中を猛烈に押す「燃料」のような作品
カズラ:
ところで、「映画の上映もそろそろ終わっちゃうんじゃないの?」っていうご心配もあるかと思うんですけれども……なんとこの『ポンポさん』、U-NEXTにて先日、先行配信が始まっております!
――お〜! あ、もう始まってるんですね!?
カズラ:
始まりました!
――じゃあやっと観れる!
カズラ:
観れます! 今、このPodcastを聞き終えてすぐU-NEXTに飛び込むことも可能です! MVを観て、U-NEXTさんで『ポンポさん』を観て、そしてもう1回MVを観てください。めちゃめちゃすごいことになります。感情が。
――ぜひ観てほしいしチェックしてほしいですね……! 僕も観ます!!
カズラ:
ぜひぜひ。U-NEXTの配信もありますし、12月3日にはBlu-rayも発売予定とのことなので。「2カ月待つと、Blu-rayで好き放題観れる時代が来るかもよ!」と。いつ観てもいい映画だと思うので。
なんだったらこれ、クリエイターの背中を猛烈にプッシュして、もう足を止まらなくさせるくらいのすごい熱量がある作品だと思うので。クリエイティブに興味のある方にはぜひ観ていただけると、すごく勇気をもらえるかもしれないし、覚悟が固まるかもしれないと思うので。そういった意味でも、エンジンとして、エネルギーとして、燃料として、観ていただけてもいいかな、と思いますね。
――ほんとそうですよね。『ポンポさん』の公開当時もTwitterに感想がたくさん流れてたんですけど、すでにクリエイターとして第一線で活躍されている人たちも「すごい熱量をもらった」といった感想を書かれていて……。やっぱりすごいですよね、この、背中を押す感じ、熱量を伝える感じ、前に進めと語りかけてくるような感じが。
カズラ:
なんだったらもう「狂気」そのものなんですよね。「映画制作に狂っていけ」くらいのメッセージ性があって。
単純に「作るのが楽しい!」じゃなくて、もう「映画作れなきゃ死ぬぞ!」くらいのことを、実際に主人公のジーンが言うんですよ。「ここで映画を作れなかったら、もう死ぬしかないんだ」っていうのを、本当に言うんですよね、主人公が。実際、そのくらいの無茶をしてくれるんで……そこがね! なんか見ていてめちゃくちゃ気持ちいいと思うんですよね。
カズラ:
そういった意味では本当、ガソリンですね。適量を注入していただけるのがいいと思うんですけど、めちゃめちゃ燃やして、死に物狂いで走るのもひとつの道かもしれないんで……。あまりこういうことを言うとちょっと怒られそうですが(笑)。そのくらいパワーがある作品です。ぜひ、観ていただけますと幸いです。
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